Ⅳ(IV)期と診断。陽子線や重粒子線治療の効果は?
義父(74歳)が、食道がんでⅣ(IV)期と診断されました。遠隔転移はしていないということです。手術は難しく、化学放射線療法を行う予定ですが、陽子線治療や重粒子線治療という選択肢はあり得るのでしょうか。多少費用はかかっても構わないので、少しでも効果のある治療法を受けさせてあげたいと考えています。
(42歳 女性 秋田県)
A 手術を見据えた集学的治療を勧める
食道外科科長の大幸宏幸さん
まず、陽子線治療も重粒子線治療も保険適用ではなく、基本的に自費診療の範疇になることを押さえておく必要があります。
その上で、まずは重粒子線治療に関してですが、Ⅳ(IV)期に対して一般的には抗がん薬治療との併用は行っていないと考えられます。したがってこの方の場合、重粒子線治療は適応外となります。Ⅳ(IV)期では、基本的に放射線治療と抗がん薬治療を組み合わせて相加相乗効果を狙って治療することが必要になり、どちらか単独で治療することは考えられません。
一方、陽子線治療に関しては、抗がん薬治療と一緒に受けるということも考えられますが、エビデンスは一切ありません。重粒子線、陽子線、いずれの治療にしても可能性だけが広まっていて、エビデンスはないのが現状です。
ではどういう治療が考えられるかというと、現在Ⅳ(IV)期に対して保険適用となっているのは、化学放射線療法による治療です。ただし、治療成績は芳しくありません。こうした状況の中、より有効な治療法はないかということで、頸部リンパ節転移のあるⅣ(IV)期に対して当院では、術前補助化学療法として*DCF療法を行い、その後手術を行う治療法を実施しています。まだ症例数は少ないですが、良好な治療成績が出ています。
一方、他臓器浸潤しているⅣ(IV)期では、手術を見据えた抗がん薬治療を行っています。まずDCF療法を行い、他臓器浸潤が消失し、手術で切除可能と判断されれば手術を実施。DCF療法を行っても効果が見られなかった場合には、化学放射線療法を行うという治療方針で、1年生存率は約68%と良好な結果が出ています。
このようにⅣ(IV)期であっても、手術を見据えた治療を行うことで良好な治療成績が出始めています。したがって、お父様の場合も、手術を中心とした集学的治療を考慮して治療選択することをお勧めします。
*DCF療法=シスプラチン+5-FU+タキソテール