ゾラデックスを併用することで再発率を低下することができるか
2022年7月、浸潤性乳管がんと診断。8月、右BD領域の乳がんの部分切除とセンチネルリンパ生検を受け、病理検査の結果は腫瘍径1.2㎝、リンパ節転移陰性、ホルモン受容体80%、PgR100%、HER2は+1で陰性、グレード3、Ki67が30%、断端陰性。グレードとKiの数値が気になるとのことで、抗がん薬治療をしてもいいかとのお話がありました。
そこで、オンコタイプDX検査を受けて判断することになりましたが、結果を待っている間にタモキシフェン服用と放射線治療が開始されました。放射線治療では、断端は陰性であるものの1カ所0.9㎜の近接部分があったのと、年齢のこともあり、25回の照射に加え、ブースト照射も行うことに。9月からタモキシフェン服用開始。10月にオンコタイプDXの検査結果が11で、抗がん薬は不要となり、タモキシフェンに加えゾラデックスの皮下注射が開始されました。
そこでご相談ですが、ゾラデックスは35歳以下で効果があると某サイトで読みましたが、39歳の私にも効果が見込めるのでしょうか。主治医からは通院している病院では40歳前半までは薦めており、私はまだ若いので併用したほうがいいと言われています。再発率を少しでも下げられるなら続けたいのですが、無駄な治療であれば受けたくないと考えています。タモキシフェンにゾラデックスを併用することで、数%でも再発率を下げる効果は見込めると思われますか。医師の間でどうような認識になっているのか、お教え願えれば幸いです。
(39歳 女性 北海道)
A 再発リスクを下げたいなら併用を薦める
乳腺外科医長の上野貴史さん
これは補助療法として「タモキシフェンの内服だけにするか、ゾラデックス(一般名ゴセレリン)を加えたほうがいいか」というご質問ですが、加えたほうが乳がんの再発率も低く、また全生存率も高いことが2018年に報告された大規模臨床試験(SOFT試験)で証明されています。
最初に発表されたのが2015年で、そのときには無病生存率は高リスクの患者さんでは下がっていたのですが、全体では有意差は認められませんでした。その結果を受け、2016年に偽閉経療法併用についてのASCO(米国臨床腫瘍学会)ガイドラインが発表され、化学療法の併用を必要とするような高リスクの患者さんは加えたほうがいいが、低リスクの患者さんは加える必要はないとされました。
ただ2018年に3年経過後のSOFT試験の結果が発表され、無病生存率も全生存率も併用したほうが有意に上がっていました。8年生存率はタモキシフェン単体の場合、91.5%、併用した場合は93.3%、無病生存率はタモキシフェン単体の場合が78.9%で、併用した場合83.2%で有意差が認められています。
質問者の場合、オンコタイプDXから言えばローリスクで、化学療法の併用も不要とされたことから、ASCOのガイドラインでは単剤でいいということになります。ただ、このときはまだ2018年のSOFT試験の結果は出ていませんでした。ガイドラインはその後改訂されておらず、したがって再発のリスクを少しでも下げたいと思うのなら併用療法を行ってもよいと思われます。閉経前であれば、35歳以下でなくても有効です。ただし更年期症状などの副作用が増加する可能性があります。