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術後合併症を半減させたロボット支援下手術の実力 胃がん保険適用から3年 国産ロボット「hinotori」も登場

監修●宇山一朗 藤田医科大学医学部先端ロボット・内視鏡手術学講座主任教授
取材・文●黒木 要
発行:2021年9月
更新:2021年9月

  

「当病院では、胃がんの96%がロボット支援下手術で、基本的にはすべての進行度の胃がん患者さんに対して行っています」と語る宇山一朗さん

今日のがん手術は、根治性と共に、身体負担の少ない低侵襲性が求められる。腹腔鏡や胸腔鏡による内視鏡下手術の普及は、それに大きく貢献してきた。さらに内視鏡下手術を進化させた「ロボット支援下内視鏡手術」、通称ロボット(ダヴィンチ)手術が登場。2012年の前立腺がんを皮切りに、2014年の腎部分切除、2018年には胃がんを始め一気に11術式(7がん種)が保険適用になった。2020年にも肺がんの区域切除等8術式が追加されている。これらによりロボット手術の普及が進んでいる。今回は胃がん適用3年が経過したところで、消化器内視鏡手術の第一人者である藤田医科大学医学部先端ロボット・内視鏡手術学講座主任教授の宇山一朗さんに最新の胃がんのロボット手術について伺った。

腹腔鏡手術の欠点を克服したロボット手術

胃がんの手術は開腹手術の時代から、より低侵襲の技術を追究してきた。今では大きく分けて、開腹手術のほかに、腹腔鏡下手術、ロボット支援下(ダヴィンチ)手術の3つの術式がある。藤田医科大学では、胃がん手術の96%はすでにダヴィンチ手術で行っているという。

「腹腔鏡下手術は、もともと大きな欠点がありました。患者さんにとっては、傷が小さく負担が少ないのはダヴィンチ手術も同じですが、術者にとっては、手術器具が開腹手術のものより長い、2D画像画面で複雑な腔内の奥行きがわかりにくい、器具の先端に関節がないなど、当時は欠点が多くありました。そのため技術の差によっては、術後合併症のリスクが高くなります。これらの腹腔鏡下手術の問題を克服するためにダヴィンチは開発された、とも言えます」と、藤田医科大学医学部先端ロボット・内視鏡手術学講座主任教授の宇山一朗さん。

ダヴィンチの本体には4本のアームが付いており、1本にはハイビジョンの内視鏡カメラ、他の3本には手術器具をつけて患者の体内に挿入する。術者は数メートル離れたサージョンコンソール(操縦席)に座り、映し出された画像を見ながら遠隔操作で手術を行う。

「アームは多関節で、人間の手では曲がらない角度にも曲がり、ハイビジョンの内視鏡カメラによる映像は3Dで10~15倍に拡大可能です。人は細かい手先の作業を長時間続けると手が震えてきますが、手ぶれ防止機能が付いているので細かい作業をいとも簡単に行えます」

これは術後合併症を起こしにくいということと直結しているそうで、これがロボット手術の最大の特徴だと宇山さんは言う。

短所としては、ロボットアームの先端に付いている手術器具を遠隔で操作して行うので、いわゆる触覚がないことだ。

「ダヴィンチ手術の熟練者は、ハイビジョンカメラに鮮明に映し出された映像を見て、視覚的に臓器を捉えることができるので、触覚の欠如という欠点をカバーすることは可能です」と宇山さん。

もうひとつの欠点としては、手術時間が腹腔鏡手術より長くなることだが、そのことによって手術ができないケースはあるのだろうか。

「心臓が悪い患者さんに施行できないことがありますが、その理由は、腹腔内への炭酸ガスの注入に伴う縦隔圧の上昇が原因ですから、この欠点はロボット手術も腹腔鏡手術も同じです」(宇山さん)

左奥のサージョンコンソールに座りダヴィンチXiで胃がんの手術をする宇山さん

3つの手術の治療成績の比較は?

3つの胃がん手術(開腹、腹腔鏡、ロボット)を比較した臨床試験はない。だが開腹手術より、腹腔鏡下手術のほうが患者さんには傷が小さくて体への負担も少ないのは明らかである。ただ、患者さんへの同等な負担の腹腔鏡下手術とロボット支援下手術の比較はどうか。

●先進医療の場で、ロボット手術は腹腔鏡手術より術後合併症を低減させることを検討した試験

藤田医科大学総合消化器外科では、宇山さんが中心となって2009年から胃がんと食道がんに対してロボット手術を開始した。胃がんのロボット手術の保険適用を目標に、「先進医療B」でのロボット手術の申請を2014年に行った。そして2017年1月までに330例が登録された。対象は内視鏡的切除の適応外とされたものの根治手術の可能な胃がんで、ステージⅠまたはⅡの患者さんである。

「ロボット手術の有効性や安全性がこの評価において示されれば、保険適用につながります。そのためにはロボット手術が腹腔鏡下手術より優れている部分があることを証明する必要がありました」

その臨床試験の方法には一工夫が要った。

先進医療という制度では、患者も先進性のあるロボット手術という医療技術に対し、費用を負担するため、ロボット手術群と腹腔鏡手術群に無作為に振り分けるランダム化比較試験(RCT)はできない。そこで、当時腹腔鏡手術を積極的に行っていた3施設(藤田医科大、京大、佐賀大)において、過去に腹腔鏡下手術を行ったⅠ~Ⅱ期の801例の評価をした。するとグレード3以上の術後合併症の発生率は6.4%であった。

宇山さんらはそこに着目した。

「ロボット手術では、その発生率を半分以下にできるという仮説を立てて臨床試験を進めました。その解析結果は、ロボット手術の術後合併症の発生率は2.45%となり、狙い通りに半分以下に抑えられ、腹腔鏡下手術よりロボット手術が優位に合併症を減らせるということが証明されました」

胃がんの先進医療Bで集積したデータを元に、2018年に胃がんのみならず、食道がん、肺がん、縦隔がん、直腸がん、子宮体がんも一括して保険適用になった。切除、リンパ節郭清、腸の吻合という3つの要素を持つ胃がん手術で有用ならば、とデータのなかった他のがん種の適用にも一役買った。

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