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膵がん・CT検査(2)
膵臓の腫れ、腫瘤、膵管の狭窄に注目する
もりやま のりゆき
1947年生まれ。1973年、千葉大学医学部卒業。米国メイヨークリニック客員医師等を経て、89年、国立がん研究センター放射線診断部医長、98年、同中央病院放射線診断部部長で、現在に至る。ヘリカルスキャンX線CT装置の開発で通商産業大臣賞受賞、高松宮妃癌研究基金学術賞受賞。専門は腹部画像診断
患者プロフィール
78歳の女性Gさん。上腹部に痛みがあり、近くの病院にて受診。痛みは胃炎であることが判明したが、腹部超音波検査にて、偶然膵臓の異状が発見された。膵がんの疑いがあるということで、国立がん研究センターにて再検査。CT検査にて約2センチ大の膵がん(膵管がん)が見つかった
膵がんに伴う自覚症状は
膵がんの病巣を発見する検査としては、全体の44パーセントがCT、41パーセントが超音波というデータが出ています。Gさんのように他の疾患の検査をしていて、偶然発見されることも多々あるようなのですが、偶然ではなくいかにして膵がんを想定した腹部のCTおよび超音波検査を行うか、誰にその検査を行うかが長年の課題となっています。
検査を行う指標として、まず自覚症状が考えられます。膵がんに伴いがちな自覚症状として腹痛、腰背部痛、体重減少などがあげられますが、それぞれの発現頻度は37パーセント、8パーセント、6パーセントと出ないことのほうが多く、とても当てになりません。
またそれらの症状は他の疾患でもよく発現するもので、それから膵がんを疑う根拠とはなりにくいので、膵がんを想定したCT、超音波検査にはつながりにくいようです。
膵がんによく伴う自覚症状(特異的な症状といいます)はないのでしょうか?
「膵がんのなかには胆管閉塞を伴って黄疸が出ることもあります。また糖尿病症状が急に出たり悪化したり、急性膵炎の症状を呈するものもあります。ベテラン医師は、これらの特異的な症状、非特異的な症状を総合的に見て、超音波検査やCT検査に持っていき、見つける場合もあります」(森山さん)
黄疸は膵がんが進行して隣接した胆管に浸潤した場合、糖尿病症状は膵臓でつくられるインスリンががんの影響で分泌がうまくいかなくなった場合に発現します。
以上のような自覚症状が現われたら、併せて膵臓の消化酵素であるアミラーゼおよび膵がんのできることによって産生される物質CA19-9(腫瘍マーカー)の血中濃度を測り、高値であれば、膵がんの疑いありとして、CT、超音波検査に持っていく場合もあるようです。
画像のどの点に着目するか
主膵管の拡張が顕著で膵頭部にがんが認められる(矢印は膵がん)
さてなんとかCTおよび超音波検査にたどりつくことができたとしましょう。画像から膵がんを疑うにはどんな点に着目するのでしょうか?
「膵がんの直接的な画像所見としては、膵臓の腫大(腫れること)、膵臓内の腫瘤形成、限局した膵管の狭窄があります。Gさんの検査画像では膵頭部に明らかな腫瘤が認められます。大きさは約2センチです」(森山さん)
膵臓は胃につながる十二指腸に接しているおたまじゃくしのような形をした臓器です。頭頂部が十二指腸につながっている形状なのですが、その頭部にできるがんを膵頭部がんといいます。ちなみにおたまじゃくしの身体中央にできるがんは体部がん、尻尾にできるがんは尾部がんといいます。
Gさんの膵がんは2センチ大で見つかったのですが、これが3センチ大になると、仮に手術が可能であってもあまり手術後の経過は良くないのだといいます。2センチ大でも格段に経過がよくなるわけではありませんが、3センチ大に比べれば良いのだそうです。
「膵がんの間接的な画像所見としては、胆管の拡張あるいは主膵管の拡張などがあって、Gさんの検査画像では主膵管の拡張が顕著です」(森山さん)
腫瘍が大きくなるにつれ不均一な色調に
膵臓は消化酵素を分泌する役目がありますが、主膵管は膵臓に張り巡らされた膵管から流れてくる消化酵素を集めて十二指腸に排出するメインルートといってよいかと思います。
「膵がんができると、この主膵管が拡張する傾向があります。通常より2ミリ以上拡張すると膵がんを疑う重要な根拠となります」(森山さん)
CTも超音波でも、この主膵管の拡張は容易に見つけることができるのですが、超音波では場所によっては2センチより小さい膵がんは見つけにくいという短所があります。CTも単純な撮影ではなく造影剤を使わないと、小さい膵がんは見つけにくいのだそうです。
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