患者さんのライフスタイルに合わせた治療法が選択可能に
XELOX療法の登場で、大腸がん再発予防にもう1つ武器が増える!
松本繁巳さん
手術だけでは再発を防げないこともある大腸がん。そんな大腸がんの術後補助化学療法に、新たな武器として登場が期待されるのがXELOX療法だ。従来の治療法とどんな違いがあるのだろうか。
手術を受けても完治しないことがある
病期 | 定 義 | 5年生存率 |
---|---|---|
0期 | がんが粘膜にとどまるもの | 94.3% |
1期 | がんが腸壁にとどまるもの | 90.6% |
2期 | がんが腸壁を超えて外まで浸潤しているもの | 81.2% |
3a期 | リンパ節転移ががんの近い場所にあり、3 個以下 | 71.4% |
3b期 | リンパ節転移が4 個以上あるいは、がんから遠い場所にある | 56.0% |
4期 | 肝、肺、腹膜など遠隔臓器に転移があるもの | 13.2% |
大腸がんの治療は、他の臓器に転移していなければ、手術などでがんとその周囲の組織を取り除くことが基本だ。大腸がんの進行度は、図1のように分類されている。粘膜にとどまっている小さながんなら、内視鏡治療で取り除くことも可能だ。
内視鏡治療や手術は、大腸がんの完治が目的だが、実際は完治しない患者さんが少なくない。京都大学大学院医学研究科臨床腫瘍薬理学講座准教授の松本繁巳さんは、次のように話す。
「大腸がんの5年生存率は、病期が1期までは90パーセントを超えていますが、2期では81パーセント、3a期では71パーセント、3b期では56パーセントとなっています。3期になると、手術だけでは治らない人が少なくありません。これは、手術でがんを取り切れたと思っても、検査で見つからないほど小さな転移がすでに起きているためと考えられます」
そこで、こうした手術の限界を補うため、手術後に化学療法、いわゆる抗がん剤治療を追加することがある。これが術後補助化学療法である。では、どのような場合に術後補助化学療法が行われるのだろうか。
日本の『大腸癌治療ガイドライン』によれば、まず対象となるのは3期の患者さんである。2期に関しては、再発リスクの高い人が対象で、適切なインフォームド・コンセントのもとに行うことになっている。
「化学療法はある程度の副作用を伴うので、そのデメリット以上の恩恵が患者さんにあるかがポイントです。2期に関しては、たとえば、がんが腸壁の深くまで達していた場合や、がんの性質を示す組織型が良くない場合などが対象となります。また、患者さんの年齢が比較的若く、できることならより確実に再発を防ぎたいということで、実施することもあります」
従来の術後補助化学療法はFOLFOX療法が中心
術後補助化学療法の期間は6カ月間。再発を防ぐ効果は、多くの臨床試験によって証明されている。『大腸癌治療ガイドライン』は、術後補助化学療法として4つの治療法を推奨している。
5-FU(*)とロイコボリン(*)の点滴併用療法、UFT(*)とユーゼル(*)の内服併用療法、ゼローダ(*)の単剤療法、そして5-FUとロイコボリンとエルプラット(*)を併用するFOLFOX療法である。
「3期の患者さんなら、基本的には、私はまずFOLFOX療法を勧めます。海外で行われた5-FU+ロイコボリン療法とFOLFOX療法の比較試験で、FOLFOX療法のほうが有効であるというはっきりした結果が出ているからです」
UFT+ユーゼル療法やゼローダ単剤療法の効果は、5-FU+ロイコボリン療法と同じくらいとされ、有効性に関しては、FOLFOX療法が優れていると言われている。
FOLFOX療法では2週間ごとにエルプラットの点滴を受け、続けて5-FUを46時間持続静注(*)する。このため、入院せずに治療を受けるためには小型の携帯ポンプが必要で、患者さんは鎖骨部や上腕の皮下に、ポンプの取り付け口であるポートを埋め込む手術を受ける。ここにポンプを取り付け、薬をカテーテルから少しずつ静脈に送り込む。患者さんはポンプを付けて帰宅する。持続静注が終了したら、自宅でポートから針を抜く。このとき感染症などを防ぐためにポートの周辺部を消毒する。FOLFOX療法を行うには、これら一連の手技をマスターする必要がある。
*5-FU=一般名フルオロウラシル
*ロイコボリン=一般名ホリナートカルシウム
*UFT=一般名テガフール・ウラシル
*ユーゼル=一般名ホリナートカルシウム
*ゼローダ=一般名カペシタビン
*エルプラット=一般名オキサリプラチン
*持続静注=持続的に静脈内注射を行う
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