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甲状腺がん・超音波検査
塊の輪郭がでこぼこで、内部の明るさも不均一なのを見定める
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
64歳の女性Tさん。鏡を見ながら化粧をしているときに、喉頭隆起いわゆる喉仏の下の左側が腫れていることに気付いた。右側に比べると明らかに盛り上がっており、左右対称ではない。近所のクリニックで超音波検査をして、甲状腺がんとの診断を受け、国立がん研究センターへ紹介された
テレビのように映る画像
甲状腺がん超音波検査画像。気管に比べがんの輪郭は不整形
医療用の超音波検査は、体内の調べたいものに向けて超音波を発射し、返って来た反響を映像化して、その状態を見る検査です。1枚1枚の静止画として捉えるのではなく、テレビのように連続した動画が得られる点に特徴があります。
身体への負担はほとんどないので、胎児の様子を見るときにも使われます。
がんを見つける検査においては、まず腫瘍が存在していることを確認します。
Tさんの場合、甲状腺の左側(左葉)が腫れてサイズが大きくなっていたので、腫瘍の存在の判定は容易でした。
超音波検査の画像は狭い範囲しか映らないので、このTさんの検査画像は甲状腺の右側(右葉。検査画像は左右が逆になっている)は映っていません。
イラストでいえば、気管の左側に右葉は存在しているのですが、実際の検査ではそちらにも連続して超音波を当てますので、左右を比較すれば、左葉が腫れていることはすぐわかるのです。
「また我々医師は解剖図が頭のなかに入っており、気管や頸椎など周囲の臓器と甲状腺のサイズを比較して、すぐにそれが腫れて大きくなっているのかどうかがわかるのです」(森山さん)
腫瘍の存在が確認できたら、次にそれが良性か悪性かの判断をつけなければなりません。
腫瘍の形に注目
腫瘍の質的診断において、つまりそれががんであるかどうかを超音波検査画像で見るとき、大きな手がかりとなるのが、腫瘍の形と明るさです。
「腫瘍の形とはその輪郭のことですが、まず甲状腺左葉のほとんどにがんが広がっており、ひとつの塊として見えます。その輪郭はきれいな円形でなく不整形であるのが、がんである特徴です」(森山さん)
腫瘍の輪郭が不整形だということは、私たちにはなかなかわかりづらいのですが、甲状腺左葉の右側(写真では左)に位置する気管の輪郭を見ると、きれいな円形を描いており、それと比較すると、がんの輪郭が不整形であることが了解できると思います。
さらによく腫瘍をみると、いくつかのでこぼこがあります。一番わかりやすいのは腫瘍の右側(写真では左側)がいくぶん盛り上がっていることがわかるかと思います。
「そのように腫瘍自体にも隆起や凹みがあって、不整形であることもがんの特徴で、良性腫瘍と明らかに違う点です。見方によってはいくつかの腫瘍が集まって1つの塊を形成しているようにも見えます」(森山さん)
次に腫瘍内部の明るさに注目
次に明るさですが、腫瘍の内部に白っぽい部分と黒っぽい部分があり、それにも濃淡があって不均一であることが見て取れます。
写真でいえば腫瘍の上方部に黒い部分がいくつか存在します。
「腫瘍内部に出血があったり、細胞の壊死があったりすることで、超音波の反射が不均一になり、白い部分と黒い部分が混在するのです」(森山さん)
これも気管の部分と比べるとわかりやすくなります。気管のなかは空気で満たされているので、超音波は通過できません。
よって画像ではその部分は黒く映ります。骨も同様です。その画像は真っ黒で、明るさ(暗さ)は均一です。
ところが腫瘍の中はがんによる侵食の仕方に偏りがあり、それによって画像にも明暗が点在するようになるのです。
「そのように腫瘍内部の明るさが不均一であることも、がんであることのサインです」(森山さん)
ちなみに腫瘍が小さい場合などは、超音波検査のみでは腫瘍ががんであるかどうかの判定は難しく、針で細胞を採って顕微鏡で見る検査をすることになります。
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