内視鏡手術の効果は確立されているか
大腸内視鏡検査で、S状結腸に小さなポリープが見つかりました。検査の結果、粘膜下層がんで、平らなタイプと診断されました。腫瘍の大きさは1.5センチほどです。内視鏡で切除する内視鏡手術(内視鏡的粘膜切除術=EMR)ができるとのことです。開腹手術よりも身体への負担が少ない利点などがあるとのことです。この手術方法はすでに確立されているのでしょうか。また、その治療効果は明らかにされているのでしょうか。納得したうえで、治療を受けたいと思います。アドバイスをお願いします。
(神奈川県 男性 58歳)
A 普及している治療。受けたほうがよい
EMRが可能ということですから、もちろん受けたほうがよいでしょう。ご相談者のように、腫瘍が平らなタイプには、病変の下層部に生理食塩水を注入して腫瘍を持ち上げてから、腫瘍に金属製の輪をかけて、電流を流して焼き切るEMRという治療を行うことが多くなりました。かなり普及している治療です。
ご指摘のように、この治療は、開腹手術よりも身体への負担は少ないと思います。ただし、治療の合併症として出血が0.3パーセント、穿孔が0.2パーセントの確率で起こると報告されています。治療を受けるときには、これらのリスクも考慮してください。
ご相談者の場合、大きさが1.5センチとのことですから、ポリープの茎が広いと内視鏡的粘膜剥離術(ESD)と呼ばれる治療が必要になる可能性もあります。広い病変を電気メスで徐々に剥ぎとる治療です。胃がんの手術で行われるようになった手術法を大腸がんに応用した治療です。
ただし、大腸の壁は薄いため、ESDはEMRよりも治療法がかなり難しく、治療中に穴を開けるリスクが高まります。治療経験のある病院で治療を受けたほうがよいと思います。
また、EMRやESDで切除した標本の病理(顕微鏡)検査で、がんが粘膜下層深く(1000マイクロメートル以上)への浸潤が認められた場合、腸管外のリンパ節へ転移している可能性が11パーセント程度あります。そのままにしておくと、リンパ節に再発する可能性が生じますので、腹腔鏡あるいは開腹による周囲リンパ節を含む大腸の切除が必要となります。