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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 4
婚約破棄に伴う式場キャンセル料、慰謝料はどうしたらよいか
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
婚約相手とブライダルチェックを受けました。彼は問題なしでしたが、私は子宮頸がんが見つかりました。結果を受けて、とくに彼の両親が結婚に難色を示しており、破談になりそうです。婚約破棄となった場合、式場などのキャンセル料の負担や慰謝料請求はどのようになりますか?
(30代、女性)
慰謝料、キャンセル料は請求可能。むしろ彼の正体見たり、との結果に喜ぶべき
ブライダルチェックで子宮頸がんが見つかったということは、多分それ迄自覚症状は何もなかったのでしょう。ということは、がんのステージ(進行度)は0期か1期くらいではないかと推測します。そうであるならばレーザー治療か、円錐切除というような腟口からメスを入れ、果物の芯を繰り抜くようにがん細胞の周囲を切り取る手術で済むのではないでしょうか。恐らく、開腹手術の必要はないと思います。また今後の性行為にも支障はないし、性感にも変化はないだろうと思います。
そういう前提で考えると、彼の両親が結婚に反対する正当な理由はありません。治療可能な病気が見つかったからといって、治療をすれば治るわけですし、結婚生活にさして影響があるとも思えませんから「婚約解消」の正当理由にはなりません。
ただそのために性行為そのものができないとか、子どもが産めないという話になれば別ですからそこは医師の説明をしっかり聞いて(何なら彼も同席の上で話を聞いて)病状、治療方針などについて彼にも共通認識をもってもらいましょう。
その上で、とりたてて支障はなさそうなのに彼がどうしても婚約解消をしたいと言い張るなら、慰謝料(最高100万円位か)も式場キャンセル料などの実損も、彼に請求してください。
ただ、そういう成り行きになったとして、あなたはこのことをむしろラッキーだったと思うべきです。
第1のラッキーは、これをきっかけにがんの早期発見ができたこと。ここで気づかなければ、もっと大ごとになったかもしれないじゃないですか。
第2のラッキーは、彼が「マザコン息子」であるのがわかったこと。このまま結婚したら、義父母との確執であなたは一生が苦労の連続となったかもしれません。
第3のラッキーは、ついでに彼が「馬鹿」だとわかったこと。今や子宮頸がんの原因はセックスの際、ヒトパピローマウイルスに感染するのが主因であると考えら れるようになってきました。だったら、彼こそが加害者なのかもしれません。たとえ今迄彼にそういう知識がなかったとしても婚約者から「子宮頸がん」と聞か されたら、俄か勉強でいいから原因を究明してみようという態度が彼に生じたなら、頼りがいのあるパートナーになるでしょう。しかし、がんという言葉に怯 え、唯々諾々と親の意向に従うなんて、愚の骨頂です。長い人生には、いろいろ不都合なことが起きてきます。そのとき、それに正面から向き合う力も問題解決 能力もない男、そんな男は馬鹿です。この件があって、はからずもそうした彼の「正体見たり」という結果になりました。
だったら、むしろ婚約解消はこちらも望むところではありませんか。災い転じて福となす。是非、福となしてください。