中医師・今中健二のがんを生きる知恵

第14回 子宮の異変は、胃や肝臓の不調が原因かも

話・監修●今中健二 中医師/神戸大学大学院非常勤講師
取材・文●菊池亜希子
発行:2022年2月
更新:2022年2月

  

今中健二さんプロフィール 中医師。中国江西省新余市第四医院医師。神戸大学大学院非常勤講師。1972年兵庫県生まれ。学生時代に母親をがんで亡くした経験から医療に関心を持ち、社会人経験の後、中国国立贛南医学院に留学。中医師免許を取得し、新余市第四医院で治療に従事。2006年帰国。神戸市を起点に中国伝統医学の普及に努める。西洋医学との垣根を超えた「患者の立場に立った医療技術」発展のため、医師や看護師、医学生に向けたセミナー、中医学に基づいたがん治療の講演など、全国各地で精力的に活動している。2020年中国医学協会を設立。著書に『「胃のむくみ」をとると健康になる』『医療従事者のための中医学入門』

子宮がんの罹患者数も、年々、増加傾向。2018年の統計データによると、日本で1年間に子宮頸がん1万978人、子宮体がん1万7,089人、合わせて2万8,067人が新たに「子宮がん」と診断された。ここ数年はとくに、子宮体がんの増加が顕著だ。

通常、子宮がんは発生部位によって子宮頸がんと子宮体がんに分けられ、発症要因も治療法も分けて考えられるが、中国医学では「子宮に起きるがん」という視点で捉えるので、分けずに考えます。

中国には西洋医学、中国伝統医学の2種類の医師免許があり、中医師とは中国伝統医学の医師免許を持つ医師のこと。本連載では「中国伝統医学」を「中医学」と呼びます。

子宮は血液の「通り道」

子宮がんを考えるときのポイントは、子宮は「五臓六腑」ではないということです。

肺や胃、肝臓、腎臓、膀胱、大腸などはすべて、体を構成する臓器。つまり五臓六腑であり、これらに生じた不調は体全体に影響を及ぼします。

五臓六腑の視点で見ると、子宮は血液の「通り道」に過ぎません。もちろん、受精卵を着床させて胎児を育む場所ではありますが、それは子宮そのものが何か特別な働きをしているわけではないのです。では、どのように胎児を育んでいるのか。

肝臓の経絡(けいらく)から子宮内膜を作る血液が運ばれ、胃の経絡が胎児の栄養となる気血をもたらし、さらに腎臓・膀胱の経絡が子宮内の水分調節を行います。それらが合わさって、子宮は胎児を育てることができるのです。また、妊娠が成立しない場合は、月経として子宮内膜を体外へ放出しています。

つまり、子宮には経絡を通じて必要なものが届けられているだけ。子宮は単なる部屋であり、血液の通り道。誤解を恐れずに言うならば、もしも通り道に多少の不具合が生じたとしても命に関わる重大事に至ることは、そうそうないのです。

通り道という意味では、実は乳がんも同じです。乳房も五臓六腑ではなく、血液の通り道。ただ、通り道ではあっても、巡っている気血が溜まりやすいちょっとした部屋のような場所がいくつかあって、子宮や乳房は、そのような場所だと理解しましょう。

経絡(けいらく):気血が流れるエネルギーの通り道。経絡は全部で12本あり、頭や顔、内臓や手足を繋ぐように体中に張り巡らされている

気と血:中医学では、体の中を「気(き)・血(けつ)・津液(しんえき)」がスムーズに巡っていれば体は良い状態だと考える。気は目に見えないエネルギー。血は血液、津液は血液以外の水分。中でも「巡り」が重視されるのが気と血

子宮に注ぎ込む経絡は3本。1本目は胃の経絡

子宮は気血の通り道なので、子宮を通る経絡の影響を大きく受けています。子宮を通る経絡は、全部で3本あります。

1本目は、栄養が送られてくる胃の経絡

食べ過ぎなどで気血が作られ過ぎて溢れ、熱を持った大量の気血が胃の経絡上で渋滞を起こすと、まず肺や乳房など、上半身に異変を起こします。胃の経絡は鼻翼をスタートして顔からおでこに昇り、耳の周辺を通って下り、乳房、肺などを通って下腹部、そして下半身へと流れていきます。症状も経絡の流れに沿って現れるので、まずは上半身に異変が現れます(胃の経絡については第1回 病は「胃」から始まるを参照)(図1)。

