3カ月で2倍以上PSA値が上昇している
2018年に前立腺がんと診断され、ダヴィンチで前立腺全摘手術を受けました。術後、ホルモン療法を受ける予定でしたが、脳梗塞の既往歴があるため、経過観察を続けていました。2020年5月にPSA値が1.08に上昇し、再発の疑いでCT検査を受けましたが、陰性でした。そこで3カ月に一度のリュープリン注射を行い、PSA値は0.02にまで下がりました。しかし、ホットフラッシュが強く出たので中止してもらいました。最近になってPSA値が3カ月で2倍以上のペースで上昇し、1.31になりました。このまま、なにもしなくても大丈夫でしょうか。
(70歳 男性 栃木県)
A 転移がなければ救済放射線療法も選択肢
腎泌尿器外科部長の古賀文隆さん
前立腺全摘除後にPSA再発(術後PSAが0.2を越えて上昇)を来した場合、転移病変がなければ、前立腺が元々あった部位に対する救済放射線治療が有効で、完治が期待できます。PSA再発に対する早期救済放射線治療は、遠隔転移のリスクを低下させることがわかっています。
ホルモン療法は前立腺がんの進行を遅らせる効果はありますが、完治は難しく、また、ホルモン療法の副作用によるメタボや心血管系の合併症のリスクが高まる恐れがあります。
相談者の最近のPSAの上昇は、過去に受けたリュープリン(一般名リュープロレリン/LH-RHアナログ)の効果が切れて、男性ホルモンが元に戻ったためと推測されます。
現時点で転移がないことを確認できれば、救済放射線治療も選択肢になると思います。PSA再発時のPSA値が低いほど完治の可能性は高くなります。この点では相談者の現在のPSA値はやや高めであるため、放射線治療効果を高める目的で、一定期間のホルモン療法(6カ月や1年など)の併用を考慮したいところです。
ホルモン療法に伴うホットフラッシュには、一部の抗うつ薬や抗てんかん薬の有効性が報告されていますが、本邦では保険適応となっていません。漢方薬が有効である場合もあります。
併用するホルモン療法は、通常LH-RHアナログと抗男性ホルモン薬(ビカルタミド)を用いますが、前回経験したホットフラッシュがとてもつらかったのであれば、ホルモン療法としては弱くなりますがリュープリンを用いず、ビカルタミドの内服のみとする代替案も考慮されます。これらについて、主治医とよく相談することをお勧めします。