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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 25
親の生前に葬式代などを預かり、余ったお金をもらうと税金がかかるか
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
1人暮らしの父が肺がんで入院中です。私が父の財布を預かり、治療費やローンの支払いなど、お金の管理をしています。亡くなると父の口座からお金が引き出せなくなるため、父は生前に財産を私の口座に移し、残りの治療費や葬式代などに充ててくれ、残った分はあげると言います。この場合でも贈与税などがかかりますか。
(30代、女性)
預かり金なので贈与税の対象にはならない
あなたがお父様から預かったお金はすべて預かり金であり、贈与を受けたものではありませんから、贈与税の対象にはなりません。また、「残った分はあげる」と言われたのですから、お父様の死亡時には死因贈与により、残ったお金はあなたが取得することになります。
相続税では、相続人に対する死因贈与は通常の相続と同様に扱われ、相続税の対象とはなりますが、贈与税の対象とはなりません。
一方、お父様の死亡後、治療費やローン代、葬儀代などを、残ったお金から支払った場合にはその金額は相続した遺産の額から控除されます。
もちろん相続税は、あなたが死因贈与を受けた金額だけで計算されるわけではありません。あなたを含めた各相続人の相続した遺産の額を合計し、その合計金額から定められた基礎控除の金額(相続人の人数が多くなるほど、その金額は多くなる)を控除し、なお残る財産がある場合に初めて、その残った金額に対して相続税がかかります。そして、その相続税を各相続人が相続した遺産の割合で分割して支払うことになります。
税金よりも気がかりなのは、あなたと他の相続人との関係です。あなたが①お父様のすべての財産管理をし、②お父様の預金の中からお葬式代を支払い、③残ったお金をすべて1人でもらうとなると、他の相続人は何ももらわないことになりませんか。それを他の相続人たちが予め了承していればいいのですが、そうでないと相続争いになります。
たとえば、こんな争いです。
① あなたがお父様の財産を勝手に動かし、自分のために使っていたと言われる。
② お葬式のためにお金を使い過ぎだ、もっと地味にやればいいのに、他の人に相談もなく派手にやり過ぎたと言われる。
③ 残ったお金は相続人全員で平等に分けるべきだ。少なくとも自分たちの遺留分相当額(法定相続分の3分の1から2分の1)は返してくれと言われる、等々です。
こうした争いは遺産の多寡に関係ありません。多くても少なくても、もめるときはもめます。そこで、次の対策を講じておくといいでしょう。
①できれば相続人全員に集まってもらい、お父様の口からその旨を全員に言い渡してもらう。
②その際、残余財産をあなたに相続させることも言い渡し、できればその趣旨の遺言状を書いてもらう(ただし、遺言状があっても、後日他の相続人から遺留分減殺請求をされれば応じざるを得ません)。
③一切の収支を明確に記録しておく。できれば領収証も付けて。
お父様のためにと思ってやったことが、後日他の相続人たちからあらぬ疑いをかけられ、親族の関係が険悪になってしまうということが世の中にはままあります。どうぞ、そうならないようにお気を付けください。