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肝っ玉弁護士 がんのトラブル解決します 49
誤診で訴えられないか?
Q 前立腺肥大と診断されていて、定期検査をしていましたが、7月になり、前立腺がんと診断。ずっと検査していたのに納得できません。医師が謝ってくれさえしたら、そこの病院で治療を受けようと思ったのですが、他の病院に行けという態度で、私の気持ちが収まりません。その医師を訴えたいと思うようなりました。家族は大きな総合病院はそこしかないのだから、訴えるのは止めてくれと言います。弁護士さんのご意見をお聞かせください。
(71歳 男性 大阪府)
A 納得できないなら病院に診療録の開示を
「定期的に検査をしていたのに今年の7月になって前立腺がんと言われた」ということですが、あなたのご立腹の理由がよくわかりません。検査とは、どういう検査をしておられたのでしょうか。
一般的には、まず腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の血中濃度を調べ、その値が一定限度を超えると、前立腺に直接針を刺して組織をとり、がん細胞があるかどうか、又そのがんがどのようながんか(限局がんか進行がんか)、生検をして確定診断を下し、治療方針を決定するようですが、あなたの場合はどういう経緯でがんが発見されたのでしょうか。
おそらく定期的に検査をしていたというのは、定期的にPSAの値をチェックしてきたということではないでしょうか。その値が高まってきたので今回生検をしたらがん細胞が見つかったということではないかと推測します。そうだとしたら<定期的に検査をしてきたのに>ではなく、<定期的に検査をしてきたからこそ>早期発見ができでたのではないかと思います。
あなたのお気持ちの中には「前立腺肥大でずっと治療を続けてきたのに」という思いがあるかもしれません。でも前立腺肥大と前立腺がんとは違う病気です。前立腺肥大の治療をしていれば前立腺がんにはならない、というものではありません。
ただ、あなたのお気持ちの中に「ずっと検査をしてきたのに、なぜもっと早くがんを発見できなかったのか」という思いがあるなら、病院にカルテを含む診療録の開示を請求してみて下さい。病院側は必ず開示してくれます。そして、それを誰か他の医師に見てもらうと良いでしょう。もし適当な人がいないのなら下記のところへ連絡をとってみてください。
●医療事故研究所 電話03-5510-3286(火、木、金曜日の午後1時~3時まで受付)
そして、たとえば、ずっと前に検査した時点でPSAの数値が異常を示していて、その時点で生検をすべきであったというようなことがわかってきたなら医師の過失を問うことができるかもしれません。
ただし、そうであっても今すぐ訴訟提起をしたり、訴訟準備をするよりも、今はご家族の言うとおり治療に専念なさったほうがよくはないでしょうか。
何よりも気がかりなのは、もしもがんが悪性の進行がんだったりすると、あなたが訴訟準備をしている間に病巣が拡がって骨に転移するなどということが起きかねない、ということです。どうぞここは治療第一、冷静に対処なさってください。