1.5センチの印環細胞がん。内視鏡治療はできないか
人間ドックで胃の内視鏡検査を受けたところ、胃の上部に1.5センチほどのびらん性病変があると指摘されました。がんは粘膜にとどまっているそうです。その後、生検で印環細胞がんが見つかりました。血液やCT(コンピュータ断層撮影)などの検査の結果、転移は認められず、早期がんと診断されました。しかし、印環細胞がんは病変の広がりがわかりづらく、リンパ節転移の危険性も高いため、治療は胃の全摘か噴門側(胃の入口側)切除を勧められています。早期がんであるなら、できれば内視鏡で治療してもらいたいと思います。1.5センチと小さめのがんでも、印環細胞がんでは、内視鏡治療は難しいのでしょうか。
(愛媛県 男性 47歳)
A 標準治療ではないが、適応になる可能性がある
胃がん治療のガイドラインでは、内視鏡治療の行われる条件として、がんの大きさが2センチより小さく、がんの深さは胃の粘膜までで、しかも顕微鏡で見た形が分化型であることとなっています。この条件に当てはまる胃がんであれば、リンパ節転移はほとんどないため、内視鏡治療で治すことが可能です。
ご相談者が診断を受けた印環細胞がんとは、顕微鏡で見ると、小さな石のついた指輪のような形に見えるためにつけられた名称です。細胞の中に胃の粘液がたまり、細胞の核が端に追いやられるために、そのような形になります。
この印環細胞がんは分化型ではなく未分化型のがんです。ということは、内視鏡治療は基本的には行われません。
しかし、いくつかの施設のデータでは、がんが粘膜までで、なおかつ2センチ以下の未分化がんで、潰瘍の瘢痕(傷跡)がなければ、リンパ節転移は認められず、内視鏡治療が可能であることがわかっています。症例数がまだ少ないため、ガイドラインには採用されませんでしたが、一部の施設では、このような状況を説明した上で内視鏡治療を行っています。
ただし、内視鏡治療はがんの大きさが正確にわかった場合のみ行うことができます。内視鏡治療を受けるとしたら、まず色素内視鏡や詳細な生検で病変の範囲を正確に把握する必要があるでしょう。