マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第63回 カルキは夏の匂い<ヒップリフトのポーズ>
カルキの匂いをかぐと、小学校のプールの情景がよみがえります。
夏休み、学校プールが解放される日は、ほとんど1日も休まず通い続けたプール偏愛の日々。
上級生や泳ぎの上手な子を見ているうちに、水の中でこうかなとやってみる。「あれあれ? これでいいのかも、できちゃってるみたい」、という感じで泳ぎを覚えていった。平泳ぎもクロールも背泳ぎも、バタフライまでそうやって、小3のときは一通り泳いでいました。どれも〝もどき〟なのですが。
前途洋々な水の中の冒険者
水の中では冒険者でした。
最初は浮き輪を使って、ぷかぷかとプールの真ん中まで泳ぐ真似。浮き輪を持ってきた仲良しの子がいて、それをなんと言って借り上げたか。
母が言うには「まあ、うちの子ときたら、お宅のMちゃんの浮き輪をまるで自分のものみたいに……」、でした。
Mちゃんは浮き輪をしているのに、プールのヘリから手を離すことができないのでした。
多くの子どもがやるように、浮き輪をつけたまま身を乗り出して平泳ぎっぽい動きをぷかぷかと。
次が足の着くところで、浮き輪なしで平泳ぎに似た泳ぎを。
次は顔を水につけ、頭を水にくぐらせて、プールの端を足で蹴ってスーッと進む。
息継ぎはまだまだ先のこと。プールの短い辺の端から端まで、途中で立たないで泳ぎ切ることができたのは1年生の終わりだったか。
あれらの日々の〝前途洋々〟という気分は、それ以降の人生でも味わった記憶がない高揚感でした。
夏休みの終わりには藤色の水着がすっかり色褪せて、その年に流行った胸からウエストまでシャーリングで、裾がひらひらしたワンピース型水着は、子どもの目にも崩壊寸前でした。
プール後の洗眼専用U字型蛇口は日本だけのもの⁉︎
カルキ臭を嗅いだだけで次から次とよみがえってきます。
プールから出たら、あの独特の形をした二股洗眼シャワーで目を洗います。
カルキを含んだプール水を水道水で洗い流す必要があるということで、ある年から校庭の水飲み場に夏だけあのU字型蛇口が取り付けられました。
ところがです。
プール後の洗眼専用のU字型蛇口は、世界中でも例がないという眼科医石崎みさきさんのインタビュー記事(スポーツゴジラ第59号)を読んで、びっくりしました。そもそも日本以外で、体育の授業として水泳を行う国があまりないそうなのです。この記事は2013年に刊行されたインタビュー記事の再録ということでした。
カルキを含んだプールに入るのにはゴーグルは必須なのに、小学校のプールでは以前はゴーグル着用が原則禁止という時代があったそうです。
2017年の調査では、ほとんどの小学校でゴーグル着用は認められています。
今では日焼け防止クリームの是非だったり、スクール水着をジェンダーレスの方向にしていくとかの議論がトピックです。
ちなみに私の世代ではゴーグルは1人も使っていませんでした。
カルキ臭ですっかりノスタルジックな気分になってしまいましたが、学校プールについての意識は世代によって相当大きく変化しています。
けれどもプールが、泳ぎを習得するためだけのものになってしまうのはなんだかもったいない。正しいフォームでより長くより早く泳ぐための水泳教室が中心のプールなんて、退屈してしまいそうです。
いま〝前途洋々〟という解放感に満ちた体験ができるのは、マインドフルネス・ヨガかな。自分が感じていることをそのまま受け止めて、繊細に大胆にやってみる。頭で考える「ああかな、こうかな」は堂々巡りに陥りやすいけれど、身体の内部感覚を軸に据えて「ああかな、こうかな」とやってみる。
今回紹介する<ヒップリフトのポーズ>は、マインドフルにやるとまず首肩がすごく気持ちいい。お試しください。
<ヒップリフトのポーズ>
①仰向けになり、両足、両膝を腰巾に開き、両膝を立てます。かかとが膝下に来るくらいの位置に
②両腕は楽な位置に投げ出します。体側に沿って伸ばしても、脇をゆるめて完 全なくつろぎのポーズのように投げ出してもいい。横にひろげてもOK。
③息を吐きながらヒップをゆっくり引き上げて、肩関節の中心、股関節の中心、足首を結ぶ線が斜めに一直線になるようにします。そのまま自然呼吸でキープ
④お尻はきゅっと閉じられ、腿の裏側の筋肉も使います。ちょっと手で確かめて、ふにゃとでなく、筋肉がしっかり使われているのを感じてください
⑤首裏から肩にかけて、自分の体重によって適度に圧せられた感覚、指圧されているような気持ち良さが感じられませんか? このポーズで一番大切にしたいのは、この首肩の気持ち良さです
⑥腹側は恥骨から喉もとかけて緩やかに体位を傾斜させることで、ふだん座業で下垂していた胃腸など内臓がゆったり正常位置へと整えられてくるのを感じてください。逆立ちや肩立ちのポーズはハードルが高いけれど、このポーズでも十分な効果が得られます
⑦20~30秒保持したら、同じくらい時間をかけて、今度は非常にゆっくりと意識的に戻してきます。椎骨の1本1本を、上から順々にマットに戻してきます。そうすることで腹筋が上から順々と使われるのが感じられます。胸椎骨が床についても腰椎骨はまだ浮いているのを感じてください。腰椎骨をつけていくとき、仙骨はまだつけません。最後に仙骨がつき、ヒップを緩めます
繊細にマインドフルに行いましょう。
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
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