肺に小さな影。経過観察で良いのか
2012年に大腸がんのⅡ(II)期と診断され手術。14年に肝臓に転移が見つかり、化学療法(*FOLFOX+*アバスチン)を行い、肝臓への転移巣を切除しました。その後、経過観察を続けていたのですが、今年(2016年)7月にCT検査で肺に2カ所腫瘍のような影(2つとも4mm程度)が見つかりました。主治医の話によると、まだ2つとも手術するには小さすぎるため、経過観察するとのことです。このまま何もせずに経過観察でよいのでしょうか。
(57歳 男性 山口県)
A 経過観察しても良い。新たな病変がなければ手術可能
大矢雅敏さん
肺に小さな結節があるということですが、主治医の考えとしては、この結節が肺への転移かどうかを確定できていないため、現状では経過観察を行い、結節が大きくなった段階で切除する方針なのでしょう。
また、現時点で肺に確認されている影は2カ所ということですが、実は他にも肺転移があって、経過観察しているうちに新たな病変が出てくる可能性もあります。もしそうなった場合、直ちに手術して病変を切除したとしても、手術自体があまり意味をなさなくなってしまいます。
このように、「経過観察」という治療方針には、本当に転移かどうか、他の病変がないかどうか、といったことを確認する意味合いが含まれています。また、肺は肝臓と異なり、1度切除してしまうと再生せず、切除した分だけ肺の機能は低下してしまいます。こうした点を加味して、主治医は経過観察するという治療方針を示したのだと思います。
もちろん、現在確認されている結節が肺の表面にあって、胸腔鏡下手術(VATS)で簡単に切除できるケースであれば、手術して取り除いてしまうという考え方もあるでしょう。ただし場所によっては、広い範囲の肺の切除を必要とし、侵襲が大きくなるケースも少なくありません。
なお、この時点で化学療法を行うことはお勧めしません。病変が肺への転移かどうか確定しないうちに化学療法を行い、仮に病変が消失した場合、本当に転移であったかどうかが、判断できなくなってしまうからです。
経過観察を行い、今確認されている2カ所の結節が大きくなってきても、他に新たな病変がなければ切除できるケースがほとんどです。しかも、体への負担が軽減される胸腔鏡下手術で切除できる場合も少なくありません。したがって、経過観察して様子を見るというのは有力な治療方針だと考えます。
*FOLFOX=5-FU(一般名フルオロウラシル)+ロイコボリン(一般名ホリナートカルシウム)+エルプラット(一般名オキサリプラチン) *アバスチン=一般名ベバシズマブ