それでもまだ抑えられずに溢れた気血は下り、下腹部に位置する子宮や大腸にも不調を来たすことがあるのです。

水分調節をする腎臓・膀胱の経絡

2本目は腎臓・膀胱の経絡です。

体内の水分を調節する腎臓・膀胱の経絡は、頭頂部から後頭部、首、脊柱を通って臀部に下ります。臀部から左右に分かれて太腿の後ろからふくらはぎ、足先へと向かうわけですが、途中、臀部から左右に流れるとき、子宮にも注ぎ込みます(図2)。

腎臓・膀胱の経絡が主に関与するのは体内の水分調節。余分な水分を捨ててくれます。子宮の中に溜まった血液の余分な水分だけを抜いてくれるので、ドロッとした血だけが残って、それが子宮内膜になるのです。つまり、腎臓・膀胱の経絡は子宮内膜を作り出す役割を担っていると言えるしょう。

紙を漉(す)いて和紙ができあがる様子をイメージするとわかりやすいですね。板枠に和紙の材料と水を入れて紙を漉き、水分だけ落としていくと、薄い和紙が板枠に張られていきますね。和紙が内膜。水分を落としているのが腎臓・膀胱の経絡です。膀胱の経絡が水を捨ててくれることで、和紙(内膜)ができるのです。

ところが、例えば、太腿の後ろあたりがパンパンにむくんで膀胱の経絡が詰まってしまうなどの不調が起こると、子宮内で水が捨てきれず、内膜が十分に作られなくなります。

そうなると、内膜量が不十分のために経血量が非常に少なくなったり、あるいは逆に、子宮内が水浸しの状態になって、サラサラの経血が大量に出たりといったことが起こります。月経困難症や子宮内膜症の原因にもなり得るというわけです。

肝臓の経絡は経血そのもの

子宮を通る3本目が肝臓の経絡です。

足の親指を出発して脚の内側を上にあがり、内股から性器に流れ込み、そこから腹部に出て、ゴールの肝臓に注ぎ込みます(図3)。

肝臓の経絡が運んできた血液を材料として、そこから、腎臓・膀胱の経絡によって余分な水分が捨てられ、凝縮されて子宮内膜になります。そして、経血になるという仕組みです。

肝臓の経絡は子宮内膜となる血液そのものを運んでいるので、何らかの不具合で肝臓の経絡が滞ると、経血そのものの血液量が足りなくなり、内膜が薄くなって月経不順などに繋がることもあります。

胃の経絡の不調が引き起こす症状

子宮は血液の通り道ですから、子宮内を流れる胃の経絡、腎臓・膀胱の経絡、肝臓の経絡という3本の経絡が良い状態であれば、子宮に問題は起きません。これらのいずれか、もしくは複数に不具合が生じたとき、子宮に異変が起こると考えられます。

では、実際にこれらの経絡に起こる不具合について詳しく見ていきましょう。

まず、胃の経絡の不調は、食べ過ぎや栄養過多によって気血や熱が溢れることがほとんど。この場合、血が塊を作ってのがんを作り出すこともありますが、それより頻繁に起こるのは月経前症候群(PMS)。

胃の経絡内が熱と気血で溢れ、それが子宮に注ぎ込むと、子宮内も気血でいっぱいになります。すると、お腹が張り、溢れた気血は胃の経絡を逆流して上へ。胃酸分泌が過多になって無性にお腹がすき、胸部へ昇ると乳房が張って痛みが出てくることもあります。さらに昇ると、歯が浮いたり、頭痛が起きることも。

これらは、いわゆるPMS、もしくは生理痛と呼ばれる症状ですが、月経絡みだけであれば問題ない場合がほとんど。月経時は子宮に血液が集まるようになっているので、ある程度、こうした症状が現れがちだからです。

程度にもよりますが、生理終了と同時に症状も消えるなら、さして問題ありません。こうした症状が胃の経絡から来ていることを知っておくだけでも、食べ過ぎを避けるなどの対策もとれるでしょう。

大事なことは、婦人科系の症状はすべてホルモンバランスの乱れと思いがちですが、実はそうでもないということ。食べ過ぎが原因による不調も多いことを、ぜひ知っておいてください。症状が強い場合は、まず食べる量を控えてみましょう。

陽と陰:中医学の根本的な考え方。陰陽論では「万物は、陰陽という対立する要素を両方持ち、その割合を刻一刻と変化させながらバランスを保っている」と捉える

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