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移植の年齢が上がり、病気と付き合う時代に

新薬が次々に登場し、多発性骨髄腫の治療が変わる

監修●竹迫直樹 独立行政法人国立病院機構 災害医療センター血液内科部長
取材・文●町口 充
発行:2015年6月
更新:2015年8月

  

「慢性疾患としてQOLに配慮
した治療が大切です」と話す
竹迫直樹さん

多発性骨髄腫(MM)の治療戦略が大きく変わりつつある。これまで造血幹細胞移植は65歳以下の患者さんが適応とされてきたが、条件が整えば70歳でも移植を行う例が増えてきた。また、新規薬剤の登場で生存期間のさらなる延長が可能となり、薬を上手に使うことで病気と共存できる時代になってきた。

治癒を目指すなら造血幹細胞移植だが…

多発性骨髄腫は骨髄の中にある形質細胞と呼ばれる細胞ががん化し増殖することで起こる血液のがん。形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生する細胞だが、これががん化するとMタンパクと呼ばれる異常な抗体が産生され、正常な細胞は減少して免疫力は低下し、骨の痛みや骨折、貧血、腎機能の低下などを招いてしまう。骨髄は全身の骨の中にあり、そこが侵されるので「多発性」となる。

加齢との関係が深いのがこの病気の特徴の1つだ。40歳未満での発症は少なく、加齢に伴い発症数が増える。このため高齢化の進展で患者数は増加傾向にある。

治療の選択肢としては、化学療法と自家造血幹細胞移植とがある。化学療法は、完全寛解(見かけ上は病気が消えた状態)は得られても治癒は困難とされる。これに対して、より生存期間の延長が期待でき、治癒の可能性もあるのが自家造血幹細胞移植。これは、がんの原因となる骨髄腫細胞を大量化学療法で死滅させたあと、あらかじめ採取しておいた自分の造血幹細胞(血液を作る細胞)を戻すことによって正常な造血機能を回復させる治療のことだ(図1)。

図1 多発性骨髄腫の治療

ただし、自家造血幹細胞移植を行うには、体力があり、臓器合併症がない場合という条件がつく。このため通常は65歳以下で、なおかつ全身状態(PS)が良好な人が対象だ。多発性骨髄腫は高齢者に多い病気であるため、実際には多くの患者さんが移植の適応とならず、通常量の化学療法を行うしかないという現実がある。

65歳を超えても移植の可能性!

しかし、独立行政法人国立病院機構・災害医療センター(東京・立川市)血液内科部長の竹迫直樹さんによると、「最近は、移植の対象が必ずしも年齢で縛られなくなっています」と次のように語る。

「高齢者といっても様々で、60代でも体の弱い人がいる一方で、70代、80代でも60代と同じように元気に生活している人もいます。実際に欧米では70歳前後まで移植が行われるようになっているし、条件が整えば75歳前後でも移植を行う例が出ています」

日本でも、66歳以上で移植を行う例が増えており、災害医療センターでは、全身状態が良好な患者さんであれば、70歳までなら移植を行っているという。

同センターでは現在、65歳以上70歳以下の多発性骨髄腫の患者さんで全身状態が良好な人を対象に、ベルケイド併用自家末梢血幹細胞移植(末梢血に含まれる造血幹細胞を用いる移植)の臨床研究を行っており、エビデンス(科学的根拠)が得られれば広く普及していきたいとしている。

新薬ポマリストが使えるように

全身状態が悪く移植不適応とされる人は化学療法で治療する。現在使える抗がん薬は、ベルケイド、サレド、レブラミドの3薬だが、ここでも変化が起きている。

現在、1次治療はベルケイドとアルケランとプレドニンによるVMP療法が主流。VMP療法が効かなくなった患者さんに対しては、比較的副作用が少ないレブラミドと、ステロイド薬のデキサメタゾンを併用するRd療法が行われている。

これに加えて、ベルケイドやレブラミドが効かなった再発・難治性の患者さんに有効な新規薬剤として今年(2015年)3月、日本で承認されたのがポマリストだ(図2、4月現在、薬価未収載)。

図2 ポマリストの効く仕組み
表3 ポマリストの効果

「ポマリストは、サレドやレブラミドと同系列の免疫調節薬ですが、骨髄腫細胞をやっつける効果がサレドと比べると約1,000倍、免疫調整力もやはり1,000倍強く、炎症を抑える働きも約500倍強いことがわかっています。なおかつ、この薬は経口薬なので、入院せずに自宅で治療できるというメリットもあります」

ベルケイドやレブラミドが効きにくくなった人に効果がある点も大きな意味を持つ(表3)。

「ベルケイドとレブラミドの治療効果を最大限に得たあとでこの薬が使えます。ベルケイドを使ったVMP療法で生存期間は延びており、これにレブラミドをプラスして高齢の患者さんでも約45カ月、さらにほかの新しい薬を足せば5年以上の生存期間の延長が得られるようになります。これにポマリストが加わり、あと1年プラスできると、80歳の方がさらに6年、7年と元気でいられる可能性があるのです」

ベルケイド=一般名ボルテゾミブ サレド=一般名サリドマイド レブラミド=一般名レナリドミド アルケラン=一般名メルファラン プレドニン=一般名プレドニゾロン デキサメタゾン=副腎皮質ホルモン製剤(デカドロンなど) ポマリスト=一般名ポマリドミド

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