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患者会メンバーが承認取り消し問題に切実な声
私たちからイレッサを奪わないでください!!

文:沖原幸江
発行:2005年6月
更新:2013年4月

  
写真:沖原幸江さん 沖原幸江さん

おきはら ゆきえ
62年生まれ。
99年肺腺がん2A期で右下葉切除。
その後、患者・家族の心理社会的サポートを目指し大学に通い、05年卒業。
専攻:宗教学。現在は、がん患者に優しい旅行の企画・添乗を目指して、添乗員の修行中。
自立した患者同士で支え合う会(セルフヘルプグループ)「カイネ・ゾルゲン」メンバー


04年末に肺がん治療薬イレッサ(ゲフィチニブ)について、「欧米における大規模治験(ISEL)で延命効果に有意差がなく、欧米での認可申請取り下げ。日本では認可取り消しか?」というニュースが流れたことをご記憶の方は多いと思います。

親しい人にイレッサ服用(奏効)中の方がいない方は、このニュースを「あの死亡者をたくさん出した薬に延命効果がなかった!!」と受け取られたのではないでしょうか。しかし、私にとっては「友人たちから命綱が奪われる!!」と感じられるものでした。

1月にこの件に関する検討会が厚生労働省で開かれました。カイネ・ゾルゲンのメンバーが傍聴しましたが、厚生労働省、アストラゼネカ(製薬会社)と専門家による検討委員の話し合いに圧倒されて帰って来ました。3月中に検討会としての意見をまとめるということが決まり、私たちはイレッサを守るために何かをしなくては、という思いを持ちましたが、この患者不在の専門家集団を前にしてなす術はありませんでした。

しかし、その後に私が出演したNHKのイレッサに関する番組を観た方から「服用中の患者の生の声を意見書として提出してはどうか」という問いかけをいただき、「今できることを、私たちがしなければならない」という思いを強くしました。

副作用ばかり取りあげられ著効例には注目されない

写真:厚生労働省によるゲフィチニブ検討会の様子
写真:厚生労働省によるゲフィチニブ検討会の様子

厚生労働省によるゲフィチニブ検討会の様子。取材陣も多数押しかけ、世間の関心の高さが伺える

見書提出への参加者を募り、6名が実名で書くことになりました。彼女たちの体験に基づく意見書に、イレッサ登場の2000年以降の患者の動向、心情などを書いた私の意見書を添付し、2月28日に厚生労働省へ持参しました。担当の方に意見書を提出し、要望を申し述べました。

3月には、10、17、24日に検討会が開かれ、私たちの意見書は参考資料として配布されることになりました。検討会で配布される資料は、全傍聴者にも配布されるため、私以外の方の個人データは全てマスキングすることにしました。

参考資料は検討会冒頭で簡単な内容の説明がありますが、議事内で取り上げられることはありません。3回全て傍聴して感じたことは、厚生労働省、製薬会社、医師全てが、統計データの話に終始しているということでした。ISELの結果を検討する会議だったので、当然と言えば当然のことですが、では、患者の声はどこでどのように上げれば、聞いてもらえるのでしょうか。

イレッサを守りたいとする側からは、西日本胸部腫瘍臨床研究機構からも、1139名の署名入りの嘆願書も提出されました。しかし、私の知る限りでは、どちらもマスコミに取り上げられることはありませんでした。02年の副作用死報道が始まって以来、私が著効例の報道を目にしたのは1件だけでした。

患者にとっては自分に効くかどうかが重要

写真:イレッサ

ISELの統計データとして延命に「有意差が出なかった」ことは厳然たる事実です。しかし、それは「誰にも効かなかった」ということではありません。現在著効を示している私の友人たちは、イレッサがなければ私たちが出会う前に命を失くしていたであろう人たちばかりです。なぜ、これらの患者数が製薬会社から発表され報道されることがないのでしょうか。

製薬会社には全使用者の追跡調査の実施を、そして厚生労働省には、その指導を望みます。

検討会では「イレッサは東洋人の女性で非喫煙者には効く」とするデータの真偽について討論されていました。しかしながら、患者にとって重要なのは、統計データの条件に自分が当てはまるかどうかではなく、自分に効くかどうかなのです。

イレッサは耐性についても、はっきりとした見解が出ていません。いつ効かなくなるのか不安に思いながらも、今日も(現在のところ)効いていることに感謝している他に選択肢のない患者から、イレッサを取り上げないで欲しい……今回の意見書提出を通して、そんな思いを改めて強くすると同時に、患者自身が自分のために意見を言うことの重要さを痛感しました。今後も、こうした社会への働きかけを続けて行きたいと思います。

[イレッサをめぐる動き]
2002年7月 厚生労働省が世界に先駆けて承認、発売(承認申請は2002年1月25日)。
8月 保険適応となる。
10月 厚生労働省からイレッサについての緊急安全情報が出される。指示を受けアストラゼネカ社からイレッサによる間質性肺炎の緊急安全情報が出される(イレッサの副作用よるものと思われる死者13名)。
12月 厚労省が安全対策をまとめ、添付文書の改定をア社に指示。
指示を受け添付文書が改定(第4版)。
03年 2月 肺障害による副作用死、173人に。ア社が欧州で承認申請。
5月 イレッサの副作用被害者は616例と、厚生労働省が発表。
うち、246人が死亡。米国FDAが販売を承認。
04年 7月 「イレッサ薬害被害者の会」の京都の遺族が、製薬会社と国に対して損害賠償を求めて大阪地裁に訴状を提出。
12月 ア社が「延命効果なし」の試験結果発表。
それを受けFDAも「延命効果なし」との声明を発表。
05年 1月 ア社が欧州での承認取り下げ。厚労省がゲフィチニブ検討会を設置。
推定累積患者数86800人。死亡588例と発表される。
2月 薬害イレッサ・東京訴訟の第1回裁判が東京地方裁判所102号の大法廷で開かれる。
3月 第4回ゲフィチニブ検討会。日本肺癌学会より、イレッサ使用に関するガイドラインが出される。ア社の発表で、服用患者数の修正の報告。86000人の発表は計算ミスで本当の数字は42000人。


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