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腎盂がん・腎盂造影
写るべき腎盂が白く抜けて欠損していることに注目
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
43歳の女性Gさん。半年ほど前に尿の色が幾分赤みがかっていることに気づいた。が、何の自覚症状もなかったので放置した。ところが3カ月ほど前から一目で血尿とわかる色の尿が頻繁に出るようになり、泌尿器科クリニックを受診。超音波検査の後に腎盂造影を行い、左の腎盂がんの疑いが強いことから国立がん研究センターを紹介された
造影剤を注射しエックス線撮影をする
腎臓でつくられた尿は、腎杯を経て、腎盂と尿管を通り膀胱に溜まります。その尿の通り道である腎盂にできるがんが腎盂がんです。
「腎盂、尿路、膀胱の経路にできるがんを尿路がんといいますが、もっとも多い自覚症状は、肉眼ではっきりとわかる血尿です。それも繰り返す点に特徴があります」(森山さん)
検査は、まずどこから出血をしているかを見つけるために、尿道から膀胱鏡という内視鏡を入れて観察することから始めます。
尿路がんでもっとも多いのは膀胱がんで、約半分を占めますから、これを疑い、膀胱内を隈なく見て、異状がなければ、左右の尿管口を確認します。そこから血が出ていれば上位の尿路である尿管あるいは腎盂からの出血である可能性が強くなります。
膀胱鏡検査の代わりに、最近では身体に負担の少ない超音波やCTから検査を始めることもあります。さらに膀胱鏡検査と併せて、尿の中にがん細胞があるかどうかを確認する尿細胞診検査を行います。
施設によっては、その結果がすぐに出ますので、それに基づいてさらに検査を進めて行きます。
尿管、腎盂に腫瘍があるかどうかを見る検査の1つとして、腎盂造影があります。
造影とは、検査画像をより鮮明にするための工夫で、造影剤という薬剤を写したい身体の部分に届け、撮影します。すると病変部分の陰影が強調されるなどの特徴的な画像が得られるのです。
この腎盂造影では、腕などの静脈から造影剤(水溶性ヨード剤)を注射します。造影剤はおよそ5分後には腎でこされて尿路を通り排泄されます。そのタイミングを狙い、エックス線撮影を行うのです。すると通常のエックス線撮影より、くっきりとした画像が得られるのです。これを経静脈性腎盂造影検査といいます。
結石と区別する必要がある
腎盂造影エックス線画像。がんがあるために腎盂がきれいに写されない
「正常な腎盂であれば、エックス線の画像には中空の腎盂が黒い形状で写っているはずです。しかし、このサンプル画像では、白く抜けてその腎盂が写っていません。がんがあるために尿の通り道がつぶれて、そこに造影剤が届かないから、白く抜けた欠損像として写るのです」(森山さん)
腎盂の欠損像が写る疾患としては、他に腎盂結石があります。
「がんと結石の区別は腹部超音波検査で、身体に負担をかけずに簡単に行うことができます。腹部超音波検査を腎盂造影を施行する前に行い、結石でないことを確認しておけば、腎盂造影の欠損像を見た瞬間に、それが腎盂がんの典型的な所見であることがわかるのです」(森山さん)
なお経静脈性腎盂造影は、CT検査を行える施設では、CTで代替することが増えています。 ただしCTを持つ施設でも、ケースによっては、治療方針を決める際に、腎盂造影を行うこともあります。その場合、尿道から造影剤を入れる逆行性腎盂造影が行われることが多いようです。
CT画像の腎盂がん。左腎盂が腫瘍で大きくなっている
サンプルの2枚目の検査画像は、Gさんの腎盂がんのCT画像です。
「右腎盂は正常の大きさですが、左腎盂は数倍の大きさになっています。腎盂がんによって尿が流れにくくなるため、腎盂が拡大するのです。CT画像の腎盂がんの特徴的な所見は、この拡大した腎盂です。これを以って一目で腎盂がんとわかります」(森山さん)
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