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脂肪肉腫・CT検査
ぼやけた輪郭とぐにゃっとした形状に注目
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
37歳の女性Zさん。2年ほど前から腹部の膨満感があったが、太ったせいと思い、放置していた。しかし、お腹の張りがだんだんきつくなってきて、近くの総合病院を受診。肉腫の疑いがあるということで、国立がん研究センターを紹介される。CT検査にて腹部に脂肪肉腫が見つかった
巨大化するまで放置してしまうことも
私たちがよく知っている胃がんや肺がんなどの一般的な「がん」は、内臓表面の上皮細胞から発生します。それに対し、筋肉や脂肪などの軟らかい組織に発生するがんを軟部肉腫といいます。脂肪肉腫はそのうちの1つです。
脂肪肉腫の発生頻度は人口10万人に2~3人で、少ない頻度ではありますが、そのなかでは30~50代に比較的多く発生します。
「全身のどこにでも発生しますが、腹腔内の後腹膜、大腿部などに好発します。見た目にわかるくらいに膨らんできて、あるいは手で触れるようになって見つかることがほとんどですが、痛みを伴わないので、そのまま放置されることが多いのです。Zさんのように、かなり巨大化してから受診するケースは珍しくないのです」(森山さん)
軟部組織にできた腫瘍は触診や視診をしたのちに、一般にはエックス線や超音波による検査が行われます。
「腫瘍の存在を画像で確かめた後、腫瘍の種類および良性か悪性かの見通しを立てるのが第一です」(森山さん)
最終的には組織を採って顕微鏡で細胞の型を見る病理検査によって判断するのですが、一部の腫瘍はCTやMRIなどの画像検査でもわかるといいます。脂肪肉腫の一部もそれに該当します。
なお病理部を設置しているのは大学病院や地域の基幹病院など限られた施設です。病理部のない施設では、検査会社に検査を委託するので、結果がわかるまで1週間前後を要します。
CT画像で見ると、皮下脂肪と同じ黒い色が腫瘍
CT検査で腹部に見つかった脂肪肉腫
Zさんの場合、ただちにCT検査が行われました。
このZさんの検査画像は、臍より少し上の横断面ですが、腹腔の右側(画像では左側)に20センチぐらいの巨大な腫瘍が存在しているのがわかります。
医師には、この腫瘍が軟部腫瘍であり、脂肪組織にできた腫瘍であることは容易に推測できるといいます。
「画像の1番外側の白く細い円形の線は皮膚で、その下に厚く、黒く写っているのは皮下脂肪です。このCT画像では脂肪は黒く写っているのですが、そのことを頭において腫瘍を見ると、同じように黒い部分がびっしりと詰まっていることがわかり、この腫瘍が脂肪腫瘍であることが推測できます」(森山さん)
形状にも注目する必要があります。腫瘍の右端が大腸の下に入り込んでいる様子が写っています。脂肪組織にできる腫瘍はやわらかいので、このように隣接する臓器の隙間に潜り込むように拡がっていくことはよくあるのだといいます。これも腫瘍が脂肪を主成分とする腫瘍であることを示しています。
問題は、この腫瘍が良性か悪性のどちらであるか、です。脂肪肉腫とまぎらわしい良性の腫瘍に、脂肪腫があります。私たちが「脂肪の塊」と言ったりする腫瘍です。脂肪腫は脂肪肉腫のように巨大化することは稀なのですが、ないことはありません。それを区別する目安として森山さんたち医師が注目するポイントが何点かあります。
「1つは輪郭(辺縁)です。画像では上部中央付近などは境界がぼやけて見えています。脂肪腫はこのようなことはなく、くっきりとしています。2つ目は腫瘍の中の形状です。この画像の腫瘍はいくつもの塊が寄せ集まってできているように見えます。色調も黒い部分に白が入り、混じっていたりして複雑です。脂肪腫の場合は色調が単一で、このようにゴツゴツした感じはありません」
ちなみにZさんは、この検査画像などをもとにして、治療方針が決定されました。手術をして切除したのですが、肉腫は再発することが多く、再手術と再発を繰り返すことがよくあります。しかし、他の臓器に浸潤してその臓器を壊すことはほとんどなく、再発しても直ちに生命に危機が訪れるということは少ないようです。
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