医療の輪を広めるためには患者家族への感謝が大切です

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2008年3月
更新:2013年4月

  
ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

患者会である「ももの木」を通じて、もしくは、ホームページを通じてメール相談や面談による相談などを受けています。患者さん御自身だけではなく家族の方からの相談も結構あります。

僕自身は患者家族の方々にとって、もっともっと医療の輪が広がればいいな、と以前から思っていました。先日も、患者会の集まりがあり、みんなでわいわいおしゃべりをしていました。その中に家族の方がおられました。

僕が参加する患者会のおしゃべりは、とくに決まった形はありません。大きな部屋にお菓子や飲み物を持ちよったり、または、喫茶店の一部を借りて(陣取って)飲み物やケーキなどをそれぞれが頼んだりして「おしゃべりの場」を作って始まります。集まった人たちでわいわいとお互いがしたい話をするのです。

最初に簡単な自己紹介をすると自分がお話したい相手などが見つかってよいのですが、みなさん(僕も含めて)お話したい人が多いので、自己紹介だけで1時間以上かかってしまうことがあってそれ以来注意が必要なのです……。ともかく、皆さんが小さな輪を作っておしゃべりが始まるのです。

家族は何を聞いていいのかわからない

家族の方からの相談では、メールでも面談しても思うのですが、何をしていいのか、家族としてなにができるのかなど、多分、何を聞いたらいいのか、もわからないのではないかと思うことがあります。相談に来てくれたり、メールをくださる方以外にも、そういった方々がたくさんおられるのではないかと思うのです。

僕自身の経験でも、自分の専門分野以外の病気で母親が入院したときには、とりあえず循環器内科の友人に電話をしていろいろ聞きました。そういうものなのではないでしょうか?

また、患者さんには入院中に医師、看護師や薬剤師などいろいろな医療者からお話があります。もちろん、それでも十分に説明できて、納得していただけているかどうか、100パーセントとはいえないと思います。さらにご家族となればなかなか医療のことが理解できないと思うのです。何を聞いたらいいのか分からないというのも当然かなと思います。

それでも、インターネットや本、周りの方々からの話で徐々に理解していかれる方もいらっしゃいます。そして、もちろん疑問も抱き、詳しく聞きたいと思うでしょう。でも、なかなか病院の医師や看護師たちを呼び止めて質問をすることはできにくいようです。そういった方からの質問は医療の中でもとくに医学的な質問が多いような気がします。それは、入ってくる情報が医学的な情報が多いからだと推測するのですが。

ただ、僕自身はその現状をみて感じるのですが、もっと家族の方ができることって他にあるし、逆に家族の方でなければできないことってたくさんあるとも思うのです。医療者がそれらを家族の方にお願いしていないのかもしれないのですが。

家族の方には患者さんの人生をサポートして欲しい

イラスト

僕自身が思う、家族の方ができることとは、それは、患者さんの人生をサポートすることだと思います。このように書くととてもたいそうに聞こえるかもしれないのですが、そんなことはありません。

ちょっとしたことでもいいんです。するほう(家族の方)にはちょっとしたことでも、受けるほう(患者さん)にとっては大切なことであったりします。

患者さんと医療者だけではなく、患者さんと家族の方の思いとはときにズレが生じることがあると思うのです。患者会の交流会で「結構、患者さん自身が吹っ切れているのに家族の方が思い悩んで、ってことあるよね」という問いかけに、大きくうなずく患者さんがいても、家族の方は結構首を傾げたりしています。もちろん、人それぞれとは思うのですが、このズレを解消していくためには患者さんと家族がどんどん話をすることが大切だと思うのです。家族の方は一緒に住んでいたり過ごしていたり、だからこそ、患者さんが何を思っているのか、何をして欲しいのか、がわかっています。しかし、医療に対してとなると、患者さんの性格などを知っていても医療を知らないがゆえに家族の方もわからなくなる。そこは、患者さんを知っている家族と医療を知っている医療者が一緒に考えていくべきところなのでしょう。だからこそ、家族の方には患者さんの人生をサポートして欲しいと思うのです。

医療の輪は患者家族への感謝から始まる

ある病院に勤めていたときに感じていたのですが、病棟に患者さんのトイレはある、医療者のトイレもある、でも家族の方のトイレがない。家族の方が病院で過ごす時間は長かったりするのに、こうした状況ではなかなか大変だろうと思います。同様に、家族の方に医療者から、病院からのサポートが十分に行われているのか、というと、考えさせられてしまいます。

家族の方に患者さんの人生のサポートをしてもらうためには、医療が患者さんへも輪を広げていくことが大切だと思うのです。それは、家族の方の存在を認識して感謝することから始まると思っています。

私事ですが。先日、3歳の子供が転んで目の横を切りました。出血がなかなか止まりません。私自身は出張の帰り道、新幹線の中でした。妻が傷を負った子供を抱え、道でタクシーを拾い、小児病院へ駆け込みました。受付では傷口を押さえ子供を抱えている妻がいろいろ書かなければいけません。でも2本の手では足りない。仕方ないので、6歳の長男が傷口を抑え、8歳の長女があやしました。結局2針縫い、出血は止まり、家へ戻ったのは夜8時を過ぎていました。

傷の手当てをしていただいた医療者の方々だけではなく、家で、家から病院へ、受付で、そして帰宅と、妻をはじめ家族の協力があってできたことだと思います。傷を負った子供もがんばった、そして、妻も、2人の子供たちもがんばってくれたと思うのです。こういったことが、家族のサポートであると思いますし、自分自身も実感しました。医療者の方にも感謝し、家族みんなに感謝一杯ですね。ちなみに、僕が帰宅した直後に家族が病院から戻りました。ということで「ももセンセー」の活躍は今回はなく……。

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