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空咳、息切れ、発熱に注意! 肺がん治療「間質性肺炎」は早期発見が大事

監修●久保田 馨 日本医科大学呼吸ケアクリニック副所長/臨床腫瘍部門長
取材・文●「がんサポート」編集部
発行:2024年2月
更新:2024年2月

  

「空咳、息切れ、発熱の3つを覚えておいてください。とくに薬剤性の場合は熱が出ることがあります」と語る久保田さん

肺炎は老齢者や乳幼児に多い病気で、風邪をこじらせて肺炎になったなどしばしば耳にします。ところが、同じ肺炎でも、「間質性肺炎」はあまり聞いたことがない方も多いかもしれません。

肺がんの薬物療法の副作用、自己免疫疾患の膠原病や身近なカビなどさまざまな原因で発症し、しかもその原因がわからないことも多い間質性肺炎。

今回は、間質性肺炎の原因やその検査、間質性肺炎を併発している肺がん治療について、日本医科大学呼吸ケアクリニック副所長/臨床腫瘍部門長の久保田馨さんに伺いました。

間質性肺炎はどのような病気でしょうか?

肺は、気管が左右に枝分かれすると気管支という名称になり、気管支はだんだん枝分かれして行きます。そして最終的には〝肺胞〟という小さな袋状になり、それがブドウの房のようにたくさん付いています。肺胞は毛細血管が網目状になっていて、肺胞に届いた酸素がそこで血液の中に取り込まれ、全身をめぐった血液が二酸化炭素を吐き出します。

「〝間質〟というとピンとこない方も多いと思いますが、肺は最終的には肺胞という小さな部屋になります。その肺胞のなかを〝実質〟、肺胞と肺胞の間の組織を〝間質〟と言います。その間質に起こる炎症を間質性肺炎と呼びます。一方、普通の肺炎は、細菌などの微生物が侵入して肺胞の中の実質に炎症が起こっている状態です」と日本医科大学呼吸ケアクリニックの久保田馨さんは説明します。

「間質に炎症が起きると、そこが厚くなったり、線維化と言って硬くなったりします。そうすると、肺胞は酸素を交換する場所ですが、肺胞の部屋のなかの換気自体は良くても、間質の病変のために酸素の取り込みが悪くなります」(図1)

間質性肺炎の原因は何でしょうか?

「間質性肺炎の原因はさまざまあります。もちろん喫煙は関係しますが、膠原病や、関節リウマチなどの自己免疫疾患に伴うものもあります。また、分子標的薬イレッサ(一般名ゲフィチニブ)で問題になった薬剤による間質性肺炎があります。そのほかにも放射線治療で、照射していない部分に起こったりすることもありますが、一番多いのは、特発性(とくはつせい)と言って原因がはっきりしない間質性肺炎です」

原因不明の間質性肺炎の1つで進行性肺疾患を特発性間質性肺炎と言います。特発性間質性肺炎もいくつかに分類され、最も多いのは特発性肺線維症(IPF)という病型です。5年生存割合は2~4割くらいです。

特発性によく似ている言葉に突発性(とっぱつせい)というのがありますが、これは突然発症することを意味しています。

また、環境的な原因の1つにカビがあります。最近は加湿器による肺炎が冬になると多いそうです。

「超音波型加湿器は加湿器肺炎を起こしやすく、肺がん患者さんも危ないですから注意が必要です。とくに加湿器をよく使用する冬の間は気をつけていただきたいですね」

沸騰型の加湿器は比較的安全ですが、いずれも加湿器自体にカビを発生させないよう、こまめに手入れすることが大切です。

間質性肺炎の診断はどのように?

「間質性肺炎の診断には、臨床症状、問診、診察、胸部X線(すりガラス状、網の目状を示す)やCT画像検査とKL-6、SP-Dを調べる血液検査などで行います。そのなかで大事なのは、聴診器による検査です。血圧を測るため腕に巻いた布を剥がすときのようなバリバリという音が、背中のほうで聴こえることがあります。そういう特徴的な音があると間質性肺炎だとわかります」(画像2)

血液検査でKL-6の数値が間質性肺炎のときには高くなりますが、肺がんでも高くなるため、その区別が必要です。たとえば、「がんは小さくなっているのにその数値だけ上がるのは、間質性肺炎が悪化しているのではないか」と考えるとのことです。

また、問診で膠原病の症状があるかどうかはとても大事で、膠原病に関する検査を行うこともあるとのことです。

「もちろん肺がんの診断も大事ですが、間質性肺炎の診断はとても大事です。間質性肺炎を合併していることがわかった場合、膠原病などの併存症や服用している薬剤を含め、患者さんの全身の評価が非常に大事になります。実は、間質性肺炎があると肺がんの発症が多いというデータがあります」

間質性肺炎を発症した肺がん治療はどのように?

「肺がんの薬物療法中に間質性肺炎が急に悪くなったときは、直ちに投薬を中止して、重症の場合は、ステロイドを大量に投与するステロイドパルス療法などを行います。

特発性肺線維症(IPF)に対しては、オフェブ(一般名ニンデタニブ)とピレスパ(一般名ピルフェニドン)という進行を抑える抗繊維化薬剤があります。両薬とも同じような効果がありますが、オフェブはがんに対する効果がある程度期待できるので、肺がんにIPFを合併している場合は、オフェブと抗がん治療を組み合わせることが多いのです」

間質性肺炎併発の肺がん治療については、早期の場合は手術を考えますが、進行がんでは薬物療法が中心になります。

「I期で、間質性肺炎が軽症の場合は、手術を選択するケースもあります。ただ、放射線治療は行わないことが多いです。本当に軽くて普通のレントゲンでは全くわからない、症状もなくて、聴診でも全く音がしないような場合は放射線治療を行う場合もありますが、典型的な間質性肺炎があれば行いません」

肺がんに承認されている免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、抗PD-1抗体オプジーボ(一般名ニボルマブ)/キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)、抗PD-L1抗体テセントリク(一般名アテゾリズマブ)/イミフィンジ(一般名デュルバルマブ)、抗CTLA-4抗体ヤーボイ(一般名イピリムマブ)/イジュド(一般名トレメリムマブ)の6剤あります。

「ICIは、塊のような肉芽(にくげ)を作ったりと少し副作用の現れ方が違ったりしますが、肺障害の頻度はそれなりにあります。とくにヤーボイは副作用が強くでるので注意が必要です。また、タグリッソ(一般名オシメルチニブ)とICIの併用は、間質性肺炎発症の危険性が高いことが報告されています」

「非小細胞がんなら、カルボプラチン(一般名)とパクリタキセル(一般名)という組み合わせが比較的安全に行えるのでよく使われます。ただ問題は、治療の選択肢が限られてくることで、小細胞がんでもカルボプラチンとエトポシド(一般名)、2次治療ではハイカムチン(一般名ノギテカン)くらいです。そのほか、オフェブは間質性肺炎に対する薬剤として販売されていますが、海外では非小細胞肺がんに承認されているところもあります。日本では肺がんに適応はありませんが、IPFなどには適応があります。たとえば、カルボプラチン、エトポシドにオフェブを加える臨床試験があり、安全に行えたという報告が最近出てきています」

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