マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第42回 つかの間の平安? <ネコのポーズ>
友人の話です。
ちょっとした集まりに、1人があの頃の「マスク」をして登場するのだそうです。あの頃のマスクというのは〝アべノマスク〟と呼ばれた小さな布製のマスクのことです。
どう見てもマスクとして不自然。何度も洗濯したからではなく、もともと小さくて、成人の顔に釣り合わない。あれはいったい何だったのでしょう。
「全戸に2枚ずつ配布されたあの布マスク?」
「そうです」
「よくまあ、取っておきましたね」
「記念に取っておいた」
何の記念かというと、政府が新型コロナ対策として目に見えるかたちで実行した第1弾だったから。かかった費用は260億。
「それにみんな、忘れたがっているだろ? だからさ」
忘れてはいない。ただ自分が配ったわけではないのに、なんだか恥ずかしい。
がんサバイバーによるヨガを再開
あれから1年半。
新型コロナは変異をして、また感染が再拡大するかもしれないが、さすがに不織布マスクが手に入らないという事態は起こらないだろうと誰もが思う。我が家にも約1年分のマスクが備蓄されています。そのつもりはなかったけれど、色がきれいだったり、形がちょっとおしゃれだったり、耳に優しい〝掛けひも〟とか〝涼感マスク〟などキャチーなコピーに惹かれて買ううちに、とんでもない量が溜まっていました。
強権発動して新型コロナをいち早く抑え込んだ中国、AIを活用して独自技術で抑え込んだ台湾。それに比べると統一感のないいくつも政策がゆるく出されながら、東京都はなんと4日連続で2桁の感染者数に急減しました(10月12日現在)。つかの間かもしれないけれど、ほっとします。
私どものセンターで行っている「がんサバイバーによるがんサバイバーのためのリボンヨガ」も、緊急事態宣言解除にともない再開され、メンバーたちに喜んでいただいています。
本当に自粛されていたのですね。そして待っていただいたのだと実感しました。
がん治療とペットとの関係
抗がん薬治療中の方は免疫力、抵抗力が低下しているため、感染症にはことのほか気をつけています。リンパ節郭清した人も、例えば好きな庭いじりにしても、皮膚に切り傷がつかないように工夫が必要です。家族の一員でもあるペットの世話も、それまであまり気にしていなかったちょっとしたケガや排せつ物の取り扱いにも気を使います。
ペットと共にいることで、あるいは大好きな庭いじりをすることで、免疫力もアップします。
1人暮らしのある女性が言います。ネコと暮らすことで助けられていることがたくさんあると。嫌なことがあったり、どうしようもなく落ち込んで、ずっとずっと布団かぶって寝ていたくても、ネコはお腹が空けば枕もとでニャアニャアと鳴く。とりあえずキャットフードを用意して、そうか、トイレの砂を換えて……とかやっているうちに、自分の日常が戻ってくる。
がんといえばペットのがんを心配して、ペット保険には入っていたのに、自分にはがん保険をかけていなかったとMさん。入院中、きょうだいにネコを預かってもらって、その後もネコ爪を心配したきょうだいが預かるからというので、治療中はネコと離れて暮らすことに。寂しくてわびしくてと嘆く。「ネコ爪でケガするリスクより、ネコと離れて暮らすストレスでかえって免疫力が下がりそう」と。難しい選択です。
自粛生活もそうです。確かに感染リスクを減らすことはできても、友人と会えない、食事しておしゃべりしない。習い事やサークル活動も公共施設が全部閉じられた時期があり、孤立した生活を余儀なくした人も少なくありません。こちらのリスクも無視しがたいものがあります。
不安を感じたらやめておこう
こじつけめいて聞こえるでしょうが、<ネコのポーズ>をして、心静かにととのえて、リスクについて自分で選択したいものです。
もし1日に1ポーズしかできないとしたら、私は<ネコのポーズ>をお勧めします。これだけでも血行が良くなりからだは温まり、免疫力が高まります。腰痛予防に特効があり、肩コリを和らげます。何より自分の内側のしなやかさを目覚めさせてくれます。
乳がん手術の際、リンパ節郭清を大幅に施術され、リンパ浮腫に気をつけるように指示されているが、「両手を床につけて体重をかけて大丈夫か」と質問されたことがあります。両手と両下腿部で体を支えているし、時間的にも非常に短時間ですから問題ありません。
実は、動画モデルの栗木インストラクターはがんサバイバーで、左腋のリンパ節をほとんど全部、郭清しました。
でも「掌も腕も違和感を全然感じなかったので、普通にやっていた」そうです。
ですが、身体に良いといわれていることでも、自分が不安に感じながらやるのは良くありません。不安を感じたらやめておきましょう。
<ネコのポーズ>
①正座します
②両手を両膝脇の床につきます。手の上に体重を乗せるのではなく、そっと置くだけです
③軽く息を吐き、吸いながら背筋を伸ばし、胸を拡げ、顔面を上方に向けます
④息を吐きながら両手を前方に滑らせます。首はリラックス。尻は足裏から浮かせないようにして上体を平伏させていきます
⑤手の位置はそのままで、腰を浮かして四つ這いになります。これがスタートの姿勢です。股関節の下に膝が、肩関節の下に手首があります
⑥ゆっくり息を吐きながら、背骨を持ち上げます。尾骨から頭頂までのラインが、お椀を伏せたような、半円を描くようなイメージで持ち上げます。そのまま自然呼吸。
肛門を軽く閉じて骨盤を立て、腹を背中のほうに引き上げます。丹田を仙骨に、へそを腰部に引き上げ、胸の中心は両肩甲骨を拡げるイメージで引き上げます。4~8呼吸
⑦吸う息で背中をゆっくりと平らにします
⑧お腹を緩めないで、ゆっくり息を吐きながら、顎を前に出し、少しずつ上げていきます。4~8自然呼吸で。1呼吸ごとに肩甲骨と肩甲骨の間を、ちょっとずつ沈めていくイメージで
⑨吸う息で背中をゆっくりと背中を平らに
⑩吐く息で尻をかかとに戻し、
⑪吸う息で脊柱を起こし、正座で呼吸を整えます
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
●こころとからだクリニカセンター
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