多彩な種類、治療法も様々 生存率の改善と最近の話題
監修●鈴木憲史 日本赤十字社医療センター副院長/血液内科部長
取材・文●「がんサポート」編集部
種類も治療法も多岐にわたる血液のがん。新しい治療薬の登場で、一昔前に比べて生存率も飛躍的に高まってきている。同時に解決を必要とする課題もまだ多く残されている。血液がんの基礎的な知識のまとめと、最近の話題を拾った。
「相談窓口の設立を」といった要望も
監修●黒澤彩子 国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科
取材・文●池内加寿子
新薬や移植などの治療法の改善により、白血病などの血液疾患を完治させるケースも増えており、最近ではいかに治療を終えた後のQOL(生活の質)を維持することができるかが問われるようになってきた。そうした中、国立がん研究センター中央病院造血幹細胞移植科では、急性白血病患者さんを対象に治療後のQOL調査を実施。回答内容を吟味することで、QOLを加味した治療の選択につながると、注目を集めている。
薬剤の使い分けが重要に
監修●鈴木憲史 日本赤十字社医療センター副院長/血液内科部長
取材・文●町口 充
慢性骨髄性白血病(CML)は、近年の分子標的薬の登場で治療法が目覚しく進歩している。昨年(2014年)新たに2次治療、3次治療に有効なボスチニブが加わり、他にも新規薬剤の登場が待たれているが、完全治癒により薬を服用し続けなくてもよい時代の到来も決して夢ではなくなってきた。
最新治療と新薬の動向
監修●塚崎邦弘 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科長
取材・文●「がんサポート」編集部
悪性リンパ腫には多くの病型があり、様々な臓器に生じ、それぞれ治療法も異なる。ここでは日本人に多いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マルト(MALT)リンパ腫の3つのB細胞性リンパ腫を取り上げ、新薬も交えて、最新治療情報をリポートする。
貧血治療薬としてネスプも登場!
監修●原田浩徳 順天堂大学医学部内科学血液内科准教授
取材・文●柄川昭彦
正常な血液細胞が造られなくなる病気である骨髄異形成症候群(MDS)。完治させる唯一の治療法は造血幹細胞移植だが、たとえ造血幹細胞移植ができなくても、新たな薬の登場で、治療オプションは広がってきている。
移植の年齢が上がり、病気と付き合う時代に
監修●竹迫直樹 独立行政法人国立病院機構 災害医療センター血液内科部長
取材・文●町口 充
多発性骨髄腫(MM)の治療戦略が大きく変わりつつある。これまで造血幹細胞移植は65歳以下の患者さんが適応とされてきたが、条件が整えば70歳でも移植を行う例が増えてきた。また、新規薬剤の登場で生存期間のさらなる延長が可能となり、薬を上手に使うことで病気と共存できる時代になってきた。
ペプチドワクチン療法 多方面からの研究と様々な臨床試験が進行中
監修●中面哲也 国立がん研究センター先端医療開発センター免疫療法開発分野長
取材・文●伊波達也
がん治療では、外科療法、化学療法、放射線療法に続く第4の治療法として期待されている「がん免疫療法」だが、まだ標準治療とはなっていないのが現状だ。がん抗原の発見により、1990年代以降、副作用なくがん細胞だけをやっつける〝特異的免疫療法〟の時代となり、がんワクチン療法、抗体療法などの免疫療法の研究開発が盛んに行われてきた。
その1つ、がん細胞だけに現れるがん抗原ペプチドを体外から注入し、ペプチドを目印に、細胞傷害性T細胞(CTL)にがん細胞を攻撃させるペプチドワクチン療法。延命効果や再発予防効果など、がん患者さんの期待は大きい。ペプチドワクチン療法の現状と今後の取り組みについて迫った。
がん免疫療法の新しい動向 ペプチドワクチンを用いた臨床試験
監修●笹田哲朗 神奈川県立がんセンター臨床研究所がんワクチンセンター長/がん免疫療法研究開発学部部長
取材・文●柄川明彦
従来のがんワクチン療法で使われていたのは、ほとんどが遺伝子変異のない自己抗原だった。そのため免疫原性が低く、十分な治療効果が得られなかったと考えられている。そこで期待されるのが、遺伝子変異由来のがん抗原だ。肺がん治療に使われるEGFR-TKI(上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬)に耐性となった患者さんの6割に、ある遺伝子変異が起きている。これを抗原としたワクチン療法の研究が進行中だという。
樹状細胞ワクチン療法 同治療を受けたい場合には、手術前に要相談
監修●小寺由人 東京女子医科大学消化器病センター外科医師
取材・文●伊波達也
肝がんには大きく分けて、肝細胞がんと肝内胆管がんがあるが、両者ともに再発しやすく、たちの悪いがんと言えるだろう。この肝がんの再発予防を目的として、自己のがん組織を利用した樹状細胞ワクチン療法が効果を示しているという。