再発でがん性腹膜炎に。化学療法以外の治療法は?

回答者:山口 俊晴
がん研有明病院 副院長・消化器外科部長
発行:2010年7月
更新:2019年7月

  

64歳の父のことでご相談です。1年ほど前、胃の内視鏡検査で胃の出口側の胃体下部に潰瘍性の病変が見つかり、胃がんと診断されました。手術で胃を3分の2切除しましたが、がんは胃の外側の膜まで達していて、リンパ節にも転移していたようです。最近、再発を告げられました。がん細胞がお腹の中で種を播くようにぱらぱらと広がり、がん性腹膜炎を起こしているとのことです。化学療法しかないようですが、ほかに有効な方法があったら試したいと思います。ご意見を聞かせてください。

(佐賀県 女性 35歳)

A 化学療法しかない。腹水や通過障害への対症療法を行う

ご質問のケースでは、一般的な治療法としては化学療法しかありません。

化学療法には、TS-1単独療法、TS-1とシスプラチン(商品名ブリプラチンまたはランダ)の併用療法、タキソール(一般名パクリタキセル)やタキソテール(一般名ドセタキセル)などを用いた療法があります。

これらの治療法を比較した試験はありませんから、どれがよいとは決まっていません。

その人の状態によって治療法を選びます。たとえば、TS-1を使った人なら、今度はTS-1以外の薬を用いたほうがよいかもしれません。TS-1にシスプラチンを加えたら、よく効いたというケースもあります。また、食事がとれない人なら、飲み薬の服用は難しいため、注射による治療のほうがよいこともあります。

腹水がたまり過ぎた場合には、利尿剤で減らすとか、ときには腹水を抜く治療を行います。がん性腹膜炎では、腹水がたまるほかに、腸が狭くなって食物が詰まる通過障害が起こることがあります。そうした場合、化学療法がよく効いているようなら、とくに狭くなった腸のところにバイパスを作って、通過障害を改善させるという治療も試みられています。

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