マインドフルネス・ヨガ:それでいいのだ! 第74回 検査にともなう不安や緊張<ハトのポーズ>
乳がんの手術後、3カ月に1回あるいは半年に1回と定期的な検診があります。術後の良好な状態が確認できると、数年後には年1回という具合に検診の頻度も間遠になっていきます。それでも検査の結果が出るまでの2週間がつらいと、一見すると元気そうながんサバイバーはボソっと弱音を吐きます。
がんは免疫力を損なわないことが大切なのに……
「こんなに結果が出るまでストレスにさらされて、その間、がんの再発リスクが増すのでは?」と考えると、いっそうゆううつになると言うのです。
「検査が楽しい嬉しいという人はいませんよ。必要だから受けるだけ」と、腫瘍科の看護師さんのおっしゃることはとってもシンプルです。
しかし、検査の何カ月も前から、そのことを考えては気分が沈みがちになってしまうというSさん(守秘義務のため本人の名前はアルファベットとし、年齢その他も多少変えています)。
そもそも検査が嫌で、長~く回避してきた過去があります。そのことで葛藤してきました。でもSさん、実はとても強運な人なのです。
〝ない〟ことにしていた胸のしこり
胸にしこりがあると気づいたのは20代の前半でした。
でもひたすら「ないこと」にしていました。気にしなければ、そのうち消えるのではないかと最初は思っていました。
ところが、しこりは消えません。でも検査を受けようとはとしません。検査はおろか、誰にも相談せずに歳月だけが過ぎていきました。
次第に極端なくらい医者嫌いとなり、健診は一切無視してきました。
健診のありそうな一般的な就職はせずに、実家が裕福であったため、家事手伝いということで、習い事に打ち込みつつ、親密な人間関係は避けて生活していました。
たとえこのしこりが悪性のものであっても、「検査も手術もしない生き方をする」と決めていました。
それから40年近い年月が経ちました。
そして、しこりが急激に大きくなって皮膚を突き破りました。
それまでSさんは、もし不慮の事故にあい、自分の意思が表現できない事態になっても、「苦痛を伴う検査や手術は一切拒否する」旨をしたためた一文を、健康保険証を入れたカードケースに小さくたたんで同封していました。
想像と違っていた医療スタッフの対応
破れたところから滲んでくる体液や血液の措置だけをしてもらおうと、近所の内科に行きました。
そして「苦痛を伴う検査や手術は拒否します」と告げ、20代前半からある胸のしこりについて、「わたしは放置するという選択をしました。緩和ケアのある病院を紹介してください」
近所の内科のドクターも、紹介された緩和ケア病棟を持つ病院のドクターも、彼女の意思を尊重してくれました。
彼女のイメージの中では、病院というところは本人の意思を確認せずに、勝手に注射をしたり、検査をしたり、手術をしたり、つまりは患者をねじ伏すところでした。
ところが現実には辛抱強く彼女の話に耳を傾け、理解し、サポートしようしてくれたのでした。
そして、頑迷だった気持ちがふっとほぐれていったのでした。
そのときは傷口の手当てに困難と痛みがともない、「検査」を受け入れて、その大きくなったしこりが悪性とも良性とも言えないグレーゾーンの腫瘍であることが判明しました。
紆余曲折を経て、腫瘍を取り除く手術を受け無事退院。日常生活を取り戻しつつあります。
緩和ケアはずっとずっと先、もしかすると一生必要ないかもしれません。必要になることがあるかもしれませんが、当分はお預けです。
Sさんは、ラッキーというか強運でした。
その彼女が検診について言うわけです。
「検査結果を待つ2週間、嫌なんですよねえ」
そしてベテランの看護師さんは言います。
「検査が好きだなんて言う人いませんよ」
Sさんは長い間、私のパーソナルヨガを続けてきた方です。少しずつヨガを再開してます。
「まだ言えないことがあって……」と、たびたび言ってたことが〝このこと〟でした。
不器用に自分のペースを守り続けた静かな情熱家です。幸運の女神さまのほうが、そっと彼女に寄り添ってきたような気がしてなりません。
今月紹介するのは<ハトのポーズ>です。
TVコマーシャルで見たことあるという人も多いと思います。
体側を伸ばし、肩甲骨周りの筋肉をほぐし、股関節周りの柔軟性を高めて大腿部のオモテ筋肉をほぐす、とても気持ちのいいポーズです。
しかし、完成度を求めるときついので、<な~んちゃってハトのポーズ>くらいの気持ちで始めましょう。
<ハトのポーズ>
①正座姿勢から腰を右にずらします。そして両膝を大きく開きます。右の股関節は開き、左の股関節は実は閉じています
②左足のかかとを左手でつかみます。柔軟な人は左腕の肘で左足または足首をとります。左手で左足をつかむだけでもOKです
③右手は右腰の横に手をつき、上体を右膝の方向に向けます
④右手を上方に大きく伸ばし、それから肘を折ります
⑤届くなら右手、左手の指先を絡めます。柔軟な人にとっては左右の手首を握りあうほうが安定しますが、多くは手が届きません。タオルを補助に使ってもいいし、両手が届かなくても右肘を上方に押し上げるようにして、右体側を伸ばします。そもそも②で左足をつかめない人もいます。右上方を見つめるだけでもOK。4~8呼吸し、静かに解いて正座に戻します
⑥今度は左右を反対にして、同様に行う
がんサバイバーやそのご家族でヨガのご体験がありましたら、ぜひ体験記などをお寄せください。kokokara@center.email.ne.jp
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