原発事故で孫が甲状腺がんになるのが心配
東京電力の福島第1原子力発電所から、40キロほどの場所に住んでいます。東日本大震災の原発事故後、他県に移住を考えましたが、故郷からは離れられませんでした。私はもう年なのでよいのですが、4歳になる幼い孫が心配です。今後、放射線が原因で孫が甲状腺がんになる可能性はあるのでしょうか。また、もしあるとしたらどう対処すればよいでしょうか。
(福島県 女性 63歳)
A 過度な心配は無用だが、検診は続けましょう
残念ながら、原発事故の被害がどのように及ぶかについて確かなことは分かりません。
しかし、ご質問者がお住まいの自宅と第1原子力発電所との距離と線量を考慮しますと、必要以上に心配することはないと思います。
チェルノブイリでは、原発事故時に0~15歳であった子どもたちに5年後から主に乳頭がんと呼ばれる甲状腺がんが発症しました。過去25年間で6000人を超える甲状腺がんの子供たちが手術を受けました。しかし、死亡例はおよそ15名(0.25%)と非常に少ないものです。その中には慣れていない手術にともなう合併症によるものも多く含まれています。チェルノブイリの場合、子どもたちに甲状腺の内部被曝をもたらした主たる原因は、放射性物質(放射性ヨード)に汚染された牛乳を飲んだことにあります。
食べ物の安全性が確保されている福島の子供たちと、状況が異なります。また、日本の場合、ふだんからヨード含有量の多い食事を摂っているため、放射性ヨードが甲状腺に取り込まれにくい状況にあります。
福島県民の健康を見守り、不安を解消するために「県民健康管理調査」という検査が行われています。平成23年の10月から始まっていますが、そのなかにある18歳以下を対象とした「甲状腺検査」をお孫さんに受けさせてください。
飛行機に乗れば放射線を浴び、煙草の副流煙でがんのリスクが高くなるように、私たち人間はリスクをゼロにして生きていくことはできません。しかし、定期的な検査を受けていれば、重要なリスクは回避できるのです。
福島県立医科大学 県民健康管理調査事務局 電話番号:024-549-5130(9:00~17:00)(土日祝日を除く)