院内患者会世話人連絡協議会第4回定例総会を開催

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2008年9月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

参加者21人、団体10団体が参加して第4回院内患者会世話人連絡協議会定例総会が開催されました。
多くの意見が出され、互いに参考になることが多かったと思います。そのなかで、具体的な話題として、患者さんの意見を反映させたトイレ空間作りという研究も発表されました。

院内患者会とは、病院ごとの患者会です。患者会といえば疾患ごとの患者会というイメージが強いと思うのですが、院内患者会は病院という単位を大切にしました。

というのも、院内患者会では、集まって、話して(おしゃべりして)をもっとも大切なこととしているからです。患者会ごとにやり方は違うものの、大体、飲み物やときにはお菓子などを持参して、院内の会議室やどこかを借りて集まり、そしてわいわいおしゃべりをする、というものです。なかにはときどき(年1回とか)講演会などを予定する会もあるようです。

院内患者会は、参加した人たちがお互いに自分のことを話し、相手の話を聞き、ときにお互いの考えを伝えながら、最後には暖かい気持ちになって、そして会が終わることができればよい、そういうものだと考えています。もちろん、病院ごと、世話人により考え方はいろいろあるかもしれませんが。

患者会を運営していくことはとても大変

以前にも何度かここで紹介させていただきましたが、院内患者会世話人連絡協議会という会があります。院内患者会の世話人(代表の方)が集まる会です。

ところで、非公式ながらも患者会(組織)を運営していくことはとても大変です。もともとは、自分自身がおしゃべりをしたい、他の患者さんたちと触れ合いたい、そう思って始めた会であっても、その運営などに頭を悩ませ、結局、世話人の方自身にとってはストレスの会となってしまいます。そうであってはいけないと考えました。

そこで、世話人の方に集まっていただく協議会を年2回開催することにしたのです。

協議会では、お互いの患者会の状況を説明し、質問が出て、お互いの考え方、会での方針などを話し合います。これにより、全国にある院内患者会における状況が知れるだけではなく、世話人の方のもつ経験や知恵を共有することができることになります。そして、その後の懇親会を通じて世話人の方同士の交流を深め、閉会します。

患者さんの意見を反映した病院トイレ空間作りの研究発表

イラスト

2008年5月31日に第4回院内患者会世話人連絡協議会定例総会が開催されました。参加者21人、団体10団体でした。新会長、新副会長の挨拶の後、各患者会の紹介が行われました。その後に患者会同士での質疑応答と続きます。参加団体も徐々に増えてきたため、質疑応答ではいろいろな意見が出てきました。そして、まだまだ話が尽きないというところで時間オーバーとなり、次の協議会へ持ち越しとなりました。また、インターネットを通じて続きを行うことも提案されました。その後には、院内患者会が協力している研究の報告がありました。

そのなかで、癒やしのトイレ研究会というTOTOを含め4社のトイレの空間作りに関わる会社と研究者が作る会からの報告がありました。癒やしのトイレ研究会では、よりよい病院のトイレ空間作り(便器だけではなくトイレ空間です)を目指していました。

3年前に癒やしのトイレ研究会の方が学会での僕の発表に触れてくださり、以後、お付き合いいただき、患者さんの意見を反映させたトイレ空間作りということで進めてきました。

院内患者会でも、入院経験者としての意見を多く提供し、癒やしのトイレ空間作りに貢献してきました。トイレ空間作りとしての途中経過発表でしたが、企業に患者さんの意見が反映されていくことが実現できるかもしれない、そんな期待が持てました。そして、今後も、トイレ空間作りに協力をしていくことを約束しました。

院内で活動することが医療をより知ることになる

世話人の方々の話を聞いていて改めて感じるのは、患者会ごとの特徴が出ているということです。それは、会の成り立ちや病院の対応、そして世話人の方々の考えなどによると思いました。

昔、日本の各地にはそれぞれの特徴があり、特産があり、匂いがあったと思います。患者会も同じだと思うのです。もちろん、良いところは応用してほしいと思います。

でも、それぞれの患者会は病院と参加する人が作るものなので、同じものはできないと思うのです。患者会ごとに違いがあってよいのだという認識が、世話人の方々が集まる協議会で持てればよいと思います。そのうえで、お互いの知恵や経験を共有し活用していくことができればと思っています。

このようなことも病院単位にこだわった理由の1つです。そして、院内にこだわるのは、患者さんや患者家族の方が病院内で活動することで、皆さんにも医療への参加の意識を持ってほしい、と思ったからです。これからの医療は医療者だけが作るものではなく、患者さんや患者家族の方も一緒に作り上げていく必要があると考えています。

そのためには、どうしたらいいのか――。

患者さんや患者家族の方の視点から出てきたアイデアが大切だと思います。このアイデアは、医療者では決して生み出せないアイデアだと思うからです。けれども、経験だけあっても、医療や病院を知らないままではアイデアも出せないと僕自身は考えたのです。そのために、院内で活動をしていただくことで徐々に医療、病院を知ってもらえる、そう思うのです。

でも、あせる必要はありません。できることをする、これでいいと思います。そうするうちに年2回の院内患者会世話人連絡協議会も4回目となりました。こうして歴史を刻んでいくなかでアイデアも出てくるでしょう。

繰り返しますが、あせらない、そう思っています。皆さんのなかでも、院内患者会を作ってみたい、おしゃべりの場がほしい、そう思われる方がおられましたら、いつでもお手伝いしますので、ご連絡ください!!

追伸

院内患者会世話人連絡協議会、という名前は長い、そう感じる方も多いでしょう。

ということで、英語名(Hospital based Patients Advocacy Council)をもじって、HosPAC(ホスパック)と名づけました。現在、ロゴの作成中です。皆様HosPACを覚えてくださいね!!

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