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大腸隆起性病変(大腸ポリープ) 内視鏡検査
病変の大きさとびらんの痕跡でがん化を疑う

監修:森山紀之 国立がんセンターがん予防・検診研究センター長
取材・文:黒木要
発行:2010年2月
更新:2013年4月

  
森山紀之さん

もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断

患者プロフィール
67歳の男性Pさん。大腸がん検診(便潜血反応検査)で陽性となり、精密検査(大腸内視鏡検査)を行ったところ、隆起性病変(大腸ポリープ)が見つかった。12~13ミリと大きく、先端部分にびらんが起こっており、がん化の疑いもあるので切除。病理検査を行ったところ、一部ががん化していた。だが、がんのポリープを越えた広がりは認められず、内視鏡による病変切除と病理検査がそのまま診断と治療になった

S状結腸にキノコのような病変

Pさんが受けた便潜血反応検査は大腸がん検診の1次的な検査で広く行われているものです。

がんと便がこすれて便に混じる微量の血(潜血)を手がかりに陽性か陰性かの判定をします。

陽性であれば、次のステップの精密検査へ進むのですが、潰瘍や痔などの出血も拾い上げてしまうので、精密検査で詳しく調べる必要があります。

その精密検査は、一般に大腸内視鏡検査が行われます。先端にカメラ機能を搭載したファイバーを肛門から挿入し、奥へ進めながらモニターに映し出される大腸内壁の様子に変化がないか、順次調べていきます。

10ミリ以上の病変は3割ががん化している

内視鏡画像
67歳・男性。腺腫+がん
説明図

この検査で、直腸の奥にあるS状結腸にキノコのように隆起している病変が見つかりました。俗に大腸ポリープと呼ばれるもので、径が12~13ミリはある比較的大きな病変です。

「大腸内壁の隆起性病変のなかには、腺腫と呼ばれる良性の腫瘍があります。この腺腫は、大きくなればなるほどがん化する危険性があります。具体的には、10ミリを超す病変を内視鏡で採取して調べると約30パーセントの割合でがんが見つかります」

Pさんの病変も10ミリを超えており、しかも表面の一部がびらんが起こっていました。くずれて潰瘍になる寸前の状態で、がんのなかには潰瘍を持つものが少なくないのだそうです。

「病変の大きさからもびらんの痕跡からも、がん化の疑いがあり、病変を内視鏡で採取して調べる必要がありました」

内視鏡で切り取られた病変は顕微鏡で細胞の形などを見る病理検査に回されます。このなかにがん細胞が混じっていればがんの診断がくだされます。ちなみに病変の切除時の痛みはまったくありません。大腸内視鏡検査の所用時間は大腸をくまなく調べても1時間ほど。入院の必要はなくその日のうちに帰ることができます。結果は通常数日から1週間の間に判明します。

Pさんの結果は陽性で、腫瘍の一部ががん化していました。

6~9ミリの大腸腺腫は将来がん化するグレーゾーン

内視鏡画像
63歳・女性。腺腫のみ
説明図

大腸腺腫は大きさに比例してがん化の率が高くなるのなら10ミリ以下のものはどうなのでしょうか。森山さんによると、6~9ミリのものはいわゆるグレーゾーンだそうです。将来的に、がん化する危険性がゼロではないということです。

「もう1つの写真は、Pさんとは別のTさん(女性)の腺腫で大きさは7ミリです。この大きさでは取ってしまうこともあれば、定期的な検査をしつつ、しばらく様子を見ることもあります。医療施設によって、方針が違うかもしれません」

森山さんによると、症例数の多い医療機関では内視鏡像を数10倍の倍率で拡大できる拡大内視鏡という装置を使い、病変をつぶさに観察し、がんかどうかを判別することもすでに行われているそうです。

「病変には独特の模様や構造があり、がん化しやすいものは特徴が分類されています。この模様や構造を調べることは、がん化診断の有力な手がかりとなっています」

ただPさんのように腺腫と思われる病変の大きさが10ミリを超えるようなケースでは、それのみでがん化の疑いがあるので、拡大内視鏡を使うまでもなく、病変を内視鏡的に切除し、病理検査に回すのがセオリーなのだといいます。写真は載せていませんが、Pさんの大腸には他にも隆起性の病変がいくつかありました。いずれも、大きさが5ミリ以下でした。

「5ミリ以下の腺腫に、がん細胞が含まれていることはほとんどありません。ただ、将来的に大きくなってがん化する可能性がないわけではありません。そこで定期的に検査をして肥大化していないか、様子を見ていくように勧めることもあります。その場合、1~2年で急速に腺腫が肥大し、がん化することはないので、2~3年に1度の頻度の検査で充分だと思います」

Pさんは先般、最初の定期検査を受けましたが、腺腫の大きさはさほど変わっておらず、次回は2年後に経過観察をすることになりました。


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