鎌田 實「がんばらない&あきらめない」対談

がんになった今こそ伝えたいことがある。副作用対策、治療の充実、そして…… がんサポート編集発行人・深見輝明 × 鎌田 實

撮影●板橋雄一
構成●江口敏
発行:2013年4月
更新:2019年7月

  

がんサポート編集人として10周年を迎えた矢先、自らがんと闘うことに

がんサポートは今年、創刊10周年を迎え、さまざまな記念事業を企画していた。そんな昨年末、編集発行人としてがんサポートをリードしてきた深見輝明にがんが見つかった。年明け早々からがん研有明病院に検査入院した。盲腸がんから肝転移、肺転移、骨転移などが次々に明らかになり、抗がん薬治療に入った。しかし、それも順調には進まなかった。1月末に抗がん薬の副作用とみられる脳梗塞を起こし、転院を余儀なくされた。鎌田實さんが急きょ駆けつけ、深見編集人に、がんになった経緯から日本のがん医療に対する思いまでを聞いた。

 

深見輝明さん

やるべきことがいっぱいあるので、ここで倒れているわけにはいかないと
ふかみ てるあき
1947年、愛媛県生まれ。東京理科大学物理学科中退。週刊誌の編集を経てフリーの科学・医療ジャーナリストとして独立。2003年、エビデンス社を設立して同年10月、月刊「がんサポート」を創刊。著書に『奇才・異才の科学者たち』(NTT出版)『〈ガン〉遺伝子治療』(講談社)『緑色はホントに目にいいの?』(ウエッジ)共著に『未来への選択』(毎日新聞社)『男のからだ・女のからだ』(講談社ブルーバックス)など

 

鎌田 實さん

私も結構わがままですが、深見さんもわがままだから、言い出したら聞かないんだね
かまた みのる
1948年、東京に生まれる。1974年、東京医科歯科大学医学部卒業。長野県茅野市の諏訪中央病院院長を経て、現在諏訪中央病院名誉院長。がん末期患者、高齢者への24時間体制の訪問看護など、地域に密着した医療に取り組んできた。著書『がんばらない』『あきらめない』(共に集英社)がベストセラーに。近著に『がんに負けない、あきらめないコツ』『幸せさがし』(共に朝日新聞社)『鎌田實のしあわせ介護』(中央法規出版)『超ホスピタリティ』(PHP研究所)『旅、あきらめない』(講談社)等多数

右脇腹痛の診察で大腸部分に黒い影が

鎌田 深見さんががんだと聞き、本当に驚きました。そして、抗がん薬治療を始めたとたん、脳梗塞を発症し、がん研有明病院から東京済生会中央病院に転院されたのですね。

深見 まだちょっと言葉が出にくいので、ご迷惑をかけます。

鎌田 手足の麻痺は?

深見 それはないです。

鎌田 言語障害だけですか。こちらの話は理解できる?

深見 大丈夫です。

鎌田 ちょっとしゃべりづらいということだけですね。(テーブルのペットボトルを見て)飲み物は普通に飲める。食事も普通に大丈夫?

深見 普通食です。

鎌田 それにしても、年末から急な展開でしたね。

深見 もう、踏んだり蹴ったりです。

鎌田 「がんサポート」が今年10周年だそうですから、深見さんとのお付き合いも、もう10年になりますね。ここしばらくは会うことは少なかったですが、以前は私の対談に同席されたり、患者さんのことでよく相談に乗ってもらい、いいチャンネルを紹介してもらいましたよね。まさか深見さんががんになるとは思わなかった。どういう経緯で見つかったのですか。

深見 24日のクリスマスイブに妻と外で食事をしましたが、コースの肉料理が出てきたころには一口食べただけでもうお腹がいっぱいになりました。そういえば、最近飲んでいるときあまり食べられなくなったと感じていました。その夜に急に右脇腹が痛くなり、全然眠れなかったのです。治まるかなと思いましたが、やはり痛みが続いたので、28日に近所の東京歯科大学市川総合病院でCT検査をしたところ、大腸に影があり、肝転移の可能性があると言われました。すぐ妻に「ボクも立派ながん患者になったよ」と電話をしました(笑)。

鎌田 むちゃくちゃショックだったでしょう?

深見 ショックでした。がん年齢には達しているのですが、一挙にきた感じでしたから。

鎌田 奥さんに電話をした後は?

深見 その足で会社に行き、仕事をしました。その日は仕事納めでしたので、仕事が終わった後に社員には、大腸にがんが見つかり、肝転移しているので、1月から通院しながらの仕事になるので迷惑をかけるというような話をしました。

そして、お正月休み中に、がん研有明病院の消化器センター長の山口俊晴先生に手紙を出しました。「通院で検査しながら治療したらいいでしょう」というメールを頂きました。1月8日に外来でCT検査したところ、「肝転移があると難しそうだし、腸閉塞の可能性もある」ということで、そのまま入院となりました。

「医者の不養生」が如きがん専門誌編集長

鎌田 急に右脇腹が痛くなったということですが、もっと前から症状があったんじゃないですか。

深見 昨年9月の下旬に、右足ふくらはぎが腫れて、痛くなったことがありました。年末にも行った市川総合病院の整形外科へかかったのですが、単なる炎症でしょうということで、そこで湿布をしてもらったら、痛みも腫れも取れ、普通に歩けるようになりました。一件落着と思っていたら、1カ月後にこんどは左足が腫れたのです。これも湿布ですぐに治りました。

しかし、がん研の消化器内科の担当医の松島知広先生は、それはがんによる症状ではないと思うと否定的です。すると12月に入って、腰が痛くなりました。腰痛は以前からときどき経験していましたが、それにしても次から次にあちこち痛くなるなぁ、と妻に愚痴ったら「さっさと病院に行きなさい」と。そして最後がクリスマスイブの夜の右脇腹の痛みだったのです。

鎌田 それで近所の病院へ行き、CT検査で大腸に影が見つかり、肝転移の可能性も指摘された、というわけですね。その時点では、まだ詳しいことはわからなかったわけですね。

深見 単純CTですから、腸のどの部分のがんかは、まだ確定されませんでした。

鎌田 年が明けてがん研に行くまで、痛みは大丈夫でしたか。

深見 年末に一応、痛み止めの薬は処方されていました。その薬が正月の間になくなり、1月4日に病院に薬をもらいに行ったのですが、もらえませんでした。その薬は市販されていると聞き、市販の薬で間に合わせました。

鎌田 深見さんは「がんサポート」の編集・発行人ですし、私が相談するほど病気や専門医には詳しい人ですが、自分の体については注意していなかったのですか。

深見 自分のことはそっちのけでしたね(笑)。「医者の不養生」という言葉がありますが、山口先生にも、「紺屋の白袴だなぁ」と言われました(笑)。

鎌田 「がんサポート」を創刊して10年、このエビデンス社を守り、雑誌のクオリティを守ることに一生懸命で、自分の体をみる暇もなかったんだ。人間ドックも行かなかった?

深見 そうですね。

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