バーチャル病院とは 医療情報の提供、病院内紹介などが主

文:諏訪邦夫(帝京大学八王子キャンパス)
発行:2006年2月
更新:2014年1月

  

すわ くにお
東京大学医学部卒業。マサチューセッツ総合病院、ハーバード大学などを経て、帝京大学教授。医学博士。専門は麻酔学。著書として、専門書のほか、『パソコンをどう使うか』『ガンで死ぬのも悪くない』など、多数。

診療科別に医療相談

「バーチャル病院」で検索すると、まずインターネットプロバイダの「まほろば」が運営している「バーチャルホスピタル」がトップに出てきました。「ここは健康コミュニケーションの場です。『こんなことさえ知っていれば大事に至らない』といったような医療知識を皆様に知っていただくことを目的としています……」といった出だしで、診療部門ごとの医療相談や健康相談の場になっています。

辞書によると、「まほろば」というのは「まほ」(真保)と同じで、「漠然と場所を示す語」の普通名詞ですが、固有名詞に使っている施設もあるようです。

この「施設」の頁には、「ご注意」として、「この医療/健康相談はあくまで電子メールでの相談であり、診療行為に基づいたものではありません。したがって、相談に対する返答やアドバイスに関して、一切の責任を負うものではありません。内容については、相談者が自己の責任において判断し、必要なら適切な医療機関を受診するようにお願い致します」と表示されています。

医療以外の領域では許されていますが、医療では「インターネットに医療機関を開設して医療行為を行う」ことは多分許されていないので、その点の注意と解釈します。

それでも、このバーチャルホスピタルは、各担当者が名前と所属を明確にしている点は特筆できます。各診療科ごとに個別の頁が設けられており、実際に中をみると、「建設中」となっていて内容のない項目も少なくありませんが、一方では活発に活動していて、中にはアクセス数がすでに数10万というのもあります。 また、質疑を掲載しているコーナーがもあって、ついでにアンケートをしている場合もあります。

医療情報の提供

「オンライン医療情報ナビゲーター・メディナビ」の中に「症状ガイド」というコーナーがあり、いろいろな症状について、考え方や予想される疾患などを簡単に説明しています。

例えば、「のどに何かひっかかっているようだ」というのをみると、「山川耳鼻咽喉科医院サイトより引用」で、「のどに何かひっかかっているような感覚は意外と多く、またかなり気になるものです(中略)。問題は咽頭がんが隠れている場合もあることです。のどのがんはやはり専門の耳鼻咽喉科医による内視鏡での観察と生検が必要です。咽頭がんがないということがわかれば、のどの違和感も消失することも多いので、信頼できる耳鼻咽喉科医を受診してください」となっています。

NHKの「ためしてガッテン」とMedical Tribune の「あなたの健康百科」も、このキーワードで検索されました。「ためしてガッテン」はがんの問題を扱うのは稀ですが、とにかく要点にアクセス可能です。

後者の「あなたの健康百科」は、医師相手に発行されている週刊新聞の「Medical Tribune」が、一般の方向けにインターネット上に開いている健康情報提供の頁で、いろいろなテーマを扱っています。がんだけをテーマとして扱う欄は見つかりませんでしたが、健康や病気のいろいろな問題が要領よく解説されています。

病院紹介

病院紹介では長岡赤十字病院 のもの(新潟県長岡市)が、充実していました。「バーチャル病院見学」という項目名で、内容的には、病院内の施設を階ごとに紹介している普通の病院紹介です。しかし、写真が多くて、「写真を大量に載せて言葉で補足説明している」印象が強く、院内の様子がよくわかり、なかなか魅力的な紹介になっています。

他には、小倉第一病院 も上位に見つかりました。こちらは病院の「バーチャル見学」として、「医療IT」、「医療情報と開示」、「糖尿病教室」「EBM」「ボランティア活動」など、病院で行われているさまざまな取り組みを、それぞれ各分野の担当者が解説しています。

その他、ユニークな頁

「多摩の台病院は1998年に私が作り上げたバーチャル病院です。病床数300、救命医療も行っています。現代医療に不満を持つ、個性豊かな医者たちが集まり、新しい医療をめざし戦い続けます」という出だしで始まる頁がありました)。

これは、『多摩の台病院ものがたり』という、架空の病院を舞台にした医療小説の紹介で、作家であり医学博士でもある米山公啓さんが開設しているホームページの中の1コーナーです。ここには登場人物の漫画と簡単な紹介が掲載されています。現在までに数冊発行されているようです。

米山さんは著作が非常に多く、発表されているリストでは著書が130以上もあり、最近では毎月1冊くらいのペースで本を出していらっしゃるようです。実用書やエッセイ、ノンフィクションの医療小説までジャンルは様々です。

著書のリストの1部を紹介しますと、『健康という病』、『病気がクスリになる生き方』などの比較的「まともな」タイトルのものから、『大学病院の不健康な医者たち』、『医者と結婚する方法』、『いのちはカネで買え』といったユニークなタイトルのものまでいろいろです。

ホームページ内には「読者のみなさんからの感想文」、「その他読者からのメール」が(もちろん投稿者の許可つきで)公開されており、根強い人気を博していることがわかります。

また、その他医療相談のコーナーもあり、内科・神経内科領域の相談をメールで受け付けています。 検索が終わって気づいたことですが、「バーチャル病院」というのは、現時点では「医療関係の情報提供」ということで、とくに「バーチャル病院」と銘打っていない一般の「医療情報の頁」がすべてこれにあたるとも解釈できます。

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