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乳がん/マンモグラフィ検査(2)
微細な白い点の形の不揃いや角ばったものに着目する
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
42歳の女性Pさん。国立がん研究センターにて乳がん検診を受け、がんの疑いが浮上。精密検査で、しこりを伴わない乳がんが見つかった。微細なガラス破片が散在したような石灰化を有するもので、触診や超音波検査では見つからないがんであった
マンモグラフィ検診では微細ながんも発見される
症状のない人を対象に、早期がんを見つけることを目的としたがん検診。
乳がん検診では視診・触診と画像検査の超音波検査、マンモグラフィ検査などが行われます。
視診・触診は乳房の形や皮膚に変化がないかを肉眼で見たり、指で触れて、超音波検査は超音波の反響を利用して乳房内の様子を即時にモニターに映して、しこりの有無を見ます。マンモグラフィ検査は乳房を片方ずつプレートに挟み、圧迫した状態で撮影する乳腺専用のエックス線検査です。
検診ではそのなかのどれか、もしくはいくつかを組み合わせて行われています。
Pさんは仲のよい友人が乳がんになったこともあり、自発的に検診を受けることにしたのですが、視診・触診と超音波検査では異常は認められませんでした。
しかし、マンモグラフィ検査で気になる所見が見つかりました。
検査写真を、ご覧ください。
下部に散在している微細な白い点状のもの、これががんを疑う重要な所見の1つなのだそうです。
マンモグラフィ検査写真。矢印で示された箇所が、微細石灰化を有する乳がん
しこりをつくらずに石灰化を伴うタイプの乳がんもある
「Pさんの検査写真の中に点在している白い点状のものを石灰化といいます。乳がんのなかにはしこりをつくらずに、このようにカルシウムが沈着してできる石灰化を伴うタイプがあります。石灰化はイコール乳がんというわけではないのですが、重要な手がかりの1つなのです」(森山さん)
石灰化は写真でわかるように非常に微細で、しこりをつくらないので、指で触れることはできません。
また、超音波検査でも映りません。
「マンモグラフィ検査の最大の特徴はまさにそこにあって、視診・触診あるいは超音波検査では発見することの困難な微細な乳がんを発見することができるのです」(森山さん)
乳房内の石灰化は乳汁をつくる乳腺細胞に炎症が起こったり、壊死したりすることでも起こります。
たとえば生理(月経)の前に乳房の張りを伴ったりする乳腺症、細菌感染が原因の乳腺炎、良性腫瘍の線繊維腫、曩胞などが該当します。
乳房内の石灰化は、頻度としては圧倒的にこちらのほうが多いのです。
では、これらの疾患に伴う石灰化と乳がんに伴う石灰化は、どうやって見分けるのでしょうか。
乳がんに伴う石灰化は白い点の大きさと形に注目
その区別は森山さんによると検査画像で、ほぼ見当がつく場合が多いといいます。
まず注目して欲しいのが、大きさだそうです。
「白い点の1つひとつが、大きかったり、小さかったりしています。乳がんに伴う石灰化ではこのように形の不同といって、大きさがバラバラであることが多いのです」(森山さん)
次に注目して欲しいのが、形だそうです。
「拡大写真を見ると、白い点がなんとなく角ばっているのがわかります。がんではない場合はまん丸いものが多いのですが、がんの場合はこのように輪郭が不整であることが多いのです。大きさも形もバラバラな点は、厚いビンが割れた破片のようでもあります」(森山さん)
ちなみに医師らはもっと拡大倍率が大きい写真を見るのですが、それでもがんに伴う石灰化なのかそうでないものなのか、判別がしにくいものがあるそうです。
「そのような場合は病変に針を刺し、細胞や組織を採取して、がん細胞の有無を調べる病理検査をします。Pさんの場合は、マンモグラフィ画像で、ほぼ乳がんであることがわかったのですが、念のために病理検査をして、がんであることを確認しました。そのうえで、乳房を温存する手術『乳房温存術』という治療方針が決まりました」(森山さん)
乳房内の石灰化ががんであるかどうかの目安は他にも注目すべき特徴があり、乳がん/マンモグラフィ検査(3)で詳しく解説します。
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