色素沈着・乳房の硬化のケアは
乳がん患者です。乳房温存手術を行い、今後は放射線治療を行う予定です。放射線治療の副作用では色素沈着や残った乳房の硬化があると聞き、不安に思っています。これらの副作用を予防するケアなどはないのでしょうか。また、症状が現れたとき、どのように対処すればよいのでしょうか。
(埼玉県 女性 45歳)
A 色素沈着は1~2年、乳房硬化は3~4年で改善
放射線治療では、皮膚にも放射線が当たるためにやけどのような炎症やかゆみなどの急性期の症状と、ご相談者が心配されている色素沈着や乳房が硬くなるなどの晩期障害が起こることがあります。
炎症などの急性期の症状は、治療終了後3~4日でピークに達し、1カ月程度で自然に治まります。ひどい場合はステロイド薬などの外用薬を使って対処することもあります。
晩期障害の色素沈着や乾燥、乳房の硬化も、多くの患者さんに起こりますが、色素沈着はだいたい1~2年で、乳房の硬化も3~4年経てばほとんど症状はみられなくなります。
当科での調査では、治療後1年で色素沈着がある患者さんは6割ほどでしたが、2年目以降には症状のある患者さんはどんどん減っています。
それでも色素沈着を気にされる方に、皮膚科で肝斑などのシミ治療に使用されるハイドロキノンという薬剤が処方される場合もあるようです。
ハイドロキノンはシミの元となるメラニン色素の還元、またメラニン色素にかかわるチロシナーゼの活性抑制の効果があるとされ、効果がある事例もときに経験しています。処方については、皮膚科医に相談してみてください。
乳房の硬化の症状に関しては、乳房全体が硬化するほか、がんがあった周辺を狙って放射線を追加で照射することがあり、その部分がとくに硬くなる場合があります。
当科でおよそ950人の方に硬度計を用いて調査したところ、治療終了から半年後で最も硬くなり、徐々に改善していき、4年後にはほとんどの患者さんが元の状態に戻っていました。
このように、色素沈着、乳房硬化の症状は、治療後から少し時間はかかってしまいますが、いずれ元の状態に戻ります。発汗の働きが落ちるための乾燥も、回復するものの完全でないことも多いのですが、日常生活には全く支障ありません。
これらの症状を予防する方法というのはとくにないのですが、清潔を保ち、保湿を心がけた毎日のスキンケアが非常に重要になってきます。
放射線治療中は、治療に必要な印が消えないように注意しつつ洗いましょう。石鹸はなるべく刺激の少ないものを選び、ぬるま湯を使って優しく丁寧に洗うとよいでしょう。
放射線治療終了から1カ月ほどすると皮膚炎は落ち着き、乾燥が始まるので保湿剤を使用してケアをするようにします。
乳房の硬化には皮膚の保護効果の高い軟膏を使います。乳房の皮膚の弾力が戻り、乳房が柔らかくなってきたら、軟膏からローションに代えるとよいでしょう。
保湿剤や軟膏については、放射線治療の担当医に相談して、皮膚炎の状態などを考慮しながら処方してもらうようにしてください。