再発したが手術や放射線療法は
昨年(2022年)1月に肺がんと診断され、左肺の下葉切除とリンパ節郭清を行いました。切除したがんは直径25㎜の非小細胞がんで、リンパ節への転移もありました。またEGFR遺伝子変異は陽性でした。術後、再発予防のためシスプラチンとビノレルビンによる補助化学療法を6月まで4サイクル行いました。2023年2月の検査で頸部リンパ節に腫脹が見つかり、PET-CT検査で頸部と左肺門部で再発が見つかりました。
3月から分子標的薬のジオトリフの内服を開始しました。現在は効果があるようですが、やがてジオトリフも効かなくなるのではと心配です。術後、再発した場合は手術や放射線療法などはできないのでしょうか。
(51歳 女性 東京都)
A 再発がないうちにタグリッソに変更するのも手
臨床腫瘍部門長/副所長の久保田さん
現在はジオトリフ(一般名アファチニブ)を服用なさっていて、効果がなくなってしまうことがご心配なのですね。このような薬剤は腫瘍が縮小する割合は高いのですが、残念ながらほとんどの方は薬の効果がなくなって、がんの再燃といった状況になってしまいます。治療の大切な目標は、元気に過ごせる期間を長くすることなのです。
ジオトリフはEGFRに対する第2世代の薬剤です。第1世代の薬剤とのランダム化(無作為化)比較試験でジオトリフの良好な効果が示されていますが、生存期間の明らかな延長効果は示されていません。
第3世代のタグリッソ(同オシメルチニブ)は第1世代との比較試験で生存期間の延長が示されています。ジオトリフが効かなくなった場合は、腫瘍の遺伝子変異の検査が必要になります。そこでEGFR T790Mという変異が認められた場合はタグリッソが使えます。最初にジオトリフを使って、再燃後にタグリッソを使うと、当初からタグリッソを使うより「元気に過ごせる期間」は長くなる可能性があります。しかし、T790Mが陽性になる確率は半分程度ですので、このままジオトリフを使い続けると、現在最も効果が高いと考えられるタグリッソが使えなくなる可能性もあるのです。
そこで、ジオトリフを6カ月程度使用して、再燃がない状態でタグリッソに変更することを考えてもいいかと思います。現在このような臨床試験が行われているところです。リンパ節転移があるEGFR陽性肺がんに対しては、EGFRに対する薬物療法が最も有効的です。
術後、再発した場合は通常手術の対象にはなりませんが、脳転移や骨転移などの場合は放射線治療が検討されます。