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患者のためのがんの薬事典

UFT(一般名:テガフール・ウラシル)
注目の臨床成績。非小細胞肺がんの術後補助療法で、延命効果が認められた

監修:畠清彦 癌研有明病院化学療法科部長
文:水田吉彦
発行:2005年10月
更新:2019年7月

  
UFT

UFTは、5-FUという抗がん剤を改良した飲み薬(経口抗がん薬)です。その用途は大変に広く、頭頸部がん、肺がん、乳がん、胃がん、結腸・直腸がん、肝臓がん、胆管がん、胆のうがん、膀胱がん、前立腺がん、子宮頸がんの治療に使われています。最近の明るい話題として、非小細胞肺がんの手術後にUFTを投与すると、生存期間の延びることがASCO(米国臨床腫瘍学会)で発表されました。今回は、そのデータを中心に解説しましょう。

5-FU(一般名フルオロウラシル)という、歴史の長い優れた抗がん剤があります。この5-FUを体内に可能な限り長時間留めることで、抗がん作用をより良く発揮するよう改良されたのがUFTです。改良された点はふたつ、“プロドラック化”と“分解阻害薬の配合”です。

プロドラックとは、「投与された後、体内で徐々に有効成分へと変化する前駆物質」を意味します。

UFTの場合、主成分であるテガフールが、肝臓の酵素によって体内でゆっくりと有効成分の5-FUに変化します。こうすることで、直接5-FUを投与するよりも長時間、作用が持続するのです。さらにUFTでは、5-FUが体内で分解されるのを防ぐ薬剤(ウラシル)も配合されています。

こうした改良によって5-FU本来の効果が高められた薬剤、それがUFTなのです。飲み薬ですから職場や自宅などでも服薬でき、QOL(生活の質)を落とさずに治療できるのも利点です。

非小細胞肺がんの術後補助療法として注目される

2004年、世界最大規模のがん学会であるASCOにおいて、「UFTは、肺がんの術後補助療法に有効である」との注目すべき発表がありました。今回効果の認められた肺がんは、非小細胞肺がんという種類であり、日本における肺がん全体の約80パーセント以上を占めているものです。従来の非小細胞肺がん治療では、手術後に抗がん剤の投与を行っても再発予防効果が得られないとして、術後補助療法は一般的に行われていませんでした。術後補助療法とは、手術で取りきれない小さながん細胞を、手術後に投与する抗がん剤でやっつける治療法のことです。今までは効果がないとされていた“非小細胞肺がんの術後補助療法”ですが、従来の概念を覆して「UFTを手術後に投与すれば、再発が減って生存期間が延びる」と発表されたのです。

発表の内容を簡単に見てみましょう。本学会では、過去別々に行われた“術後補助UFT療法”の6つの臨床試験が再評価されました。これらの臨床試験で対象とされた患者数を合計すると、手術のみが1002例、手術後にUFTが投与された者が1001例でした。大半は、がんの大きさが3センチ未満で、転移のない症例でした。

■UFTを用いた術後補助療法(6つの臨床試験を統合)における生存率
UFTを用いた術後補助療法(6つの臨床試験を統合)における生存率

両者を比較したところ、「5年生存率が、手術のみでは77.2パーセントだったのに対し、手術後UFT投与では81.8パーセントに向上」、さらに「7年生存率が、手術のみでは69.5パーセントだったのに対し、手術後UFT投与では76.5パーセントに向上」することが判明しました。

肺がんの治療は、90年代に入って沢山の抗がん剤が使用可能となったにも関わらず、治療成績の向上は遅々として進みませんでした。ですから、この発表は非常に明るい話題として受け入れられ、日本国内でも手術後の補助療法にUFTを用いる医療機関や医師が増えたのです。

治療上、知っておくべきこと

UFTは、成長の早い細胞にダメージを与えるよう作られています。従って、がん細胞以外にも、胃腸の粘膜細胞や血液を作る骨髄細胞など成長の早い正常細胞へダメージを与えてしまう可能性があり注意を要します。

これに関連した副作用は、服用を始めてからおよそ2カ月の間に現れることが比較的多いようです。のどの痛み、発熱、出血、皮膚のあざ、1日4回以上の下痢、口内炎、疲労感、黄疸等に気づいた場合は、すみやかに担当医師に連絡をとってください。また、血液検査でないとわからない副作用もありますから、UFTを服用している間は定期的に、とくに副作用が現れやすい2カ月間は1カ月に1度以上の血液検査を受けましょう。副作用が出たときには、我慢せず担当医師に相談して、指示に従って下さい。たいていの場合、

服用をしばらく休んで副作用の軽減化を待ちます。その間に、がんが進行すると心配される方もいますが、薬を中断又は減量しないと体の状態がさらに悪化して、それが原因で治療を長期間中止することにもなりかねません。副作用が軽いうちに担当医師と相談し、体調が回復した後に治療を再開するほうが、長い目で見たときには治療効果があがることもあります。

また、一緒に使用すると、5-FUの血液中の濃度がとても高くなり、副作用が強く現れる薬がありますので、注意してください。絶対に一緒に飲んではいけない薬は、抗がん剤のTS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシル)です。もし、UFTをTS-1に変更する場合、またはその逆を行う場合には、最低7日間の休薬が必要です。

一緒に飲むときに注意する薬としては、てんかん治療に用いるアレビアチン錠や、脳梗塞の予防に用いる*ワーファリンなどがあります。UFTでの治療を受ける前には、使用している薬を担当医師に見せ、問題がないか確認してもらいましょう。

アレビアチン=一般名フェニトイン ワーファリン=一般名ワルファリンカリウム

■大切な注意事項
●現在、ほかの診療科や病院を受診している方
UFTの治療を受ける前に、他院で処方されている薬を担当医師に見せ、問題がないか確認してもらう。確認してもらうのはすべての薬です。
① 以前処方を受けた薬が残っている場合
② 薬が変更になった場合
③ 飲み薬だけでなく、貼り薬や坐薬など
④ 薬局・薬店で購入した薬など
●絶対に一緒に飲んではいけない薬
TS-1(フッ化ピリミジン系抗がん剤)
●一緒に飲むときに注意しなければならない薬や治療
① アレビアチン     ③ 他の抗がん剤     ② ワーファリン     ④ 放射線治療

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