前立腺肥大を伴うがんの放射線治療で、照射前の肥大切除手術は有効か

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2009年10月
更新:2013年12月

  

1年前に、針生検で限局性の早期前立腺がんが見つかりました。ステージ(病期)T1cで、グリソンスコア(腫瘍の悪性度)は6、PSA(前立腺特異抗原)値13.0でした。前立腺肥大を伴っていて、すぐに全摘手術はできないため、注射と錠剤服用によるホルモン療法と、排尿をよくするαブロッカー剤の投与からスタートして、現在に至っています。告知を受けて以来、インターネットやあらゆる書籍を購入して、病名や治療法を調べたところ、前立腺の病気は、治療法の選択肢が多く、それがかえって患者を悩ます一因となっているような気がします。QOL(生活の質)を最終的に考えた結果、たどり着いたのは放射線治療の中でも、近年日本でも急増している小線源放射線治療でした。現在、主治医よりセカンドオピニオン(第2の意見)を紹介していただき、小線源治療を念頭においた治療方法を検討していただいております。ただ、前立腺肥大が縮小しないことには適応外となってしまいそうです。「前立腺肥大縮小のための小手術も視野に入れてください」と言われて、様子見の状態で自分なりに悩んでいます。当然、小手術を回避したいと願っており、このままもうしばらくホルモン療法を継続して、前立腺肥大を縮小させてから小線源治療にかかっていただくことを願望している次第です。また、小手術以外に前立腺肥大を縮小できる方法があれば、教えてください。

(秋田県 男性 63歳)

A 手術で前立腺を小さくしてからの小線源治療は一般的ではない

ステージT1cの場合、前立腺肥大を伴うために前立腺がんの全摘手術が難しいということはほとんどないと思います。ご本人が全摘手術はどうしても受けたくない、あるいは、手術や麻酔にリスクがあるなど、全摘手術をしない理由が他にもあったのではないかと推測されます。ご検討中の小線源治療は、50から100本ほどの針を前立腺に埋め込む治療法です。埋め込んだ針から放射線が照射されます。排尿障害や性機能障害の心配も少なく、入院期間も2泊3日程度と短期間であることがメリットです。一般的に、小線源治療の治療適応は、前立腺の大きさが40ミリリットル以下です。前立腺肥大があまり大きいと針が届きません。そこで、前立腺を小さくするために、ホルモン療法をされているのだと考えられます。

通常、前立腺肥大を小さくするホルモン療法は、3~6カ月ほど行います。それ以上、ホルモン療法を行っても、小さくなりません。

いつからホルモン療法を始められたのかわかりませんが、仮に、1年間行っていて、40ミリリットル以下にならないようなら、現在よりも前立腺肥大を小さくすることは難しいと思われます。

前立腺肥大縮小のための小手術についてですが、おそらく、前立腺の内視鏡手術(TURP)のことかと思います。尿道から細い内視鏡を挿入し、前立腺の画像をテレビに映し出し、この画面を見ながら電気メスで前立腺を内側から削る治療です。この内視鏡手術をすると、前立腺の中に空洞が生じることがあります。そうなると、小線源治療の針が刺しにくくなり、また、刺した針が膀胱側に落ちてしまうこともあります。ですから、前立腺の内視鏡手術で前立腺を小さくしてから小線源治療というのは一般的とは言えません。もし、ホルモン療法を1年行っていて、まだ前立腺の大きさが大きいなら、小線源治療にこだわらないで、ほかの治療法を考えたほうがよいと思います。

1つ目は、前立腺の全摘手術です。手術をすれば、前立腺肥大もなくなるために、排尿障害も改善します。お若いですし、体力的に問題ないならば、全摘手術をお勧めします。

2つ目は、外照射単独の放射線治療ですが、この場合には、排尿障害は残るかもしれません。

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