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子宮体がん MRI検査
ぶ厚い内膜、腫瘍に濃淡やモザイク模様などががんの特徴
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
63歳のOさん。不正出血が続き、近くの病院の婦人科にて受診。子宮体がんの疑いが強い、ということで国立がん研究センターを紹介される。再度検査をしたところ、子宮体部のがんが確認された。引き続き、がんの広がりを調べる検査を行ったところ、がんは子宮に限局して外に広がっていなかったので、子宮と卵巣などを摘出する手術を受けた
まずは細胞診でがん細胞の有無を確認
性器からの不正出血は、子宮がんの典型的な症状です。子宮がんは大きく分けて子宮の入り口の子宮頸部に発生する子宮頸がんと、その奥の子宮内膜に発生する子宮体がんの2つがあります。
Oさんはまず子宮頸部の粘膜と内膜の細胞を器具(ブラシ)で採取して、がん細胞が含まれているかどうかを顕微鏡で見る細胞診検査を受けました。結果は一般の病院では1週間ほどで、病理部といって顕微鏡検査を担当するセクションのある病院では数日内に判明します。
「子宮体がんの検査は細胞診だけでは判定がつきにくいことがあり、その場合は子宮内膜の組織を部分的に取ってがん細胞の有無を調べる組織診もしくは子宮内膜全体を取って調べる検査を行います」(森山さん)
Oさんは、細胞診で子宮体部のがんであることが判明しました。
次に、がんの大きさや浸潤(隣接する臓器へしみ込む)を見るためにMRI(核磁気共鳴映像法)検査を受けました。
「この検査はがんの存在を確認する意味合いと、がんの広がりを見て手術の適応があるかなど、治療方針を決める際に参考とする意味合いがあります」(森山さん)
広がりを見る画像検査は施設によって超音波やCT(コンピュータ断層撮影装置)検査で代替することもありますが、全部揃っている施設では画像の鮮明さの点ですぐれているMRIを使うのが一般的だそうです。
MRI画像では腫瘍、出血痕、空気は黒っぽく写る
OさんのMRI検査画像はよく見る身体の横断面ではなく、縦の断面で表されています。
向かって左側が腹部、右側が背中(お尻)になります。画像は腫瘍や出血痕、空気は黒っぽく写るように設定されているのですが、それぞれ濃淡がついて表されます。
「この画像では細胞診を行った当該の箇所、子宮内膜の奥のほうにがんが存在することが見てとれます。子宮内膜から子宮内腔に向かって、がんによって肥厚した内膜がせり出すようにしている様子がわかります。右図に印した部分が、そうです」(森山さん)
子宮体がんと区別しなければならない疾患としては、子宮内膜増殖症を筆頭とする良性腫瘍がまずあげられますが、腫瘍をよく観察すると、部分によって濃淡があり、さもいくつかのパーツをくっつけたように見えるモザイク模様がある点、輪郭がゴツゴツしている点が、がんの特徴をよく表しているのだそうです。
検査の手順で次に注目しなければならないのは、がんの浸潤の程度です。がんが陸伝いにどれほど侵食しているか、ということになります。これによって手術でがんが取りきれるかどうか、おおよその見当がつきます。
子宮内膜のがんの輪郭でがんの広がりを見る
幸い、Oさんの場合、がんは子宮内膜に限局しており、子宮の壁や筋層には浸潤が認められませんでした。
画像を見ると、そのことがよくわかります。子宮内膜に存在するがんの輪郭からは、周囲に触手を伸ばすような黒い影は出ていません。検査画像はもちろんこの1点だけでなく、横断面も含めて何枚もあります。
「それらを総合して、子宮内膜からがんは広がっていないと診断がつき、手術という治療方針が決まりました。子宮体がんの手術は、がんを取り切ることとがんがどこまで広がっているかを確認する目的があります。そこで子宮を全部取り、併せて卵巣、卵管を切除するのが標準です。周囲のリンパ節を、取ることもあります。がんの浸潤度によっては、もっと広い範囲で切除する場合もあります」(森山さん)
がんが隣接する膀胱や大腸に広がっているような場合は、泌尿器科や消化器科の外科医の協力を仰がなければならないこともあります。ちなみに国立がん研究センターには骨盤外科というセクションがあり、ここが骨盤内の手術の一切を担当するのだそうです。
Oさんの場合、がんの広がりは子宮の外には認められなかったので、手術は標準的な方法が行われました。
治療後2年が経ちますが、再発の兆候はなく、元気に暮らしていらっしゃるそうです。
MRI検査画像に写った子宮体がん(縦)
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