術後、食べ物が飲み込みにくくなった。軽減させる方法は?
食道がんの病期2期で、半年前に手術を受けました。具体的には、右の胸を切開し、食道を切除してもらい、胸骨後経路で胃管を再建してもらいました。手術をして半年経った今も、食べ物が飲み込みにくく、つかえる感じがします。食事以外のときも、いつものどのあたりに息苦しさを感じ、不快です。これらの症状はずっと続くものでしょうか。軽減させることはできませんか。
(福島県 男性 56歳)
A 吻合部の狭窄や再建経路など、原因によって対応する
出江洋介さん
食道がんの術後は、食事摂取に関するQOL(生活の質)が大きく損なわれることが問題です。
食べ物が飲み込みにくくなる原因は反回神経麻痺、吻合部の狭窄、さらには、再建経路によっては、食道の走行がやや変わることなどが挙げられます。
前記の原因を1つずつ説明しましょう。
反回神経とは、声帯を動かしている神経のことで、反回神経が麻痺すると声帯が動きにくくなります。それによって、むせて食べ物が飲み込みにくくなることがあります。反回神経麻痺は、多くの場合、術後6カ月以内に自然に改善します。
吻合部の狭窄とは、食道と胃を手術でつないだ部分(吻合部)が狭くなることです。吻合部狭窄がある場合は、内視鏡的バルーン拡張術という処置を行います。
再建経路というのは、食道を取り除いた後の食べ物の通り道のことです。食道を切除した後は胃が食道の代わりをします。
その再建経路は3通りあります。1つは、元来、食道があった場所と同じ場所に再建経路をつくる方法、2つ目は、胸骨の後ろに再建経路をつくる方法(胸骨後経路)、3つ目は、胸骨の前に再建経路をつくる方法(胸壁前経路)です。
1つ目の方法では、再建経路はまっすぐになり、食べ物は比較的スムーズに通ります。しかし、胸骨後経路と胸壁前経路では、再建経路が屈曲してしまうため、食べ物が通りにくくなります。
ご相談者は、胸骨後経路で再建経路をつくっていますが、こちらも時間と共に症状は改善します。
胃管の運動機能も重要です。当院では、透視などを用いて再建した胃管の機能を検査しています。多くの場合、胃の排出能や運動能は術後6カ月ごろから改善し始め、1年後には、それほど困らなくなります。ただし、個人差が大きく、2年目、3年目ぐらいによくなってくる方もいます。
よく食べられる方を透視で観察すると、腹部に残った胃前庭部(胃の下1/3)が大きくなり、それに続く十二指腸が拡張し、貯留能を代償していることがわかります。ゆっくり時間をかけて、無理のない量を食べる習慣をつけると、必ず食べられるようになります。のどのあたりの苦しい感じは、抗うつ剤によって軽減する場合がありますので、1度、試してみてもよいと思います。