早期との診断だが、円錐切除だけで十分か
集団検診の結果から、子宮頸がんと診断されました。がんの中でも早期である上皮内がんとのことで円錐切除をすれば大丈夫との方針を示されましたが、知り合った患者仲間に聞くと、円錐切除では取り切れずに結局1年後に全摘せざるを得なくなったと言います。このようなケースは珍しいのでしょうか。もう子供もいるので最初から全摘したほうがよいか、とも思って迷っています。
(32歳 女性 宮城県)
A 早まって全摘することはない 温存手術が主流
織田克利さん
円錐切除術は、病変部を円錐状(とんがり帽子のような形状)に切り取るもので、目的は病変の広さや程度を正確に知る診断的な面と悪い部分を取り除く治療的な面のの両方の場合が多いです。適応となるのは、上皮内がんとがんの手前である高度異形成です。浸潤が微小ながんも円錐切除の対象になります。病期でいうと、ⅠA期までで、円錐切除によりⅠb期と診断されることも稀にあります。
一般的には、上皮内がんで円錐切除によって取り切れていれば、再発率は数%です。今回、たまたま出会った患者仲間さんの経験談を基に、全摘したほうがいいと考えるのはやや早計であり、その方特有の状態があったのかもしれません。同じ上皮内がんでも腺がんであった場合や手術で取り切れなかった場合等、全摘が選択されることはもちろんありますが、個々の病気の状態で判断されます。
通常、上皮内がんで円錐切除で取り切れた場合、全摘と比べて治療成績が劣るわけではありません。その場合全摘の必要はないことになります。
現代の主流は、より低侵襲な(体の負担が軽い)治療です。必要がないところまで、あえて切除することはお勧めできません。東大病院では、病変の広がりを術前に把握した上で、子宮頸部の正常部分の組織を取り過ぎないように、病変部から必要十分な距離を置いた形で切除するようにデザインして施術しています。残せるものは残して、過剰な治療にならないようにしたほうがいいと思います。
まずは円錐切除を受けられて、その病理診断結果の説明をよくお聞きになったうえで、全摘の必要性があるか否かを担当医師と相談されるのがよいでしょう。
なお、現在では子宮頸がんのⅠb期であっても、腫瘍の大きさが小さい場合など、子宮を温存する手術(子宮頸部広汎摘出術)が選択されることも増えてきました。今後の妊娠・出産を強く希望される患者さんの場合、よりきめ細かな診断と治療方針の決定が求められるようになってきています。