放射性ヨードによる治療とは?
のどに違和感を感じ検査を受けたところ、甲状腺がんの可能性があることがわかり、腺葉切除を行い、腫瘍ができている側を切除しました。しかし手術後、血管侵襲をともなう濾胞がんであることが判明したので、再度手術で甲状腺を全摘出しました。現在はホルモン剤のチラーヂンを服用しておりますが、再発防止のため、放射性ヨードによる治療を勧められています。これはいったいどのような治療法なのでしょうか? 放射性ヨードを使った治療を行うには、現在使用している甲状腺ホルモン剤の内服をやめなければいけないと言われており、やや不安を感じています。
(新潟県 女性 51歳)
A タイロゲンの使用を勧める
甲状腺を全摘した患者さんに対し血行性の遠隔転移(肺や骨への転移)の可能性がある場合には術後にアブレーションと呼ばれる、放射性ヨードによる治療が行われます。甲状腺組織にはヨードを集積する性質があり、それと同じく、甲状腺がんにもヨードを集積する性質が残っている場合があります。
この特性を使い放射性物質を含んだヨードを内服し、腫瘍に対し局所的に放射線照射を行う治療法が考えられました。
この治療を行うためには、放射性ヨウ素の吸収を高めるために、甲状腺刺激ホルモンの分泌を高める必要があります。通常、甲状腺刺激ホルモンは、血中の甲状腺ホルモン値が低いと活発に分泌されます。そのため、チラーヂン*Sなどの甲状腺ホルモン剤の服用を中止しなければなりません。
ただし、甲状腺ホルモン剤を止めることで、甲状腺機能低下症状として、個人差はあるものの、疲労感やむくみ、便秘、体重増加などの問題が生じます。
最近では人工の甲状腺刺激ホルモン製剤であるタイロゲン*という新しい薬が登場し、ホルモン剤を服用しながらでも、放射性ヨードによる治療が行えるようになりました。ですからご相談者の場合、ホルモン剤を止めることに不安を感じるようなら、タイロゲンを使用することも考えてもよいと思います。
*チラージン=一般名レボチロキシン *タイロゲン=一般名ヒトチロトロピン アルファ