「がんの治療や副作用のケア」についてのアンケート調査結果
抗がん剤の副作用「倦怠感・疲れ」は患者のQOLを下げる
周囲の想像以上に、患者さんにとってつらい症状は「倦怠感・疲れ」
抗がん剤治療を受けている(受けた)割合は、回答者が患者さん本人の場合では84パーセント、回答者が家族の場合では79パーセントであった。
抗がん剤治療に伴って感じる症状を聞いたところ、患者さん本人では「倦怠感・疲れ」(70パーセント)が最も高く、「吐き気・嘔吐」(67パーセント)、「食欲不振」(66パーセント)を上回る傾向がみられた。一方、家族側の感じ方をみると、「倦怠感・疲れ」(52パーセント)は、「食欲不振」(74パーセント)や「吐き気・嘔吐」(70パーセント)を大きく下回っている(図1)。家族が感じる以上に、患者さんにとっては倦怠感・疲れの問題が大きいことがわかる。また、抗がん剤治療に伴う「最も」つらい症状でも患者さんの6人に1人が「倦怠感・疲れ」(17パーセント)をあげ、「吐き気・嘔吐」(30パーセント)に次いで高い。
倦怠感や疲れがQOLを低下させる
倦怠感や疲れを感じている人に、それによってどのような困りごとがあったかを「非常に当てはまる」から「全く当てはまらない」の5段階で聞いた。このうち「非常に当てはまる」+「まあ当てはまる」の数値をみると、患者さん本人では「続けて歩くのが困難(47パーセント)」「集中力がない(43パーセント)」をはじめ、「体を起こしているのがつらい」「仕事や家事ができない」「重い荷物を持つのがつらい」「階段の登り降りの途中で立ち止まる」などで4割を超えている(図2)。歩く、階段の登り降り、といった日常生活や通院のための基本動作に影響が出ることは、患者さんのQOL(クオリティオブライフ=生活の質)を著しく下げることになる。また、この2つの項目は家族側の数値が低いことから、患者さんが家族に遠慮してか、自分の症状やつらさを伝えていない現状が垣間見える。
外来化学療法の普及で迫られる新しい貧血対策
誌面で「外来化学療法の普及で迫られる新しい貧血対策」の記事を読んでいただいた上で、いくつかの質問を投げかけた。
「倦怠感・疲れ」と「化学療法による貧血」が結びついていない
記事を読む前から治療中の自分のヘモグロビン濃度を知っていた患者さんは43パーセントと、半数に満たない。「倦怠感・疲れの原因のひとつががん化学療法に伴う貧血であること」を知っていたのは25パーセントにとどまっている(図3)。家族が知っていた割合はさらに低く、多くの患者、家族は倦怠感・疲れの原因についての知識を持っていないことがわかる。そのため、ヘモグロビン濃度への関心も低くならざるを得ないと推察できる。
倦怠感・疲れは、痛みや嘔吐などと異なり、「何となく」であるために顕在化しにくいこと、しかし多くの患者さんが感じていること、患者さんが自身の症状や原因を知ることがケアへの第1歩、といったことを考え併せると、まず医療者側からの十分な情報提供と説明が必要といえそうだ。
「倦怠感・疲れ」「がん化学療法に伴う貧血」の治療に患者自身も関与を
患者さん本人のうち、「がん化学療法に伴う貧血」治療に関心があると答えた人は87パーセントで、関心は非常に高いといえる。治療方法については、「輸血」に期待するという人が47パーセントであったのに対し、*エリスロポエチン(EPO)製剤では80パーセントと、EPO製剤への期待が高い(図4)。
「倦怠感や疲れについて、医師や看護師に相談したいか」という問いに対しては患者さん本人の75パーセントが肯定しており、現在治療中ではないという人を除くとほとんどが「相談したい」と答えた。 患者さん自身が積極的に治療に関わる意識を持ち、情報を得ようとする流れは、今後ますます強まるであろう。
*エリスロポエチン(EPO)とは、腎臓で作られる造血ホルモンで、骨髄における赤血球の産生を促す働きを持っています
ご回答くださった読者は、患者さん本人150名(男性42名、女性106名、不明2名)、(ご家族の中にがん患者さんがいらっしゃる)家族58名(男性28名、女性30名)の計208名。うち現在治療中という方が、患者さん本人の場合は67%、ご家族では43%でした
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