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前立腺がん・MRI検査
腫瘍と正常組織のコントラスト(色調)を強調して鮮明に表現
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
65歳のYさん。前立腺がんができることで血中に洩れる成分をひっかける血液検査(PSA検診)にて要再検査となり、触診や超音波などの検査を受け、がんの疑いを指摘された。
国立がん研究センターを紹介され、再検査のひとつとしてMRI検査を行い、12ミリ大の腫瘍が見つかった
触診などで見逃しがちな小さながんを拾う
最近、前立腺がんの早期がんがよく見つかるようになりました。患者数が急増していることもありますが、前立腺がんがごく小さい段階でも感度良く拾い上げるPSA検査の登場によるところが大きいとされています。
Yさんもこの検査を自発的に受けて、ひっかかってしまったのです。
PSA検査によって前立腺がんの疑いが持たれたら、次は本当にがんが存在するかどうかを調べる「がんの存在検査」が行われます。ちなみにこの検査をしても、がんは見つからないケースはよくあります。
存在検査はいくつか組み合わせて行うのですが、その手順は施設によって違いがあります。前立腺がんでは、まず肛門よりアプローチする触診(がんがあると、指に触れるとゴツゴツとします)や腹部超音波検査など、身体にやさしく負担の少ない検査から順に行っていくのが一般的です。
「触診はがんが小さい場合は指には触れませんし、腹部超音波検査は恥骨が位置的にじゃまになって、映らない場合があります。
そのため施設によってはそれらの検査に追加して、あるいはそれらの代わりにMRIやCTなどの画像検査を行うのです」(森山さん)
この部位の場合、CTでは骨などの余計な情報が画像に写ってしまい、診断が難しいケースがあるのだそうです。
本来の色調とは違う異種の色調の影が存在する
前立腺がんMRI脂肪抑制画像 外腺右下に黒い影が見える
そこでYさんはMRI検査を受けたのですが、この部位におけるMRI検査の特徴を森山さんは次のように説明します。
「オプション的な撮影方法がいくつもあるのですが、その選択により組織の微妙な違いをコントラストよく、境界や輪郭を鮮明に表現してくれます。ですから超音波やCTなどではわかりにくかった腫瘍でも描出できることがよくあり、存在診断を助けてくれるのです」
Yさんの検査では脂肪抑制と呼ばれる検査法を行いました。脂肪の多い臓器や組織では、がんがまぎれてしまうことがあるので、それを抑制した画像にして、腫瘍の存在や広がりを見やすくする方法です。
この方法を選択することで、Yさんの場合、前立腺の外腺と呼ばれるところに、がんが比較的簡単に見つかりました。
前立腺がんはこの外腺に見つかることが多いのですが、森山さんはこの画像を見て、次のように言います。
「この撮影方法では、外腺は通常白っぽく見えなければなりません。ところが外腺の、向かって右下に黒い影が存在しています。
外腺にこんな黒い影があること自体、それががんである可能性が強いことを示しています」
もしこの方法でがんが見えにくい場合、次は造影剤を静脈などから入れるMRI検査をしたりします。造影剤はその名の通り、病変に集まってその影をより鮮明にするための薬で、画像検査ではよく用いられる方法です。
「MRI検査は前立腺がんの存在診断に役立つのと同時に、がんがどこまで隣接した臓器や組織に広がっているかを見るためにも役立ちます。いわゆる病期を推定する際によく用います。治療方針を決める検査として有用なのです」
前立腺がんの存在診断としては、MRI検査のほかに、肛門から超音波のプローブ(探針)を挿入して直腸越しに前立腺を映す経直腸的超音波検査があります。
「以上のような方法で、前立腺がんの疑いを絞っていきます。最終的には、直腸越しに前立腺がんの組織を採取して、顕微鏡でがん細胞の存在を確認する生検により確定診断とします」(森山さん)
この確定診断ののちにMRI検査をして、病期を推測し、治療方針を決めるという手順になることもあります。
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