大腸がんのステージⅣ がんとの付き合いはもう9年になります 直腸がんの肺転移、肝転移になりながらも、ニュースの職人であり続けるジャーナリスト鳥越俊太郎さん(74歳)

取材・文●吉田健城
撮影●向井 渉
発行:2014年12月
更新:2018年3月

  

とりごえ しゅんたろう
1940年福岡県生まれ。京都大学卒業後、1965年毎日新聞社入社。1988年「サンデー毎日」編集長を経て、1989年「ザ・スクープ」(テレビ朝日)でキャスターに。2001年「桶川女子大生ストーカー事件」で日本記者クラブ賞受賞。"ニュースの職人"として様々な番組のキャスターやコメンテーターを務める傍ら、がんに関する講演活動も行っている

2005年、直腸がんが見つかった鳥越俊太郎さん。その後も肺や肝臓への転移が見つかり、これまで4度の手術を受けている。

実は鳥越さんが本誌に登場して頂くのはこれが2度目。2009年1月号で話をうかがったが、「その後の鳥越さんを知りたい!」という読者の強い要望に応え、今回は直腸がん手術後のがんとの向き合い方を、ご本人のお話しを交えながら辿っていきたい。

2005年に直腸がんで手術

鳥越俊太郎さんが、大腸の内視鏡検査で上部直腸にがんの病巣があることが判明したのは2005年9月のことである。大きさは3㎝大。がんは漿膜の外に顔を出していたためステージⅡだった。

そのときを振り返って、鳥越さんはこう語る。

「検査する前から血便が出ていたので、がんではないかと、ある程度は予想していました。だから内視鏡検査でわかったときは、『ああ、やっぱり』と思いました。先生に『どうしたらいいですか?』と聞いたら、『手術で切ればいいんですよ』と、あっさり言われ、それで納得しちゃったんです。お陰で、余計なことを考えずに済みました」

翌月、虎の門病院に入院した鳥越さんは、腹腔鏡下手術で腸管を約20㎝摘出。周辺のリンパ節も3群まで郭清した。

その後2週間ほどで退院の運びとなり仕事に復帰。ただそれも束の間、退院の3日目には激しい嘔吐に襲われ、腸閉塞の一歩手前と診断され、9日間に及ぶ再入院を余儀なくされた。

肺転移でステージⅣへ

しかし、がんとの〝付き合い〟はこれですんなりと終わるわけではなかった。

大腸がんの手術から1年3カ月が経過した2007年1月、鳥越さんは、CT検査のあと、医師から左肺の上葉に2つの陰影があり、直腸がんの肺転移である可能性が高いことを知らされた。

肺の腫瘍はCT検査だけでは良性・悪性の確実な判断ができず、最終的には病理検査の判断になる。

しかし医師からは「恐らく良性ではなく悪性のがんだろう」との見立てで、手術を勧められた。鳥越さんは医師の勧めに従って、同月15日に胸腔鏡下手術で2つの腫瘍を摘出。採取された組織は直ちに病理検査に回された。

結果は2つとも悪性と判定、やはり直腸がんの転移だった。これに伴い、直腸がんのステージはⅡからⅣに変わった。

肺の次に見つかったのは肝転移

肝転移の兆候が見られるようになったのは、翌2008年のことである。腹部エコー検査の結果、肝臓の一部に石灰化した部分が見られるようになったのである。

しかし、すぐに直腸がんの転移かどうかの判断はつきかねた。なぜなら、結核などの既往から石灰化が見られるケースはよくあるからだ。そこで、年末にPET-CT検査を受けて、転移の有無を判断することになった。

翌2009年の年明け早々に出た結果は、やはり「転移」だった。

この結果を鳥越さんはどう受け止めたのだろう?

「ショックを受けるようなことは無かったです。直腸がんをやったとき、肺と肝臓に転移しやすいということは聞いていたので、覚悟していたというほどではないけれど、漠然と、肺にきたんだから次は肝臓にくるかもしれないという思いはありました」

手術を受けることになった鳥越さんは医師から、今回は、腹腔鏡を使えないので、開腹手術になることを告げられた。それも、みぞおちの辺りから1番下の肋骨に沿って背中のほうまで、かなり長く切開することになるという。

それに対する不安は無かったのだろうか?

「摘出手術を受けるのは、これが4度目ですから、今度は開腹かぁと、漠然と思った程度で、とくに不安は無かったです」

開腹手術で38㎝切開

2月8日に虎の門病院に入院した鳥越さんは、10日に手術を受けることになった。手術前日には医師から手術に関する説明があり、以下のことを伝えられた。

・転移は、おそらく2カ所あること

・病巣は肝臓の裏側の胆嚢に近いところにあること

・切除する肝臓が150gくらいになる見込みであること

・病巣が胆嚢に近いところにあるため、おそらく胆嚢も全摘すること

・手術は、まずエコー(超音波)をあてながら、どこにがんがあるかを探し出し、そこにマイクロウェーブ(電磁波)の針を突き刺しながら肝臓の断面を焼き、切除していく方法で行うこと

・手術時間は3時間半から4時間を予定していること

翌日行われた手術は、基本的にこの説明通りに行われたが、相違点もいくつかあった。

「開けてみると転移と見られる腫瘍は1カ所だけだったので、切除した肝臓は70gでした。それと、胆嚢も切除しないで済みました」

手術は、みぞおちのところから背中まで38㎝切開して行われたが、術後の痛みはどうだったのだろう?

「傷口が傷んだという記憶はあまり無いんです。集中治療室にいるときも、病室に戻ったあとも、硬膜外麻酔の持続注入装置をつけて、麻酔が絶えず背中から入るようになっていましたから」

病理検査の結果は退院の2日前に出たが、それには「高−中分化型の腺がん」とあり、直腸がんのときに採取した標本と類似していることから、今回切除されたがんは、直腸がんの転移と見るのが妥当という病理医の所見が記されていた。

術後の回復はすこぶる順調で、9日目には見舞いに来た番組共演者たちと、病院の近くのホテルでかつ丼を食べられるまでに回復。その2日後に退院の運びとなり、翌週にはテレビの仕事に復帰した。

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