• rate
  • rate
  • rate

最新治療と新薬の動向

悪性リンパ腫は病型によって化学療法や経過観察が選択肢に

監修●塚崎邦弘 国立がん研究センター東病院血液腫瘍科長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2015年6月
更新:2015年8月

  

「悪性リンパ腫は種類が多いので、病型に合った適切な治療が必要です」と話す塚崎邦弘さん

悪性リンパ腫には多くの病型があり、様々な臓器に生じ、それぞれ治療法も異なる。ここでは日本人に多いびまん性大細胞型B細胞性リンパ腫、濾胞性リンパ腫、マルト(MALT)リンパ腫の3つのB細胞性リンパ腫を取り上げ、新薬も交えて、最新治療情報をリポートする。

分類と病期、全身状態で治療法を判断

図1 悪性リンパ腫の*病期(Ann Arbor分類)

図2 悪性リンパ腫の病型

悪性リンパ腫という名称は、リンパ系組織のがんを大きくまとめて指すもので、同じ悪性リンパ腫といっても、個々に治療や予後は大きく変わってくる。2008年に改訂されたWHO(国際保健機関)の分類では、約40種類の病型がリストアップされた。患者さんは、自分にとって最適な治療を選択することが重要となる。国立がん研究センター東病院血液腫瘍科長の塚崎邦弘さんは、「悪性リンパ腫は質と量を見ることが大切です。質はWHO分類。それに対して量はステージです。さらにもう1つ、患者さんの年齢や全身状態(PS)なども大切な要素となります」という(図1)。

質の部分では、悪性リンパ腫は、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫の2つに分けられる。ホジキンリンパ腫は日本では10%ほどで、ほとんどが非ホジキンリンパ腫。さらに、細かく病理学的に分類されるが、その際には、細胞系質的特徴だけではなく、染色体・遺伝子情報などをもとに行われる。分類は腫瘍細胞の悪性度や予後を推定し、治療法を選択するための重要な段階になる。

質によって進行速度は大きく異なり、進行のスピードが速いタイプを高悪性度、遅いタイプを低悪性度に分ける。

「患者さんの全身状態はもともとの要素に加え、腫瘍によって生じる発熱や体重減少、寝汗などで悪くなります。質と量、病気に起因する患者さんの症状も見極めて治療をすることが大事になります」

ここからは、多種にわたる悪性リンパ腫から、患者さんの数の多いB細胞性リンパ腫の中の病型の治療を解説していく(図2)。

病期は、病変部の位置によってステージⅠ~Ⅳに分け、B症状がなければA、あればBとする

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫

初回治療はR-CHOP療法

びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)は、非ホジキンリンパ腫の中で最も多いタイプ。造血器腫瘍診療ガイドライン(2013年版)では、R-CHOP療法(リツキサン+エンドキサン+アドリアシン+オンコビン+プレドニン)が推奨されている。塚崎さんは同ガイドラインの作成にも関与している。

R-CHOPの登場は難産の末だった。「CHOP(エンドキサン+アドリアシン+オンコビン+プレドニン)療法が1970年代に米国で開発されてから30年、さらに効果的な治療を探る研究が続けられてきました。CHOPの4種類とは別の抗がん薬を入れた治療法の開発が試みられたのですが、第Ⅱ相試験では有望なものがいくつかあったものの、第Ⅲ相試験では治療成績に差が出ませんでした。効果に差がない上に、抗がん薬を追加することで毒性が出てくるわけです」

効果に差がなかったのは、CHOPの4薬の量を減らさなければならなかったからだ。そこに登場したのが、B細胞の表面にあるCD20タンパクに対する抗体医薬のリツキサン。これを加えると予後が改善されることが証明され、R-CHOP療法となった(図3)。

図3 R(リツキサン)をCHOP療法に併用すると びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫の予後は改善する

「リツキサンは画期的な薬で、脱毛などの副作用がなく患者さんに優しいなどの利点もありますが、素晴らしいのは4薬をそのままに、プラスアルファで上乗せすることができることです」

ガイドラインでは、限局期の場合R-CHOPを3コース行ったあと放射線治療をする方法と、R-CHOPを6~8コース行う方法のどちらも標準治療になっているので、患者さんの状態に合わせて選ぶ。進行期はR-CHOPを6~8コース行うのが標準治療となっている。

リツキサン=一般名リツキシマブ エンドキサン=一般名シクロホスファミド アドリアシン=一般名ドキソルビシン オンコビン=一般名ビンクリスチン プレドニン=一般名プレドニゾロン

再発後に大量化学療法で治癒する症例も

R-CHOP 療法を行うと、過半数が治癒する。塚崎さんによると、予後不良因子のある人で半数以上、予後不良因子を持たない人は8割以上治っているという。

また、副作用については、好中球を主体とした白血球減少がほぼ100%の患者さんに起こる。その中で10%強が発熱を起こしてしまうが、これに対しては、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)の投与で軽減できることがわかっている。

初回治療で寛解に至らなかった場合と、寛解になったが再発した場合には、サルベージ治療(救援化学療法)が行われる。サルベージ治療は、CHOPとは異なる薬剤を組み合わせる。

「65歳以下で、強い薬が使えるのであれば、R-CHOPよりも少し強い薬になります。R-CHOP後に再発したにも関わらず、65歳以下で、サルベージ治療で感受性のあった患者さんは、自家末梢血幹細胞移植を行うことによって治癒することも可能です」

新薬の動きもある。抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を高めたタイプII抗CD20抗体Gazyva(ガジーバ)が2013年に米国食品医薬品局(FDA)により慢性リンパ性白血病(CLL)に対して承認された。この新薬がB細胞性リンパ腫にも有用ではと期待されている。

「日本でも開発、臨床研究が進んでいます。効果が証明されれば、リツキサンがGazyvaに替わることもあり得ます」

この他、レブラミドのような免疫調整薬、がん細胞のシグナル伝達を阻害するブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬など、まったく違った新しいタイプの分子標的薬も複数で開発中だ。

Gazyva(ガジーバ)=一般名obinutuzumab(オビヌツズマブ) レブラミド=一般名レナリドミド

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!