免疫チェックポイント阻害薬テセントリクを使用すべきか迷っている

回答者●久保田 馨
日本医科大学大学院医学研究科呼吸器内科学分野教授
発行:2020年2月
更新:2020年2月

  

77歳の夫のことでご相談です。昨年(2019年)5月に肺腺がん(非小細胞肺がん)と診断され、6月よりTS-1 OD 50㎎(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤錠)を2錠ずつ2週間、朝晩服用2週間休みを6クール続けました。昨年12月の検査で、当初3㎝位だった腫瘍が倍位に大きくなっていることがわかり、この薬は効かないと判断され中止となりました。

夫は肺気腫もありステージⅢBで、肺内のリンパ節の5カ所に転移があることも最初の検査で判明していました。生検ではEGFR遺伝子変異は陰性でしたが、右肺葉の底にできたがんでしたので、検体が少ししか採れず、他の検査はできませんでした。

現在、ウルティブロ(一般名インダカテロールマレイン)の吸引により肺気腫の症状はかなり良くなり、Ⅲ期からⅡ期に下がっていると言われています。

当初、車椅子だったのが、現在は介添なく日常生活を送れて、酸素も90台を保っています。

また、食欲も旺盛で体重も65㎏(162㎝)を維持しています。

週2回、デイケアに行き、軽いリハビリと入浴のサービスを受けています。眠っている時間も多いのですが、好きな本を読んだり、TVの洋画やスポーツ番組を楽しんでいます。

医師から次の治療方針として3つの提案がされていますが、どれを選択して良いのか迷っています。

①比較的弱い抗がん薬を使用
②免疫チェックポイント阻害薬テセントリク(一般名アテゾリズマブ)を使用
③何もしないで経過観察する

②のテセントリクを試したいと、本人、家族で相談して返事したところ、副作用の認識が甘いのではないかと再度検討するようパンフレットを渡され、その副作用の多さに少し怖くなっている状況です。

また、医師より「亡くなっている人もいるし、効果のある人は2割未満だ」と何回も聞かされ、調べてみるとまだ新しい薬で、田舎の病院では実績が少ないのかとも思われ、夫のような状況ではやってみるべきかどうか迷っています。

この薬の使用例がありましたらアドバイスをお願いいたします。

医師からは現在のような状態が半年も続くとは思わないで欲しいと言われています。

(75歳 女性 福井県)

現時点では、テセントリクを試してみるのが良い

日本医科大学大学院医学研究科
呼吸器内科学分野教授の久保田さん

患者さんは当初は車椅子だったとのこと、もともと肺気腫などのがん以外のご病気で体調がよろしくなかったのでしょう。

でも、お便りでは週2回、デイケアに行きリハビリをされ、日常生活も送れて食欲も旺盛ということですので、全身状態はそれほど悪くはなさそうです。

現時点では免疫チェックポイント阻害薬のテセントリクを試してみるのが良いと思います。

副作用の多さに使用することに躊躇しているとのことですが、パンフレットに書かれている副作用がすべて現れるわけではありません。副作用が出たとしても、適切に対処すればリスクを最小にできます。

この方の場合、肺気腫があるとのことですので、喫煙歴があるのでしょう。過去に喫煙歴がある方ほど免疫チェックポイント阻害薬の効果は出やすいという報告があります。

効果がある人は2割未満だと医師から言われているとのことですが、それは明らかに腫瘍が縮小した人の割合で、縮小しなくても今までの抗がん薬よりも生存期間が延びるというデータはいくつかあります。

QOL(生活の質)の改善と生存期間を延ばすという観点からトライする価値はあると思います。

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート12月 掲載記事更新!