末期の前立腺がん。座るとお尻のあたりがとても痛い
84歳の父のことでご相談します。がんが直腸に浸潤し、骨、肝臓、リンパ節に転移があります。血尿も出ていて、末期の前立腺がんと言われています。治療はこの3年間、ホルモン療法を受けています。仰向けや立っている姿勢ではそれほど痛みを感じないようですが、座ると、お尻のあたりがかなり痛く、ご飯も立って食べています。痛み止めの薬は飲んでいますが、効果はあまりありません。痛みを和らげる治療法はないでしょうか。また、血尿が固まって、尿が出にくいようです。管を尿道につないでいますが、サイズが合わず何度も病院へ行って、取り替えています。尿がスムーズに出るよい方法はないでしょうか。
(岩手県 女性 59歳)
A 原因を特定し、それに応じた対処を
お尻のあたりが痛む原因は2つ考えられます。1つは、骨盤骨(腸骨、坐骨、恥骨の3つの骨で構成されています)に転移していて、そのためにお尻のあたりが痛くなっていることです。
前立腺がんの骨転移は、骨盤骨に最も起きる傾向があります。骨盤骨に転移があると、お尻のあたりが痛むことは十分に考えられます。ただ、座るときだけ痛いということを考えると、骨盤骨への転移が痛みの原因か、少し疑問です。
骨盤骨への転移が原因の場合には、モルヒネ系統の麻薬で鎮痛の治療をするとよいと思います。
また、ビスフォスフォネート製剤(骨吸収抑制剤)のゾメタ(一般名ゾレドロン酸水和物)という注射薬も検討してみるとよいでしょう。ゾメタを使うことで、骨代謝を正常に近づけ、それによって、骨転移の進行を妨げることが期待できます。痛みに対する即効性はありませんが、少し長い目で見ると、治療効果は高いと思います。
考えられる原因の2つ目は、前立腺がん自体が進行して大きくなり、直腸を圧迫しているために、痛くなっていることです。仰向けなどの姿勢ではあまり痛くなく、座ったときだけ痛いというのであれば、こちらが原因であることがより考えられます。泌尿器科の専門医が直腸診を行うか、MRIの画像を診ることで、この診断は簡単につけられます。この原因によって痛む場合は、がんが浸潤している部分に放射線を照射することなどで、痛みを緩和させることが期待できます。
また、場合によって、前者と後者の両方が原因となって、痛くなっていることも考えられます。
尿が出にくいことに関しては、管のサイズを少しずつ大きなものに替えていって、ちょうどよいサイズを探すとよいと思います。
また、尿道に管を入れている理由には、排尿をスムーズに行う以外に、止血の意味合いもあるかもしれません。血尿がどうしても止まらない場合は、電気でその部分を焼く手術を行うことで、止血することも可能です。