「患者会」―次世代の患者会の姿を提案いたします 2

文:田中祐次 東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手
NPO血液患者コミュニティ「ももの木」理事長
イラスト:杉本健吾
発行:2007年4月
更新:2013年4月

  

ももイラスト

たなか ゆうじ
1970年生まれ。徳島大学卒業。東京大学、都立駒込病院を経て、米国デューク大学に留学。
現在は東京大学医科学研究所探索医療ヒューマンネットワーク部門客員助手。
2000年、患者会血液患者コミュニティ「ももの木」を設立し、定期的な交流会を続けている

「患者の病院生活」に考えを巡らせた富山での1日

患者会は全国に3000も4000もあるといわれています。今回は、そのなかの1つ、富山県にある「すずらん会」を紹介いたします。

僕が「すずらん会」の会合に初めて参加させていただいたのは、2006年3月のことでした。会場は、富山県立中央病院の中の会議室にあり、入院患者さんや外来患者さん、看護師が集まって、お茶を飲んだり、お茶菓子をほお張ったりしながら、それぞれが楽しそうに会話を弾ませていました。

この日の会合は僕も参加するということで、会の方々が温泉宿での宴会を特別に企画してくださいました。中央病院での会合が終焉し、宿へと向かうバスの中で、僕の隣に腰を下したのは20歳の男性でした。最初、彼との会話はうまく回らず、ぎこちないものだったのですが、何度か話しかけていくうちに、向こうからいろいろと話をしてくれるようになりました。闘病・学校生活・今後の進路……。そんな幾多の話題のなかに学校教育をテーマとしたものがあり、彼の意見はこのようなものでした。

「子供たちに何も教えない小学校教育が悪いんです。だから、高校生になっても雑巾さえ絞れない。まるで、オニギリをにぎるように雑巾を絞っているじゃありませんか」・・。

このような話を次々に繰り出せるのは、闘病生活からいろいろなことを考えさせられたからなのかもしれません。けれども、闘病生活が彼の人生のすべてではなく、一部だからこそ得られた考えだと思います。

また、病院側からの視座では、患者さんはあくまでも患者さんです。しかし、患者さんにとって病院生活とは、人生のほんの一部でしかありません。だからこそ、闘病で得た体験や考えが、人生にも反映されていくのではないでしょうか。

普段の僕は、病院から1歩離れ、患者さんやその家族の方と会話をする機会があります。そんなとき、「患者さんにとって病院生活とは、人生のほんの一部」であることを改めて気付かせてくれます。そのような意味でも、この日、出会った彼の話はとても興味深く、2時間のバス移動がアッという間に感じました。

その後、気さくな「すずらん会」の方々とともに、図々しい僕は、宴会はもちろん、その後の部屋での団欒や、お風呂での裸の付き合いなどをさせていただきました。そして、夕食で胃の腑を満たしたあと、部屋でオニギリを4個も食べてしまったのは、心地いい雰囲気に包まれていたのと、長閑な温泉地に身を置いていたせいかもしれません。

翌朝は早くに宿を出て、「すずらん会」の幹事の方の自動車で空港まで送っていただきました。その車内で、この方が広めようとしている吹き矢競技のことが話題になりました。

宿から空港までの道のりは「高速道路を使ったほうがいい」と、他の会員の方々がアドバイスを送ってくれていました。にもかかわらず、幹事の方は高速道路を使わず、自信満々にハンドルを握り続けていました。こういった頑固さや、吹き矢競技を地道に広めようとする粘り強さが、「すずらん会」を支えているのだと感じました。

推進したい、患者同士の“おしゃべり”

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僕は再び「すずらん会」の会合に出席させていただきました。そのときは、会の方々からの強い勧めで、同じ北陸にあり、金沢大学付属病院を中心に活動している「萌の会」の会合にも参加することになりました。その際にも1泊したため、夜にはささやかな宴会を催していただきました。このときに聞いた話で、非常に印象的だったのは新病院への不安です。それは「病院の設備は新しくなり便利になったかもしれないが、そのために失われたものがある」という内容でした。

たしかに、新病棟は今風であり、大部屋にそれぞれ洗面場とトイレが設置されているので、患者さんが廊下に出てきて話をする光景を見ることは滅多になくなりました。そのため、患者さん同士の繋がりが薄くなったように思えます。以前の病棟では水場が1カ所であり、朝な夕なに洗面所に皆が並んだといいます。そして、そこで“おしゃべり”が生まれ、知り合いになっていったというのです。実際に「萌の会」を支えている4人の方々は10年前に同じ病棟に入院していた“仲間”で、偶然に外来で再会して会を設立させる方向に進んでいったということでした。

「すずらん会」や「萌の会」を訪ねて改めて感じたのは、“おしゃべり”の大切さです。このことは、患者さんや患者さんの家族、もちろん医療者も求めていることだと思います。

現在、僕が勧めている院内患者会の目的は、まさに“おしゃべり”の実現です。だから、今回、北陸の患者会で、このことがすでに行われていることは、大きな励みになりました。

また、院内患者会設立マニュアル作りは、この2つの患者会を含め10の院内患者会の世話人の方々からの声を反映させています。その世話人会を2006年12月16日に東京で開催しました。世話人の方々に声をかけたところ、なんと20人近い方々に集まっていただくことができました。さらに、そのなかには「すずらん会」の世話人である3人の方も含まれていたのです。

これだけの人が集まってくれるということは、それだけ皆が院内患者会の必要性を感じている表れであり、その意義深さを強く感じました。

院内患者会設立マニュアルは2007年2月5日に完成し、配布しています。加えて、人的サポートとしては私自身が日本中どこへでも出向きます。

今年に入ってから、すでに5件の病院が患者会を設立、もしくは設立準備を始めています。この号が出るころにはもっと増えているかもしれませんね。

皆様が願うのであれば、院内患者会は必ず実現します、いいえ、させます。是非!!

マニュアルご希望の方はこちらまでご連絡ください。HPも参照ください


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