「ゴールドリボンウオーキング2007」が開催
広がれ! 小児がん経験者への支援の輪
ゴールドリボンのサポーターたち
現在、日本では年間約24000人が小児がんに罹っているといわれています。そして小児がんを克服した人たちは、治癒後もさまざまな問題を抱えています。
そんななか「小児がんネットワークMNプロジェクト」によるイベント開催を受けてがんの子供を守る会によるゴールドリボン基金が立ち上げられるなど、少しずつ支援の輪が広がってきました。その輪をより大きなものにしようという思いが「ゴールドリボンウオーキング2007」というイベントとして実を結んだのです。
この日は、受付が始まる朝9時になると、春の日差しが降り注ぐ噴水広場に、歩きやすい服装姿のスニーカーを履いた参加者が現れ始めました。
開会式が始まる10時には、受付会場と隣接している小音楽堂に、溢れんばかりの参加者が集いました。参加人数は1350人。当初、予定していた1000人を大幅に超え、中に入りきれなかった人たちは、舞台の背面から開会式を見ることになりました。
開会式では、がんの子供を守る会の副理事長であり、聖路加国際病院小児科部長の細谷亮太さんの挨拶がありました。
「日本にもゴールドリボン運動を! というアイディアは、小児がんを克服した1人の女の子とそのお友達が思いついたものです。その後、がんの子供を守る会が受皿となり、今日、特別協賛をしてくれているアフラック(アメリカンファミリー生命保険会社)さんをはじめ、たくさんの後援者を得て、ゴールドリボンウオーキング2007に結実したわけです。ぼくが医者になったころは(小児がんの子どもたちに)未来はありませんでした。そんな時代でも(病気と闘い抜いて)頑張った子どもたちはたくさんいます。今では小児がんは治る時代になりましたが、病気を克服した後にたいへんな思いをする人がたくさんいます。そんな小さな冒険者たちと、サポーターの皆さんの協力によって、今後、よりいい時代ができあがっていくだろうと思っています」
2つの組織が二人三脚で叶えた夢
時計の針が10時15分を回ったころ、この日のゲストであるマラソンランナーの谷川真理さんの見送りを受け、まず10キロコースへの参加者が街中に出て行き、次に5キロコースへの参加者がゲートを潜っていきました。
10キロコースは、公園をスタートして、反時計回りに、皇居前広場、皇居東御苑、上智大学、山王日枝神社、日比谷公会堂などを経て、ゴールに辿り着くものです。
一方、5キロコースも反時計回りに、皇居前広場、皇居東御苑、千鳥ヶ淵・千鳥ヶ淵公園、イギリス大使館、桜田門などを巡って公園に戻ってくるものです。
このウオーキングイベントを主催したがんの子供を守る会は、小児がんで子どもを亡くした親たちによって、小児がんの治癒率向上やその病気の子どもを持つ親への支援などを目的として、1968年10月に設立されました。同会では、経済的理由により適切な治療を受けられない患者への助成や専門医やソーシャルワーカーによる相談などを行っています。
同会の事務局長・後藤英司さんは、今回のイベントの趣旨を次のように説明します。
「今から20年前、小児がん患者のほとんどの方が亡くなっていましたが、現在は小児がんの子どもたちの約7割以上が治る時代になっています。しかし、治ったとはいえ闘病中の放射線治療や化学療法による晩期障害などに苦しんだり、就職・結婚などに対するいわれのない偏見があるのもまた事実です」
今回のイベントは、こうした小児がん経験者への理解を広く世間に認めてもらうことを目的としています。
「当会はアフラックさんをはじめ、いろいろな企業や団体から後援をいただき、小児がん経験者を支援するために、ゴールドリボンの推進活動を行っています。それで得た資金をもとに、小児がん経験者を支援していこうと考えているんです。この活動は2006年11月から始まりました」
「ゴールドリボン活動」の理念に賛同し、この活動を全面的にサポートしているアフラックは、がんの子供を守る会を通して、小児がん経験者への精神的支援、就学・就労への援助、QOL向上などに向けた取り組みを支援しています。
また、アフラックではがんの子供を守る会と連携し、2001年2月には東京・亀戸(江東区)に「アフラックペアレンツハウス」を建設しています。ペアレンツハウスとは、小児がんなどの難病を治療するために遠隔地の自宅を離れ、専門病院が集中する都内に滞在する子どもたちとその家族の経済的・精神的負担を軽減することを目的とした総合支援センターです。
現在、こうした「アフラックペアレンツハウス」は、亀戸の他、2004年12月には東京・浅草橋(台東区)に建設されました。さらに、2009年には3棟目の「アフラックペアレンツハウス」が大阪に建設される予定です。
小児がん経験者の思い
12時を過ぎたころから、参加者たちが日比谷公園噴水広場に戻ってきました。
ゴールした参加者からは、次のような声が聞かれました。
「小児がんを経験した方々の社会復帰のなんらかのお役に立てれば……。(完歩した)5キロは思ったより長かったですね。皇居の風景を家族といっしょに堪能しました。ゴールドリボン活動の輪がもっと広がっていけばいいですね」
「(アフラックの)社員です。風景がすごくきれいで楽しかったです。普段、なかなかこんなふうに歩く機会がなかったのですが、今日はのんびりと歩けたのがよかったと思います。都内に住んではいるのですが、この辺はめったに来る機会がないので……」
「子どもの同級生が脳腫瘍にかかっていて、そのお父さんがゴールドリボンを付けているのを見て、なんのマークかなと思っていたんです。そうしたら、たまたま新聞で今日のイベントを見つけて参加しました」
参加者全員がゴールすると、13時から小音楽堂において、谷川真理さんとウオーキングドクターのデューク更家さん、徳洲会・東京西徳洲会病院総長の橋都浩平さんの3人によるトークショーが始まりました。
しばらくすると、デュークさんがクロスさせた両手を高々と突き上げるお馴染みのポーズで、独自の理論に基づくウオーキング術を参加者に伝授してくれました。
その後、谷川さんとデュークさんが、がんに対する思いを語り、橋都さんが小児がんの特徴や仕組みを説明しました。そのとき、小児がん経験者の女性が舞台に上がり、自身の体験による思いを話してくれました。
「私たち小児がん経験者は、困難な壁にぶち当たるのですが、それらの原因は人それぞれで、病気の受け止め方だったり、病気による偏見やいじめ、病気による障害など、たくさんあるんです。それは自分たちの力だけでは乗り越えることはできないので、周りの人のサポートが必要になります。まずは、小児がんという病気を少しでも多くの方に知っていただくこと、(小児がんを経験した)多くの人が社会に出ていること、そして小児がんという病気は治る病気であることを理解していただくと、それだけでも私たちに対する強力なサポートになります」
トークショーが終わり、シンガー・ソングライターの坂田おさむさんによるミニコンサートが行われました。
そして、この日のイベントがすべて終了すると、参加者たちはそれぞれの家路に着き始めました。
がんの子供を守る会とアフラックの2つの思いが結実し、多くの協賛や参加者を得て行われたこの日の「ゴールドリボンウオーキング」。そのイベントでの思い出は、参加者1人ひとりの胸に刻まれ、ゴールドリボン活動はますます広がっていくことでしょう
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