手術後に9個の肝転移。手術は難しいと言われたが…

回答者:吉田 和彦
東京慈恵会医科大学青戸病院 副院長
発行:2005年12月
更新:2014年2月

  

65歳の母のことで相談します。今年の3月に大腸がんと診断され、切除手術を受けました。大腸の腫瘍は取り切れたようですが、肝臓に左右合わせて9個の転移があり、手術で切除しても、また出てくる可能性が高いそうです。それで、今後は抗がん剤治療を行うと言われています。手術以外で完治は見込めないと聞きますが、やはりこの状態で手術は難しいのでしょうか。手術が可能になる条件は何でしょうか。また、抗がん剤治療を行うとすると、どのような抗がん剤があるのでしょうか。

(大分県 女性 40歳)

A FOLFOXなどの化学療法により、延命効果が期待される

大腸がんで肝臓への転移が起きた場合、根治できる治療法は今のところ手術だけです。

米国の国立がん研究所が発表しているデータによると、大腸がんの肝臓転移で、切除が成功した人の5年生存率は25~40パーセントとなっています。切除手術を行うには推奨される幾つかの条件があり、根治をめざす場合は、とりわけ肝臓へのがんの転移の個数が3個以下であることが重要な条件になります。

4個以上であっても、切除できることはありますが、4個以上の転移があると、がんを切除しても、残る肝臓に再発する可能性が高いことがわかっています。ご相談者は9個の転移があるということですから、仮にそれらをすべて切除できたとしても、再発する可能性が高いと言えます。

積極的な治療法を選び、可能な限り根治をめざすのであれば、できるだけがんを切除して、そのあとにラジオ波焼灼療法で病巣を焼くという方法もあります。ただ、この治療を行っても、がんが再発することは少なくないのが現状です。

もし、肝転移のがんを根治できる程度に切除できた場合は、そのあとに再発を予防するために補助化学療法を行うのが一般的です。

ただ一般的には、ご相談者のようなケースでは、手術をしないで抗がん剤治療を行うことが多いでしょう。その場合の抗がん剤は、患者さんが強い治療に耐えられると判断した場合は、FOLFOX(5-FU=一般名フルオロウラシルの持続注入+ロイコボリン=一般名ロイコボリンカルシウム+エロキサチン=一般名オキサリプラチンの3剤併用療法)、FOLFIRI(5-FUの持続注入+ロイコボリン+カンプト=一般名イリノテカンの3剤併用療法)、IFL(5-FUの急速注入+ロイコボリン+カンプトの3剤併用療法)のいずれかが選択肢になります。

強い治療には耐えられないと判断された場合には、ゼローダ(一般名カペシタビン)の単剤療法や5-FUの急速注入+ロイコボリン+アバスチン(一般名ベバシズマブ)の3剤併用療法などが推奨されますが、保険適用となっていない薬剤を使用する場合には自費診療となることを銘記すべきとあります。

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