• rate
  • rate
  • rate

患者のためのがんの薬事典

ナベルビン(一般名:ビノレルビン)
非小細胞肺がんに有効で、近く転移性乳がんにも認可の見込み

監修:畠清彦 癌研究会付属病院化学療法科部長
 文:平出浩
発行:2005年3月
更新:2014年2月

  

ナベルビンは非小細胞肺がんに有効な薬です。
細胞分裂を妨げることでがん細胞の増殖を抑える働きをします。
また転移性乳がんに対しても、ハーセプチンとの併用療法で高い効果が期待されています。

転移性乳がんの併用療法でも大きな効果が期待されている薬

ナベルビンは、肺がんの非小細胞がんに使われる抗がん剤です。

肺がんは大きく「小細胞がん」とそれ以外の「非小細胞がん」に分けられます。非小細胞がんは、さらに「腺がん」「扁平上皮がん」「大細胞がん」に分けられます。小細胞がんは肺がん全体の約15パーセント、腺がんなどの非小細胞がんは肺がん全体の約85パーセントを占めています。

小細胞がんと非小細胞がんの性質はかなり異なります。小細胞がんは進行が速く、転移の起こりやすいがんです。悪性度が高いといえますが、一方では、抗がん剤や放射線治療がよく効くがんでもあります。これに対し非小細胞がんは、小細胞がんに比べるとゆっくり進行しますが、抗がん剤や放射線治療の効きがあまりよくありません。

1990年代に、肺がんに有効といわれる新規抗がん剤が次々に登場しました。99年に発売が始まったナベルビンもその1つです。ナベルビンは天然に存在している植物を原料としてつくられる抗がん剤で、植物アルカロイドという薬品グループに属します。投与方法は、静脈への点滴注射です。細胞分裂を妨げることで、がん細胞の増殖を抑えます。

白金系抗がん剤と組み合わせて投与される

非小細胞がんは、進行度によって1~4期に分けられます(3期はさらに3a期と3b期に分かれる)。可能であれば、手術が行われますが、手術の適応は通常、1期と2期で、3a期はボーダーラインになります。

手術が適応にならない非小細胞がんには化学療法か、放射線と抗がん剤を併用する放射線化学療法が行われます。化学療法の抗がん剤は、最近では通常、2剤を併用します。

2剤のうち1剤は、ブリプラチン(もしくはランダ、一般名シスプラチン)やパラプラチン(一般名カルボプラチン)などの白金系抗がん剤が使われます。ブリプラチンはパラプラチンに比べて投与時間が短時間ですみ、患者さんの腎機能に適した濃度に調節できるので、効果が同じであれば後者を使うことが多くなっています。もう1剤は、ナベルビンなどの新規抗がん剤が使われます。ほかには、タキソール(一般名パクリタキセル)やタキソテール(一般名ドセタキセル)、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)、カンプト(もしくはトポテシン、一般名イリノテカン)、ラステット(もしくはベプシド、一般名エトポシド)などがあります。

白金系抗がん剤と組み合わせるのは、どの抗がん剤が最もよいかというと、この答えはまだ出ていません。一般的には、医療機関や医師が使い慣れている抗がん剤や、患者の副作用の状態などを見て選択されます。

血液毒性と局所刺激が主な副作用

ナベルビンには、表のような副作用があります。

白血球の減少はとくに起こりやすい副作用ですが、白血球の数が2000以上、好中球1000以上であれば通常問題ありません。白血球1000以下、好中球500以下になった場合は感染症のリスクが高まります。そのためナベルビンの投与を1回休んだり、それでも数値が下がる場合は、投与量を80パーセントに減らします。血小板も極端に減少した場合は、1、2回休薬して様子を見ます。

また、投与中ナベルビンが血管からもれると、皮膚に傷痕が残ったり、痛みが出たりすることがあります。血管が細い人や太っている人は、ふだんからよく手を動かしたり、投与後にマッサージしておくと、血管が出やすくなります。

まれではありますが、間質性肺炎を起こすこともあります。間質性肺炎は、肺が硬くなって呼吸機能が落ちる病気で、亡くなることもあります。風邪やインフルエンザにはくれぐれも注意し、ナベルビンを投与した後息苦しかったり、歩くと息切れがするような場合は主治医に相談してください。

ナベルビンを使用してはいけない患者さんは、骨髄抑制の著しい人、重篤な感染症を合併している人、ナベルビンやほかの植物アルカロイド系抗がん剤に対し重篤な過敏症の既往歴のある人です。また、髄空内に投与されると、完全な下半身麻痺をきたします。そうした誤りは、絶対に防がなくてはなりません。

投与中の日常生活の注意としては、歯ブラシで強く磨くと出血する心配があるので毛先のやわらかいタイプに代え、口の中を清潔に保ちましょう。事故や怪我にも、十分注意してください。

海外では転移性乳がんで、3剤併用も

ナベルビンは転移性乳がんに対して、ハーセプチン(一般名トラスツズマブ)との併用で期待がもたれています。ハーセプチンは転移性乳がん患者の中で、HER2というタンパクの過剰発現が認められた患者さんのみ、適応が認められています。ハーセプチンは単独で使用するよりも、タキソールやタキソテールと併用したほうが腫瘍縮小効果があり、効果の持続期間も長くなるということがわかっています。

海外には転移性乳がんに対してナベルビンとハーセプチンの併用療法を行ったところ、高い奏効率を示したというデータがあります。

ナベルビンはタキソールやタキソテールと比較すると神経毒性が軽く、投与時間も短時間ですむというメリットがあるので、将来広く使われるようになる可能性があります。

日本では転移性乳がんに対しナベルビンは未承認ですが、今年の夏ぐらいには承認される見通しです。すでに海外では、ハーセプチン、ゼローダ(一般名カぺシタビン)との3剤併用で高い効果を示したというデータも発表されています。

                                 

■ナベルビンの主な副作用
●血液毒性、赤血球の減少、白血球の減少、血小板の減少
●局所刺激(薬剤が血管から漏れると、傷痕が残ったり、痛みが出る)
●悪心・嘔吐、食欲不振、手足のしびれ、脱毛、便秘など

同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート11月 掲載記事更新!