1期の乳頭がん。甲状腺全摘は必要?
先日検査で、甲状腺がんが見つかりました。がんが甲状腺内に留まっていて、他の部分には転移が見られない1期の乳頭がんと診断されました。腫瘍が見つかったのは甲状腺の片側だけだったので、腺葉切除による温存療法を行うことを医師から提案されています。本当に温存しても問題はないのでしょうか? 再発のリスクはやはり高くなるのでしょうか? 温存療法後の再発の可能性と温存することによるメリットを教えて下さい。
(神奈川県 女性 42歳)
A 温存療法が主流。QOLの高い生活が望める
乳頭がんの場合、日本と欧米とでは治療方針に違いがあります。欧米では、乳頭がんに対してはほとんどの場合、甲状腺全摘術が行われます。その後、放射性ヨードによる治療を行い、続いて生涯にわたり、十分量の甲状腺ホルモン剤を投与して、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌を抑えるTSH抑制療法を行うことが、標準治療となっています。
全摘した場合のメリットは残った甲状腺から再発することがないという点です。さらに、リンパ節再発や肺などへの遠隔再発も減らせる可能性があるといわれています。しかしリスクとして、術後、副甲状腺機能低下などの合併症を発症する可能性が温存手術より高く、生涯に渡り甲状腺ホルモン剤を飲み続けなければなりません。
一方、日本では命にかかわることの少ない低危険度乳頭がんの場合、原発巣のある甲状腺の片側だけを切り取る腺葉切除術という手術が多く行われています。手術前に超音波検査で病変のないことが確認できていれば、残した甲状腺からの再発率は1~2%程度です。
また、甲状腺が半分残っていると、多くの場合、甲状腺機能低下が起こらず、ホルモン剤を内服する必要がないため、患者さんのQOL(生活の質)も高く保てるでしょう。
1期や2期の低危険度乳頭がんの死亡率は1%以下で、これはどちらの方針でもあまり変わらないと考えられています。